萌えるゴミ
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「来るな」
クラピカに近付こうとすると、彼はそう言って私を突き放した。
「言っただろう。これ以上は死のリスクがあるんだぞ。何故私に関わろうとする」
「ごめん。クラピカ。私は、私は、ただ……」
「猫の手は不要だ。下手な同情もな。勘違いをしているようだが、私は目的を遂げる為に単独行動をしているのでは無い。ただ邪魔なだけだ。お前のような“世話焼き“が鬱陶しい」
「クラピカ……」
「お前のような愚鈍な連中が絡んでくると良い事が無い」
「ごめん……」
「いいか、これは警告じゃない。拒否だ。お前は私にとって有益ではない。不要なんだ」
「うん……」
「不利益を被るのは私だ。お前を邪魔だと私が思わないとでも? とんだ天狗だな。これまでお前を自由にさせていたのは許していたからだ。だが、それもここまで。お前はここで待っていろ」
「…………。」
「いいか、これ以上私に踏み込むことは許さない」
見なくてもわかるの。張り詰めたあなたの背中なら。誇りという名の虚勢を張って、宝石のような瞳を無くしてでも。
それでもあなたは、行こうとする。
「ごめん、クラピカ……」
服の袖口を引っ張って、私はそれだけ彼に伝えた。クラピカは、振り返って難解な表情をしていた。
「何故謝る?」
「それしか出来ないから」
「私がお前に何を言ったか理解していないのか」
「違う。わかってる」
「なら、」
「それしか出来ないってわかったから。私は待つことしか出来ない。クラピカ。私は、どうだっていいから。苛立ってるなら私のこと、もっと傷付けてもいい。それでもいいから。邪魔なら近付かないから。じっとしてるから。絶対に約束するから。だから、だから……なんだっていいから、帰ってきて」
決壊。ぼろぼろと零れ落ちる涙を見て、クラピカは何と思ったのだろうか。私は泣きたい訳じゃなかった。そんな事で彼の後ろ髪を引きたいのではなかった。止められなくて、弱くて、邪魔で、そして謝るしか出来ないの。けれど、待っていろとクラピカが望んでくれたから。
「未来で待ってる」
その時、クラピカが一瞬だけ泣きそうな顔をした気がした。けれど、先程のようにまた眉を寄せた。「くだらない」と吐き捨て、去る彼の背中。私はそれ以上彼に近付くことを止めた。そして代わりに祈るのだ。ああ、ラッキーマリア。彼に幸運を。代償として、私はどうなったっていい。リスキーダイスみたい。それでもいいから、なんだっていいから、私の一生分の幸運を、彼に満遍なくぶつけてください。
どうかあの美しい青年に、未来を。
*