本篇
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「ありがとう、助かったよ!」
「いえいえ。またいつでもどうぞ~」
本日の全ての依頼が終了し、夕日で染まった町中を鼻歌交じりで歩く。
ここは江戸。かつては「侍の国」と呼ばれていたが、今は空を異郷の船が飛び交い、街は異人が歩いている。
私はそんな街で、情報屋なんて仕事をやっている。
まぁでも普段取り扱う情報といえば、
どの店のセール品が一番お得か、とか。
花火大会等のイベントの穴場スポット、とか。
夜逃げする時の安全ルート、とか。
日常生活で必要になる(?)情報程度だ。
「ポン吉くん、元気になってよかったなぁ~」
そんな情報を扱うだけじゃお金にならない時もあるので、
依頼された情報の提供だけでなく、その情報の活用をお手伝いしていたりする。
現在も、ポン吉くん(犬)が病気になってしまったから助けて!との依頼に対し、
良い病院の紹介・そして忙しい飼い主に代わって、その病院からの退院手続きとお迎えをしてきたところだ。
「…あ。」
前から向かってくる人影に足を止める。
「よぉ~まめ子ちゃん。繁盛しているようですね~いいですね~羨ましいですね~」
ニヤニヤ笑いながら私を見下ろす銀髪の男性。
顔見知り、と言うよりは、友人と言うほうがしっくりくる関係。
万事屋 坂田銀時だ。
「やぁ銀さん。いつも通り暇そうですな」
「まめ子ちゃんがうちのお客さんとってんの。だから暇なの。お仕事ちょうだいよ」
私のやっている仕事は、確かに万事屋の仕事と被っているところがある。
彼らの機会を奪ってしまっている自覚はあるので、銀さん達"万事屋"に申し訳ない気持ちがないわけではない。
「いつもすみませんねぇ。この前紹介したお仕事はどうです?」
だからたまに仕事を請け負ってもらったり、紹介したりしているのだが…
「あ~…あれね。クビになっちゃった!」
「またですか!?」
…長くは続かない。
「…新しいお仕事の情報、探してご連絡しますね」
「助かる~。あ、五日後に家賃入れねぇといけないんだわ。それまでに稼げる仕事、よろしく!」
「五日後!?そんなすぐに…って、銀さん!」
頭を抱える私など気にもとめず、「じゃあね、まめ子ちゃん」とこちらに背を向けて手を振る銀さん。
まったく…困った依頼人だ。
「まめ子ちゃんお帰り!お疲れ様!」
「田中さん、ただいま帰りました~!これ、頼まれていた食材です。」
「ありがとう、助かるわ~!」
にっこり微笑み、田中さんは食材をしまうために奥の厨房へ入っていった。
私は田中さんが営んでいる居酒屋さんの二階に居候している身。
晩ご飯を作ってもらったり、すごく良くしていただいている。
私はここに住まわせてもらうお礼として、買い出しやお店のお手伝いをしたりしているのだ。
(もちろん家賃も入れています。)
田中さんは人柄が良く、明るく楽しい名物おばちゃんだ。
そんな田中さんと喋りたいために、ここには様々な人が集まる。
そして、そんな場所は、情報を仕入れるのにぴったりの場所。
「あ、そうそう。さっきまめ子ちゃんを訪ねてお客さんが来たのよ」
「へ?私にですか?」
「えぇ!それがもう、いい男でね!久しぶりに見たわ~あのレベルのイケメンは!」
「田中さん、目がキラキラしてる」
「そりゃそうよ!イケメンはね、元気をくれる生き物なのよ!」
「な、なるほど~…」
「あ、それでね、一時間後にまた来るって仰ってて…あら、もう一時間経つわね」
時計に目を向ける田中さんにつられて、自分もそちらを見る。
その直後、視界の右下に映る入り口の扉が開かれた。
「いらっしゃー…あら!イケメンさん!」
「…どーも」
「えっ、イケメンさんって…」
「ねー!かっこいいでしょ、イケメンさんでしょ!」
自分の呼ばれ方に対して何か言いたそうな顔をした後、イケメンさんは室内を見回した。
「情報屋、戻ってますか」
「い、いやぁいないですn――」
「いる!いるわよ!こちらの子が情報屋のまめ子ちゃんっ!」
「っわ、ちょっと田中さん…!」
グイっと背中を押され、私はそのイケメンさんの前に立たされる。
「…アンタが?」
まじかよと言いたげな顔で固まるイケメン。
そのイケメンの目の前に動けない私。
予想外すぎた。
田中さんがイケメンさんと気軽に呼ぶ相手が
「ああああの有名な、ひ、土方十四郎さんですよね、あ、握手してほしいなぁ~…」
「顔が引きつりまくってんぞ。握手してほしいなら何で後ずさってんだよ」
真選組 鬼の副長 土方十四郎だったとは…