この夢小説は、もし乙女ゲームだったらという設定なので、名前変換をすると100倍楽しめます。名前は、〇〇〇・トワイラスの〇の部分が変わります。
序、マンダロア・ドリーム
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時々、思う。自分がジェダイでなければ、どんな未来を描けたのだろうと。
学者にでもなっていたのかな。画家とか作家も悪くないよね。ううん、むしろ普通の女の子になって、青春を楽しんで、恋をして……
でも、私にもそんな選択肢が1つも無かった訳じゃない。これはそんな銀河のお話。ジェダイを辞めたくなる程に、運命を呪う程に幸せだったとある銀河の世界。
アンヌ・トワイラスことアンヌ伯爵は、純白のショートヘアによく似合うパステルブルーのイヴニングドレスを身に纏いながら、給仕ドロイドが差し出してきたカクテルを飲んでいる。ここには彼女が元ジェダイであること、更には共和国軍師ブレイン・オブ・ザ・リパブリックであることを知る者は誰も居ない。父ドゥークーの相続の関係でインターギャラクティック銀行グループ総裁になってからというもの、アンヌは銀河帝国主催の社交界に引っ張りだことなっていた。それに伴い、彼女は反乱同盟軍の貴重な情報源も担うようになった。そのため、銀河各地に散らばっているコードネームフルクラムと呼ばれる内通者たちを育成するだけでなく、自らも積極的に様々な情報を入手することが最近の任務だった。特に銀行グループ内の情報には、脱税、贈賄、裏金などの証拠がびっしりと詰まっている。
だが、反面元々ジェダイだったアンヌにとっては、きらびやかな社交界は苦痛でもあった。下らない世間話に噂話、おべっかの遣い合いと自慢話の数々に、彼女は辟易としていた。
今日はいつ終わるのだろうか。アンヌがそんなことを考えながらため息をついたその時だった。突然入口付近が慌ただしくなり、誰かがやって来たことを雰囲気が知らせた。
誰かしら、随分と大物が来たようだけど……
すると案の定、取り巻きのご婦人方がアンヌの隣へやって来て、事の次第を丁寧に説明し始めた。
「アンヌ総裁、どうやらマンダロアの総督が来られたそうよ」
マンダロアと聞いて、アンヌの表情が一瞬だけ曇る。もちろん、大戦末期に包囲作戦で苦労をしたからだ。しかし、理由はそれだけではなかった。その名前は、心の奥底に閉まった苦い思い出を彷彿とさせてしまうからだ。
「マンダロアの総督?あの惑星も帝国統治下なの?」
「ええ、そうなんです。折角ですから、私たちは挨拶に伺いますわ。アンヌ様もご一緒に如何かしら?」
遠慮しますとも言えず、アンヌは飲みかけのカクテルをドロイドに渡して立ち上がった。婦人方に導かれるまま、彼女は人だかりの前までやって来たものの、あまりの人の群れに彼女はすっかり挨拶をする気力を削がれてしまった。だが、この日偶然同席していたターキン総督の一声で群衆はアンヌに道を開けることになった。
グランド・モフ・ターキン総督とは、ただのターキン提督だった頃からの知り合いだった。だが、アンヌ自身の髪色が変わっていたり、15年前と同じ顔立ちだったりするおかげで、本人はブレインであることを気づいていないようだ。むしろ今は銀河帝国のメインバンクとして、インターギャラクティック銀行グループを引き立ててくれている。彼は若き総裁に会釈すると、自分の近くへ来るようにと手招きした。
「どうも、アンヌ総裁。総督、今日は是非とも彼女を紹介したい」
「お招きに預かり光栄ですわ、ターキン総督」
アンヌはターキンに微笑みを向けてスカートの裾をつまんだ。優雅に会釈をする姿は、父親譲りのエレガントさを受け継いでいるように見える。優美な身体の動きに、その場にいる誰もがうっとりとしたため息を漏らした。
「アンヌ殿、こちらがマンダロア総督だ」
「初めまして、ヴァスロイ────」
総督の顔を見たアンヌの息が止まる。憂いに潤む瞳も、僅かに見開かれている。一方、総督の方も驚嘆の表情を浮かべていた。刹那の沈黙があった後で、戦士上がりらしきマンダロアの総督は似合わぬ会釈を返して口を開いた。
