聖堂に戻ると、既に門は打ち破られ、多くの動かぬ亡骸が倒れていた。そこにはジェダイに混じって501大隊のクローンの姿もあった。アンヌはアナキン1人がここまでの殺戮をすることなど流石にできないことを知っていた。彼女は遺体の死因を調べた。ライトセーバーで亡くなっている者もいたが、それより驚いたのはブラスターで撃ち抜かれた者が一番多かったことだった。
｢一体………だれがこんなことを………｣
アンヌは線の細いからだに怒りを滾らせた。殺戮の共犯者を確かめるべく、彼女は音のする奥へ進んだ。
　────薄々、気づいていた。けれど、気付かぬ振りをしたかっただけだった。

　
　──────そこには、ジェダイを探しながら狩りをする501大隊のクローンたちがいた。彼らはアポーを先頭にして進んでいたが、不意にアンヌに気づいて銃口を向けてきた。
｢ブレインがいたぞ！多少傷を負わせてもかまわんが、可能な限り生かすんだ｣
｢イエッサー！｣
彼女はただ、立ち尽くすことしかできなかった。怒りが悲しみに、そして確かな痛みに変化したのが手に取るようにわかった。銃を構えながらゆっくり歩いてくる彼らに、アンヌは叫んだ。
｢どうして！！どうしてこんなことが平気でできるの！！？｣
涙混じりの心からの叫びは、彼らには届かなかった。アポーが平然と言い放った。
｢───我らは皇帝陛下のオーダー66に従うだけだ。お前らジェダイに従う兵士ではない。ただそれだけだ｣
｢─────わかった。もう、なにも聞かない。｣
｢そうか、では大人しくライトセーバーをこっちへ渡せ｣
安心したクローンの１人がアンヌに近づいてきた。彼女は俯いたままライトセーバーを渡した。彼はそのまま彼女を拘束しようと後ろへ回った。しかし、そのせいで彼は彼女の表情を見ることが出来なかった。これが最大の誤算であり、彼女の策謀だった。
　静かにアポーらを見上げたアンヌの表情は、無だった。その気迫は彼らも一瞬後ずさりをする程だった。瞳は暗く沈んでいて、その色にかつての戦友を見るような情は存在していなかった。
　ブレインとして、最期の意地となってもいい。アンヌは戦友を手にかけることを決意したのだ。
　後ろに回ったクローンに仲間が注意喚起をする前に彼女は素早く彼の首に護身用に身につけていた小刀ほどのライトセーバーを深々と抉るように刺した。それから銃口が火を噴く前に強力な逆らうことが出来ないほどのフォースでライトセーバーを取り返し、空中で手に掴むと同時に大きく彼ら──奴らの後ろに立てるよう跳躍した。
｢撃て！！かすってもこいつは死なん！！！｣
彼女はそのまま公文書館までブラスターの雨の中を走り抜け、入り組んだ机の位置を上手く利用し、確実に仕留めていった。その姿を見つけた他のジェダイたちが叫ぶ。
｢ブレイン様！！何故ここに！！？｣
｢──喋っていないで前の敵に集中しなさい。こいつらに情は無用です！｣
会話の間もまた彼女は１人の胴体をライトセーバーで貫いた。最小限のエレガントな動きで敵を倒せるのはアンヌの主な型であるマカシくらいのものだ。光刃を八の字に振れば、広範囲の敵を倒すことが出来るし、ブラスターを打ち返すのも楽だ。しかし、周りのジェダイたちは一人、また一人と倒れていった。そしてとうとうアンヌはクローンたちに机を挟んで囲まれるような状況に陥った。それでも依然、落ち着いている彼女に流石の彼らもおじけづいた。そんな対峙が続く中、青い光刃を持った青年が階段を降りてきた。