オビ＝ワンはマスター・ウィンドゥの前に跪き、頭を下げた────つまり、土下座したのだ。これには流石の評議員も驚いた。アンヌも慌てて止めに入った。
「な、何をする！！？何も君にそこまでしろとは言っていない！」
「オビ＝ワン！！やめて！！！私のために頭を下げないで！！」
アンヌの静止を振り切って、オビ＝ワンは悲痛に叫んだ。
「お願いです！この子を私のパダワンにさせて下さい！！この子達が同じ選ばれし者なら、きっとお互い切磋琢磨していずれは予言通りに銀河を救うはずです！！」
「だが、オーダーは──」
オビ＝ワンはウィンドゥの反論を待たずして続けた。
「お願いします！！！私はこの子を他のジェダイに預ける資格はありません！クワイ＝ガンがもし、私がまだアナキンと同じ歳だったら彼も恐らくそう言ったでしょう！」
ウィンドゥは頭を抱えた。
一体今日何度目だろうか。
　彼はとうとう疲れてしまった。それに気づいたオビ＝ワンは先ほど彼が放った最後の一撃の''仕返し''を放った。
「もし、あなたがだめだと言うのなら。他にどなたがこの子の面倒を見るのですか？選ばれし者はその才能と共に、計り知れない危険もはらんでいる。それを別々のジェダイが育てるのは─────」
「わかった！わかった！もう君の言いたいことはわかった！」
とうとうウィンドゥが根負けした。オビ＝ワンは心の中でしてやったりとほくそ笑んだ。そしてうやうやしく頭を深々と下げた。
「ありがとうございます。評議会のこの上ないお計らいに心より感謝致します。」
アンヌはただただ驚いていた。戸惑う彼女に退室したオビ＝ワンは優しく笑いかけながらこう言った。
「さあ、きみは今日から私のパダワンだ。」
「本当に？私、オビ＝ワンの弟子になっていいの？？」
目を輝かせ喜ぶ彼女に、アナキンが近づいてきた。
「マスター！結局どうなったんですか？」
「アナキン、この子が私を救ってくれたんだよ。」
「え、どうやって？」
「フォースを使って、だよ。」
きょとんとしているアナキンにオビ＝ワンはただ優しい眼差しを向けるだけだった。アンヌはようやく、ここ──ジェダイ聖堂に居場所を見出したのだ。そして、ここで10年ほど過ごすこととなるのだった。
　─────しかし。彼女はまだ知らない。
思い出深きこの優しき場所が、彼女の生涯に影を落とすこととなる惨劇の舞台となることを。
　
　マスター・ヨーダは誰もいない評議会室に一人ぽつんと残っていた。
「────あの子は…………」
彼はアンヌのフォースに何かを感じていた。しかし、漠然と誤魔化されるかのようなその不確かさにそれ以上は分からなかった。だが、確かにそれは自分の知るフォースと同じ人物なのだ。
　─────あの子はアナキンよりも深い霧の中に居るようじゃ。
彼は漠然とした新しいパダワンのことを考えるのをやめ、再び深い瞑想に陥った。
　
　アナキンは複雑だった。自分がただ1人の選ばれしものだと思っていたのに、他にも居たとは。
「……僕が特別なのに。なんであいつまで」
彼はふてくされて床をつま先でコンと蹴った。パダワンがオーダーで1人までと決められているのに2人になったのも気に入らなかった。
　妹弟子なんて要らないよ。
　彼は自分でも嫉妬をしていることを知っていた。彼女は誰よりも従順で、頭の回転が早い。だから彼のマスターが気に入るのも当然だった。それが気に入らないのだ。
　きっと、僕のマスターはダークサイドになるぞって言うんだろうな。
全てが気に入らなかった。
　……そんなふうに格好つけていたが、本当はちょっぴり嬉しい、だなんて認めたくなかったアナキンだった。