「お目にかかれて光栄です。私はヴァスロイ・ガー・サクソン、ヴィズラ家の者で、今はマンダロアの総督です」
ガー・サクソンと名乗った総督は何とか名乗り終えたが、動揺を隠せない様子で髪を左手で撫で付けている。二人の様子を見て何かを感じたターキンは、鋭い疑問を投げ掛けた。
「君たちは、知り合いかね?随分と驚いていたようだが」
その質問にアンヌは内心、心臓を射抜かれたかのように飛び上がった。そして、慌てて平静を装って返答した。
「とんでもない、全くの初対面ですわ。これ程に男らしく凛々しい方を、忘れるはずがありませんもの」
初対面と聞いて、僅かにガーの瞳が悲哀に曇る。それからターキンは小首を傾げると、後は頼んだぞと一言言い残してその場を去ってしまった。残された二人は、暫くの間無言で別々の方向を眺めていた。
「ああ……その……」
切り出し方に惑うガーを見て、アンヌは穏やかな笑みを浮かべた。そして給仕ドロイドからカクテルを二杯受けとると、彼女は美麗な仕草で片方をマンダロア総督に差し出した。
「改めまして、私はアンヌと申します。銀河帝国のメインバンク、インターギャラクテイック銀行グループ総裁を務めています。この退屈な場で、勇猛果敢なマンダロアの総督にお目にかかれるなんて光栄ですわ」
サクソンは自己紹介を聞いて、目を再び丸くした。その驚きようは、手に持ったカクテルグラスを取り落としそうになる程だ。彼はすっとんきょうな声をあげて、アンヌに聞き返した。
「総裁?あなたが?」
その言葉に僅かな侮蔑が混じっていることを察し、若き総裁は右手で左側の髪を耳に掛けながら、悪戯っ子のような笑顔を向けた。
「小娘が総裁なんて、務まるのかとお思いですか?」
「い、いやそんなことは無いが……」
見透かされたかのようか返答に焦ったのか、ガーはカクテルを飲み干した。アンヌは笑みを絶やさぬように心がけながら、ハンドバッグから名刺を取り出して総督に差し出した。
「困ったことがあれば、いつでもお声掛け下さい。良ければお近づきの印に、名刺を受け取っていただけると嬉しいのですが……」
「も、もちろん。連絡しよう」
サクソンは名刺を受けとると、文面とアンヌの顔を交互に見比べて顔をしかめた。
「……住所がセレノーのドゥークー宮殿となっているが、親戚の者なのか?」
そこから説明しなければいけないのか、とため息をつきたくなるのを抑えて、アンヌは微笑みを浮かべながら答えた。
「ええ、そうです。私の父がドゥークー伯爵ですから」
「父!?娘がいるとは聞いていなかったが……」
「複雑な事情がありますの。父は先の戦争において、色々と……その……ありましたから」
「なるほど。確かにそれなら、ムーンたちも意向に従うだろう」
まるで父親の威光を背負っているから総裁になれたとでも言いたげな口振りに、アンヌの右眉がつり上がる。彼女はカクテルをゆっくりと回しながら、先ほどとは全く異なる鋭い視線を投げ掛けた。有無を言わせぬ視線に射抜かれたガーは、思わず息を呑んだ。眼光の鋭さに負けない強気を滲ませながら、アンヌは哀しげに答えた。
「父が分離主義者の長だったから、ですか?それは違いますわ、ヴァスロイ・サクソン。かつての独立星系連合も、今や帝国に忠誠を誓っております。銀河で帝国に大それた考えを抱くのはもはや、反乱同盟軍のみです。それに、一部の惑星では財政顧問も請け負っておりますし、大切な融資のご相談は直接私が請け負っていますのよ」
「では、もし私がマンダロアの融資相談を持ち出せば……あなたにお会いできるということですか?」
総督の目論みにようやく気づいたアンヌは、背を向けたまま僅かに動揺の色を見せた。だが、すぐに平静を装って振り返ると再び穏やかで愛らしい笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、もちろんですわ。お待ちしております」
すっかりアンヌのことを気に入ってしまったガーには、その瞳が冷徹な色を湛えていることなど気づく由もなかった。同時に、その裏に過去の記憶が燻っていることも。
