それから3年ほどの月日が経った。アンヌは、稀代の天才軍師ザ・ブレイン・オブ・リパブリックとして勝利を共和国にもたらすと共に、人々から敬われるようになった。また、ジェダイ評議会顧問としてジェダイオーダー内でも信頼を得ていた。代表的な戦いでは、ほとんど彼女の知恵と戦略が貢献していることは誰もが知っていた。また彼女には最高議長よりも強い兵力動員権限が与えられ、特にアナキン率いる501大隊は彼女の直轄部隊だった。彼女の伝説はもはや生きたまま神格化され、ジェダイ内でも年齢や性別を知らない人物がいるほどだ。
　希にしか戦場に向かうことはない彼女だったが、今回のコルサント侵攻については違った。
｢報告します！グリーヴァスの艦隊は多勢。最高議長は本艦であるインヴィジブル・ハンドに乗っていると思われますが、救出は困難かと思います｣
報告に来たクローン兵士に、アンヌは静かに頷いた。
｢そうですね。普通ならば奴らの好きにさせるのですが、このままでは首都惑星の混乱はおろか、共和国全体の指揮の低下にも繋がるでしょう。何とかアナキンとオビ＝ワンが潜入したことを悟られないように全力で派手な空戦をしなさい｣
｢了解です｣
アナキンはオビ＝ワンと共に最高議長を救出しに行った。しかしその後の通信が途絶え、彼女は内心心配していた。
　あのふたりは、もはや共和国の象徴のようなもの。それに─────
　様々な人格的、身体的トレーニングを叩き込まれた彼女はほとんど戦略を考える際に余計な私情を挟まないようになってはいたが、どうしても師匠と兄のようなアナキンのことになると心配になった。それに、今特別に戻ってきているアソーカのことも。
　だめだ、考えちゃ負けだよ
アンヌは雑念を振り払って戦略スクリーンをみることに再び集中した。天才軍師など人はもてはやすが、昔とは何も変わってはいないし、彼女は他の人とは何も変わらないと思っている。それが時に自分と周りとの間が分厚いガラスで隔たれているかのように感じる瞬間だった。もうとっくに慣れているはずなのに、彼女はなぜだか時々胸が苦しくなる。だから彼女は思考を止めない。片時も休まずに頭を働かせ続ける。なぜなら──
　だって、私は共和国の希望なんだから。
彼女は気を取り直してコルサントの本部に報告を求めた。すると、アナキンとオビ＝ワンは無事にパルパティーンを救出したという。彼女はここぞといわんばかりに士気を立て直すために通信を入れた。
｢共和国全艦、よく聞きなさい。パルパティーン最高議長は救出されました。母艦も人質も失った今、もはや分離主義者に負ける要因などありません。追って殲滅することを許可します。｣
その声は、たしかに勝利の自信を帯びていた。そして分離主義軍は退却し、コルサントには再び場違いな平和が訪れた。