ある日私はポリス・マサの市民病院に手伝いへ行くことになり、しばらくコルサント独特の安心感のある喧騒から離れることになった。市民病院の手伝いへかり出されたり、そもそもコルサントから離れることはよくある当たり前のことなのに、今日は何故か名残惜しかった。なので出発を私は少しだけ送らせて、直接の師匠ではないけれども私のフォースヒールの技術にとっては一番の師匠であるマスター・ルミナーラに挨拶をしに行った。
｢マスター、お久しぶりです｣
｢まぁ、エリス！！！珍しいわね｣
彼女は突然の訪問に驚いていたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
｢どうしたの？｣
｢いえ、別に…特にこれと言った用事は無いのですが、何だか急にお話したくなって………｣
｢────フォースの意味｣
｢え？｣
ぽつんと彼女が言った言葉の意味を最初私は理解出来ていなかった。だが、程なくして私はその言葉の意味を思い出した。
｢ああ！そういえば………｣
フォースの意味、それは私がヒーラーになりたてだった頃の話だ。当時の私は何故私がヒーラーなんて地味な仕事をしなければならないんだろうと、まだ自分の立ち位置に反発していた。同期のジェダイの中には評議会の臨時役員になった者もいたし、議員とお近づきになれていたり、はたまた銀河の各地で武勇伝や偉業を残してその名声を轟かせている者もいた。中には現在、生きた伝説の軍師に上り詰めた者もいる。そんなふてくされている私に、マスターはこう尋ねてきた。
『エリス、フォースにはそれぞれの役割があるの』
『知っています。ライトとダークで………』
『違うわ。それ以外の役割よ』
私はそのとき、ライトとダーク以外の違いが存在することに驚いた。そして、答えを聞きたくて彼女に質問を返した。だが、彼女は答えは何通りもあるから自分で考えなさいと言って、答えてはくれなかった。そこで私はその答えを探し出すまで、あなたのヒーラーとしての弟子にさせてくださいと頼み込んだのだ。
　─────フォースの意味。今それはまだ私の中で漠然としているが、昔よりは理解出来ている気がする。しかし、それはまだ言葉に表せるようなものではなく、私はまだ答えを出すべきではないなと思った。
｢答えは出ましたか？エリス｣
｢漠然とは。ですが、まだマスターに答えとして体現するべき段階ではないと思います。｣
｢そう…………では、できるようになったら、教えてくださいね。ですか、それまで私は果たして生きているのでしょうか……｣
いつになくマスターが弱気だった。私は不安になったのでそっと彼女の手を握った。
｢大丈夫です。………そうだ！戦争が終わったら、一度どこかへ行きませんか？｣
気がついたら、そう提案していた。マスターはそんな私を不思議そうに見つめた。
｢ほら、ずっと私たちは周りを癒し続けています。だから、たまには私たちも息抜きしないと！………愚案でしょうか…？｣
｢いいえ、楽しそうだわ…………うふふ、わかったわ。それを楽しみにしておくわね｣
ようやくマスターは笑ってくれた。私はここ数年間、笑顔の消えているジェダイ聖堂に、この場所だけ笑顔の花が咲いたような気がした。
｢そうですよ！だから、まだマスターは死なないんですよ｣
｢待っているといいわね、希望の夜明けが。｣
｢ええ、マスター。｣
マスターに元気が戻ったところで私は安心して、任務地へ向かおうとした。すると、思いがけずマスターに呼び止められた。
｢─────エリス！｣
｢はい、マスター｣
私が振り返ると、彼女は私にこう言った。
｢─────私の可愛い愛弟子よ。あなたの行く先の未来がフォースと共に、あらんことを｣
いつになく形式ばった彼女らしくない挨拶に、私は滑稽さを感じて笑いながら返した。
｢あなたの方こそ、フォースと共にあらんことを。さよなら、マスター！｣
｢ええ、さようなら。｣
私たちはお互い手を振ると、そのまま行くべき場所へまた戻った。
　─────これが、永遠の別れとなることなど、誰が知っていたのだろうか。