これは、とある銀河の話。何度も選択を間違え続けた二人が出会って、運命を織り成す話である。
学者にでもなっていたのかな。画家とか作家も悪くないよね。ううん、むしろ普通の女の子になって、青春を楽しんで、恋をして……
でも、私にもそんな選択肢が1つも無かった訳じゃない。これはそんな銀河のお話。ジェダイを辞めたくなる程に、運命を呪う程に幸せだったとある銀河の世界。
アンヌ・トワイラスことアンヌ伯爵は、純白のショートヘアによく似合うパステルブルーのイヴニングドレスを身に纏いながら、給仕ドロイドが差し出してきたカクテルを飲んでいる。ここには彼女が元ジェダイであること、更には共和国軍師ブレイン・オブ・ザ・リパブリックであることを知る者は誰も居ない。父ドゥークーの相続の関係でインターギャラクティック銀行グループ総裁になってからというもの、アンヌは銀河帝国主催の社交界に引っ張りだことなっていた。それに伴い、彼女は反乱同盟軍の貴重な情報源も担うようになった。そのため、銀河各地に散らばっているコードネームフルクラムと呼ばれる内通者たちを育成するだけでなく、自らも積極的に様々な情報を入手することが最近の任務だった。特に銀行グループ内の情報には、脱税、贈賄、裏金などの証拠がびっしりと詰まっている。
だが、反面元々ジェダイだったアンヌにとっては、きらびやかな社交界は苦痛でもあった。下らない世間話に噂話、おべっかの遣い合いと自慢話の数々に、彼女は辟易としていた。
今日はいつ終わるのだろうか。アンヌがそんなことを考えながらため息をついたその時だった。突然入口付近が慌ただしくなり、誰かがやって来たことを雰囲気が知らせた。
誰かしら、随分と大物が来たようだけど……
すると案の定、取り巻きのご婦人方がアンヌの隣へやって来て、事の次第を丁寧に説明し始めた。
「アンヌ総裁、どうやらマンダロアの総督が来られたそうよ」
マンダロアと聞いて、アンヌの表情が一瞬だけ曇る。もちろん、大戦末期に包囲作戦で苦労をしたからだ。しかし、理由はそれだけではなかった。その名前は、心の奥底に閉まった苦い思い出を彷彿とさせてしまうからだ。
「マンダロアの総督?あの惑星も帝国統治下なの?」
「ええ、そうなんです。折角ですから、私たちは挨拶に伺いますわ。アンヌ様もご一緒に如何かしら?」
遠慮しますとも言えず、アンヌは飲みかけのカクテルをドロイドに渡して立ち上がった。婦人方に導かれるまま、彼女は人だかりの前までやって来たものの、あまりの人の群れに彼女はすっかり挨拶をする気力を削がれてしまった。だが、この日偶然同席していたターキン総督の一声で群衆はアンヌに道を開けることになった。
グランド・モフ・ターキン総督とは、ただのターキン提督だった頃からの知り合いだった。だが、アンヌ自身の髪色が変わっていたり、15年前と同じ顔立ちだったりするおかげで、本人はブレインであることを気づいていないようだ。むしろ今は銀河帝国のメインバンクとして、インターギャラクティック銀行グループを引き立ててくれている。彼は若き総裁に会釈すると、自分の近くへ来るようにと手招きした。
「どうも、アンヌ総裁。総督、今日は是非とも彼女を紹介したい」
「お招きに預かり光栄ですわ、ターキン総督」
アンヌはターキンに微笑みを向けてスカートの裾をつまんだ。優雅に会釈をする姿は、父親譲りのエレガントさを受け継いでいるように見える。優美な身体の動きに、その場にいる誰もがうっとりとしたため息を漏らした。
「アンヌ殿、こちらがマンダロア総督だ」
「初めまして、ヴァスロイ────」
総督の顔を見たアンヌの息が止まる。憂いに潤む瞳も、僅かに見開かれている。一方、総督の方も驚嘆の表情を浮かべていた。刹那の沈黙があった後で、戦士上がりらしきマンダロアの総督は似合わぬ会釈を返して口を開いた。
「お目にかかれて光栄です。私はヴァスロイ・ガー・サクソン、ヴィズラ家の者で、今はマンダロアの総督です」
ガー・サクソンと名乗った総督は何とか名乗り終えたが、動揺を隠せない様子で髪を左手で撫で付けている。二人の様子を見て何かを感じたターキンは、鋭い疑問を投げ掛けた。
