自失茫然のアンヌをのせた輸送船は上手くごまかすために周辺の惑星で乗り換えたあと、ポリス・マサの医療センターへと直行した。
　ベイに降りるとすぐ、彼女を深刻な表情をしているマスターとオーガナ議員が出迎えた。
｢………聖堂は駄目だったようだね｣
かける言葉が見つからず、仕方なくオビ＝ワンは聖堂での悲劇についての悔やみを言った。彼女は沈んでいて、暗い声で返事をした。
｢……私だけが生き残るなど、お恥ずかしい限りです｣
形式的なその返事に彼はそれ以上聞かないで欲しいという確かな背筋をも凍らすような拒絶感を感じ取った。オーガナ議員がそのままアンヌを治療室へ連れていった。
｢───ショック続きで申し訳ないが、スカイウォーカーは死んだ。心を燃やし尽くし、オビ＝ワンの手で死んだ。パドメはそれを知らない。くれぐれも気をつけてくれ｣
｢………わかりました。｣
アンヌは心の中であざ笑った。殺してくれと頼みまでしたあの賢い彼女が気づかないはずが無いだろう、と。
　治療室へ入った彼女は、既に傍らに可愛らしい双子の兄妹を携えている。
｢───結局、二人共希望通りの名前をつけることになってしまったわ｣
力なく笑うパドメは、兄の方を指してルークと、妹の方を指してレイアと紹介した。２人ともとてもアナキンとパドメとの間に産まれたとわかる愛らしい子供たちだった。アンヌに微かな微笑みが戻った。
｢………ねぇ、アナキンには、善の、心が、、あるの、、オビ＝ワンは信じて、、いないけれど…………まだ…………まだ、、あるの、、彼の………中には…………｣
｢分かったよ、パドメ。もう───ゆっくりしていいんだよ｣
パドメは息も絶え絶えに声を絞り出すように言った。医療ドロイドは心が弱っていると言っていたが、アンヌには握ったその手からたしかに暗黒面の力を感じた。アナキンの負の感情がパドメに伝染し、それが彼女を理不尽な死へと導いているのだ。けれど、彼女はまだこの無垢で愛らしい双子のために生きようとしている。それが叶わぬことも、また彼女は分かっていた。
　アンヌは力なく笑うパドメを励ますことすら出来なかった。ただ頷くことしか出来なかった。
｢…………彼は………葛藤してる。私は………愛がわからない………けど………彼の想いは今も……………｣
｢…………そう………バカなアニー………｣
｢この子達は必ず私が守ります｣
｢ええ………お願い………あり、、がとう…｣
最期の言葉は皮肉にも彼女を死に追いやった、しかし最も愛していた男の名前だった。
｢───アナキン…………｣
　
　アンヌは治療室から出ると、オビ＝ワンと、オーガナ議員に助けられたヨーダに静かに首を振った。それだけで、すぐに2人はパドメの死を悟った。
　
　パドメの葬儀は、すぐに行なわれた。───その腹には、子供が宿っているかのような細工がされていたため、誰もが子供は生を受けずに亡くなったと思ったという。