コルサントからポリス・マサまでは少し距離があったが、仮眠を取れるほどの時間でもなかった。私はため息をついて、シャトルの背もたれに深く腰掛けた。目を閉じて考えるのは最近よしている。
　なぜなら、この戦争は、一体いつ終わるんだろう。いつからか、そんなことしか頭に浮かんでこないようになってしまったからだ。今こうしている間にも多くの人々の命が大気圏にぶつかり、燃え尽きる銀河の塵のように消えていっているのだろう。上層部の司令官や軍師には些末なことなのだが、それは戦いの場で厳しい命の選択や結末を何度も見届けてきたヒーラーの私にとっては、あまりに大きすぎる現実だった。共和国にあると誰もが信じて疑わない正義などいざ戦場に出てみれば、たちまち砂上の楼閣のように崩れ落ちていくのだから。
　人しれない憤りとやるせなさに思考が支配され始めたちょうどそのときに、シャトルはタイミングよく目的地の医療施設に到着した。
　
　施設には多くの患者がいたが、どれもさほどの重病や重症ではない。気になったので、私はなぜここに呼んだのかと院長のエラに尋ねた。すると、どうやら頼む期日を１日早めてしまったらしい。院長の明日から始まる出張に備えて本来要請をかけるはずだったのだという。私はしばらくの間は命の現実に向き合わなくて済むのかと少しほっとすると、与えられた部屋に戻った。
　
部屋に戻ると、珍しくコムリンクがいつもと違う周波数で届いていた。
｢…………何かしら。｣
背中を駆け巡る妙な胸騒ぎがした。私は恐る恐るボタンを押し、ホログラムを再生した。
｢私はマスター・オビ＝ワン・ケノービだ。このメッセージを見ているということは、あなたは無事この"粛清"から逃れることが出来たということか。今すぐ身を隠し、クローントルーパーが来ても出てはいけない。彼らが反乱を起こし、経った今からこの銀河全域は銀河帝国となった。ジェダイ聖堂は───…………………………｣
その言葉を最後に、ホログラムは終了した。私はあまりに大きな衝撃を立て続けに受けたため、頭の中が真っ白になった。
　──────粛清──？クローンたちが反乱？銀河帝国？
｢うそだ……………嘘だ…………嘘だぁ………｣
私はそれから泣き崩れた。自分の行いの意味、仲間の死。その次に、全てのことに怒りを覚えた。もう、ダークもライトも関係ない。私は久しぶりに怒りで心を満たした。そして、最後に残ったのは潰えることのない果てしない絶望だった。

　
　
その日、戦争は終わりを迎えた。
　───────誰にも、未来への希望を残さずに。