ブラスタービームがあちこちに飛び交う─────正に“戦場”と化した都心を眺めながら、ジェダイであり、共和国軍の軍師であるアンヌ・トワイラスは、圧倒的な兵力不足に不意を突かれたようなこの侵攻作戦を、随分前から予見していたのに…とため息をついた。コルサントの市民がみな、守られていることに過信し、戦争とは無縁で、どこか自分たちは絶対的にこの戦争の被害者には成ることはないと勘違いしていた分、今回の共和国側の被害は莫大な物だとアンヌは思った。
「…グリーヴァスの主艦隊、インヴィジブル・ハンドのシールドのほうは解けそう？」
しかし、今は目前の被害を嘆く暇はない。
アンヌは気を取り直し、グリーヴァスの艦隊の隊列を崩すための策を考えた。
　…この艦隊を崩すには、確実に、正確な一斉砲撃で相手側のシールドを全て無効化しなければいけないわね…。
　アンヌはそう思うと、突然何かをひらめいたかのように立ち上がった。それに合わせてクローン兵士たちが一斉に彼女のほうに注目する。
「全艦、シールド解除のため、砲撃します」
「しかし、我々を悩ませるスクラップはどうしますか？」
この意見には誰もがうなずいた。アンヌはそれすらも予測し、にこりと笑った。
「安心して。インヴィジブル・ハンド船内には私が時間稼ぎのために向かうから、そこでハイパードライブを壊す」
彼女はそのままあわただしく戦闘機の整備を行うクローンたちの横を通り抜け、茶色のマントを着ると、愛用の戦闘機であるジェダイ・スターファイターに乗り込んだ。
「R6、あの主力艦隊をなんとかするんだよ」
相棒である最新型のアストロメク・ドロイドであるR6-D5が彼女の希望通りに主力艦隊を目指し、攻撃をかわしながら飛んでいく。
「うえぇ…。やっぱり戦闘機の搭乗は、向いてないなぁ…」
アンヌは強烈なGが全身にかかるのを感じながら、全神経を集中させてフォースの流れを読み解こうとした。すると、突然脳裏に、冷たい金色の爬虫類の瞳が浮かび上がった。
「……………！？」
その瞳は、哀しげで、そしてどこか静かな怒りをたたえていた。
──────あれは、一体誰何だったんだろう…？
アンヌは目の前の交戦に目を向けながらも、頭では一瞬浮かび上がったその瞳のことが離れず、そればかりを考えていた。




　同じ頃、インヴィジブル・ハンド船内では、シス卿のドゥークー伯爵がグリーヴァスの隣で瞑想にふけっていた。
「…閣下は一体何をお考えになっているのですか?」
グリーヴァスがそう尋ねても、ドゥークーからの返事はない。
…あぁ、またいつもの瞑想に入られたのだな。

グリーヴァスは師匠の表情に納得していると、視界にジェダイ・スターファイターがすっと一機入ってきたを瞬時に察知した。
「────来たか、ジェダイめ。」
と、同時にバトル・ドロイドがグリーヴァスに報告にやってきた。
「ジェネラル、ジェダイノ戦闘機ヲ発見シマシタ。」
「…知っているわ!!!貴様らの出る幕はない。…マグナガード。」
グリーヴァスが振り向くと、そこには既に彼の専属エリートガードであるマグナガードが、手に電子(エレクトロ・)棒(スタッフ)を装備して待機していた。
「…私の命令は、既に分かっているだろうな?」
「ハイ、ジェネラル。アノジェダイヲ生ケ捕リニシ、ライトセーバーヲ奪ウノデスネ。」
…話の分かるやつは、ドロイドとはいえ、嫌いではないな。
グリーヴァスは冷たい笑みをうかべながら、静かにうなずき、マグナガードに補足した。
「あのジェダイは、久々に誰の手も借りず、俺の手で殺す。つまり…」
そして、彼は恐ろしいほど冷酷な声で、こういった。
「……手出しは、無用だ。」
その目は、冷たい金色の爬虫類のものだった。

　グリーヴァスの命令により、インヴィジブル・ハンドでは、シールドを解除する作業が進められていた。ドゥークーはようやく瞑想から抜け出すと、弟子には向き直らず、激戦を独りで繰り広げているスターファイターを眺めながら彼に言った。
「───これは、始まりの戦いだ。…わかるかね？将軍よ。」
「我々分離主義軍の勝利の始まりですね。」
しかし、グリーヴァスの返事に、ドゥークーは悲しげに首を横に振った。
「残念だが、将軍。これは更なる戦いの始まりなのだよ。」
「一体、何の戦いの始まりなのですか?我々とジェダイ以外に、誰が誰と戦うというのです?」
グリーヴァスの改造された人工脳でさえ、師匠であるドゥークーの言葉は、もはや理解不可能であった。そんなグリーヴァスをよそに、ドゥークーはにこりとまた彼の顔を見ずに笑って告げた。
「───ライトサイドとダークサイドの…だよ。」