「君たちは、知り合いかね?随分と驚いていたようだが」
その質問にアンヌは内心、心臓を射抜かれたかのように飛び上がった。そして、慌てて平静を装って返答した。
「とんでもない、全くの初対面ですわ。これ程に男らしく凛々しい方を、忘れるはずがありませんもの」
初対面と聞いて、僅かにガーの瞳が悲哀に曇る。それからターキンは小首を傾げると、後は頼んだぞと一言言い残してその場を去ってしまった。残された二人は、暫くの間無言で別々の方向を眺めていた。
「ああ……その……」
切り出し方に惑うガーを見て、アンヌは穏やかな笑みを浮かべた。そして給仕ドロイドからカクテルを二杯受けとると、彼女は美麗な仕草で片方をマンダロア総督に差し出した。
「改めまして、私はアンヌと申します。銀河帝国のメインバンク、インターギャラクテイック銀行グループ総裁を務めています。この退屈な場で、勇猛果敢なマンダロアの総督にお目にかかれるなんて光栄ですわ」
サクソンは自己紹介を聞いて、目を再び丸くした。その驚きようは、手に持ったカクテルグラスを取り落としそうになる程だ。彼はすっとんきょうな声をあげて、アンヌに聞き返した。
「総裁?あなたが?」
その言葉に僅かな侮蔑が混じっていることを察し、若き総裁は右手で左側の髪を耳に掛けながら、悪戯っ子のような笑顔を向けた。
「小娘が総裁なんて、務まるのかとお思いですか?」
「い、いやそんなことは無いが……」
見透かされたかのようか返答に焦ったのか、ガーはカクテルを飲み干した。アンヌは笑みを絶やさぬように心がけながら、ハンドバッグから名刺を取り出して総督に差し出した。
「困ったことがあれば、いつでもお声掛け下さい。良ければお近づきの印に、名刺を受け取っていただけると嬉しいのですが……」
「も、もちろん。連絡しよう」
サクソンは名刺を受けとると、文面とアンヌの顔を交互に見比べて顔をしかめた。
「……住所がセレノーのドゥークー宮殿となっているが、親戚の者なのか?」
そこから説明しなければいけないのか、とため息をつきたくなるのを抑えて、アンヌは微笑みを浮かべながら答えた。
「ええ、そうです。私の父がドゥークー伯爵ですから」
「父!?娘がいるとは聞いていなかったが……」
「複雑な事情がありますの。父は先の戦争において、色々と……その……ありましたから」
「なるほど。確かにそれなら、ムーンたちも意向に従うだろう」
まるで父親の威光を背負っているから総裁になれたとでも言いたげな口振りに、アンヌの右眉がつり上がる。彼女はカクテルをゆっくりと回しながら、先ほどとは全く異なる鋭い視線を投げ掛けた。有無を言わせぬ視線に射抜かれたガーは、思わず息を呑んだ。眼光の鋭さに負けない強気を滲ませながら、アンヌは哀しげに答えた。
「父が分離主義者の長だったから、ですか?それは違いますわ、ヴァスロイ・サクソン。かつての独立星系連合も、今や帝国に忠誠を誓っております。銀河で帝国に大それた考えを抱くのはもはや、反乱同盟軍のみです。それに、一部の惑星では財政顧問も請け負っておりますし、大切な融資のご相談は直接私が請け負っていますのよ」
「では、もし私がマンダロアの融資相談を持ち出せば……あなたにお会いできるということですか?」
総督の目論みにようやく気づいたアンヌは、背を向けたまま僅かに動揺の色を見せた。だが、すぐに平静を装って振り返ると再び穏やかで愛らしい笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、もちろんですわ。お待ちしております」
すっかりアンヌのことを気に入ってしまったガーには、その瞳が冷徹な色を湛えていることなど気づく由もなかった。同時に、その裏に過去の記憶が燻っていることも。
これは、とある銀河の話。何度も選択を間違え続けた二人が出会って、運命を織り成す話である。
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