11月10日
夢小説設定
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(高2)
「ご馳走さまでした」
「はい、17の歳とって良い年になりますように」
「大仰だなあ」
「具体的に言えば悲願の春高全国優勝」
「確かに」
「そーだ、ちょっと練習する?」
「うん、いつもありがとう」
そんな中、宇内さんから突然帰りにご飯食べようと誘われてここに居る。
もし断ったらどうしてたんだろう…ちょっと料理とケーキの価格を考えてゾワっとした。
明日からはまた仙台市内の練習試合行脚がまた始まる。縁下さんたちにとっては最後の春高。
——俺たちは去年と今年を比較し、時折モヤモヤ考えてしまう。……ちゃんと、成長……出来ているだろうか??
俺は土日に宇内さんを捕まえては、こんな風にご飯を食べた後練習に付き合ってもらっている。
また去年同様嶋田さんも誘ってくれるので練習相手には事欠かず、練習に関しては……とても恵まれた環境だと思っている。
去年の夏から秋の合宿のお陰で、同時多発攻撃のような非常に強力な武器を得て、戦う力が強化したと実感した。
しかし、反面今年は伸び率がイマイチわかりにくく、焦る気持ちもあった。
俺たちは、強い。知ってる。
だが、新たな武器も欲しい。
公園に着き、それぞれ荷物を砂場のヘリに置いた。
宇内さんは手早くボールをいつもので膨らませて、空気圧をチェックした。
「ほいっ」
「………」
アンダースローのボールを貰って、レシーブ。
まずはレシーブ30回。
俺の課題は2つ。一つ、ジャンプサーブを修得して宮さんみたいな二刀流のサーブが打てるようになること。
二つ、基礎能力向上。スタミナ。
出突っ張りに弱く、試合の後半はバテてしまうのを本当になんとかしたい。影山と日向ホントどーなってんの…。
全然足りない。まだ……。
「うりゃあ!!」
「!?ウワッ、」
宇内さんがジャンプアタックしてきた。
慌てて滑り込んでレシーブした。
それはホームランというか、公園のフェンスにぶつかってしまった。
「もーっ、なに?ビックリするよー」
「集中!」
「……へーい」
仕方なく、打ち込みに集中させられる。
この日はおよそ10時ごろまでした練習していたように思う。
*********
「…ほい、コンポタ。まだお誕生日キャンペーン中なので無料ですやったー」
「やったー……?」
いつも通りのよく分からん理論で押し切られた。
手のひらで暖かい缶を堪能する。うー、ありがたい。
宇内さんはおしるこを飲んで、吐息で遊んでいた。
「ふー……。みてー。にゃんこー」
「?……ぶっ、すっご!!」
タバコのアレみたいに、器用にも猫やパンダ型の湯気を作っていた。
「俺にもやってー」
「何がイイ?」
「じゃあ自由の女神」
「!?……普段絵描かない人って気軽に立体物描くの指定してくるよね」
「あっ難しいやつ?」
「えーと……どんなんだっけな……」
水蒸気が渦を巻いて……人型になって…。
……最終的に人ではなくなった。
「……テカチューじゃん」
「無理。造形が複雑すぎる」
「やったー宇内さんに久々に勝ったー」
テカチューは空中を数歩トコトコ歩いて、やがてバイバイのモーションをして消えた。なんか切ない!!
「元々は無形の湯気だけど、形があって感情があるように誤認したらもう、生物として認められるわけです」
「何?宗教??」
「そういうんじゃないけどさー。ひどいフリに対しての意表返しだし」
「ふうん」
「……山口さ、多分他の子より頑張ってる」
「?」
「高校生っつーのはさー、気楽に楽しくダラダラモラトリアムするもんなんすよー」
「えー??何キャラ??」
「所がウチのバレー部の同級生たちは揃いも揃って敬虔な信者の様。バレーの神様に青春を捧げ過ぎる………特に山口が哀れなほど捧げ過ぎ」
「へえ、どうしてそう思うの?」
「……致命的なまでにバレーに向いてないって自分が分かってる」
「……!」
「性格かな、始めたきっかけかな。……山口は負けたくない人が《今》居ないのが大きい、と私は分析した」
「そう、なのかな?ツッキーは?」
「そうなら私の勘違い。ごめん、謝る。……山口はどこまで行っても月島の味方であって、競う相手では無い。野球で言えばバッテリー」
「悪い気はそんなにしないけど……じゃあライバルがいないとなぜバレーに向かないと思う?」
「バレーに関わらず。ゴールの形が曖昧になるから。例えば試合に勝つだけがゴールだなんて…負けた時の次回改善が次は負けないようにいようとか救いようが無さすぎる」
——無理なのに。
宇内さんが飲み込んだ言葉を読み取ってしまう。
つまり、達成目標がなりたい人や勝ちたい人が明確ではない以上、ポジティブではないから何か目標人物を立てておけという事だろうか。
ならば、
「……なら、ライバルは宇内さんかな」
「えっレギュラーじゃないのに!?」
「在り方だよ、だって宇内さんもバレーのライバルいない仲間じゃん」
「あー……まあー……そうかー私もかー?」
「俺宇内さんにトス回し勝てる気しないし」
「は?山口サーブ鬼難だからね?」
「妙な勝負師な所にいっつも読み負けするし!」
「ブロック率、キミがナンバーワンなの超腹たってるからね!!私の前に立つな!」
「同チームの時はした事ない事急に振るから緊張するし何あのリバウンド後俺に渡して来んの??」
「私もだよ、この前とかなんで2回もセッターに攻撃さすんだよ!?あれれー??これってジョブローテだっけー??って思ったわ」
お互いに相手に言いたかった小言をぶつけ合う。
するとなんとまあライバルという言葉に真実味が増すことか。
「……どう思う?」
「納得した。お前が終生のライバルだ」
納得された。
「……思いつきみたいな感じで大変遺憾だけど。これでキミはもっとバレー信者となる」
「そう?なんで?」
「もっと、バレーがハマる瞬間。木兎さん・黒尾さんらの持論とはちょっと違うけど私はこう思う。
……圧倒的困難に相対し、自分のピースがどこにハマるか見つけた時。
別に、最大攻撃のエースでなくてもいい。絶対防御のブロッカーでなくてもいい。ましてや神がかり的な技能なんて全く不要。自分の役割が見つかった、そしてそれが遂行できた。周りがナイスと評価してくれた…それだけで充分ハマったんだよ。
——私は君にある事を約束しよう。ライバルを得た暁には、更に夢中になれる。具体的には来年の今日だ」
あの時の宇内さんの顔を俺は生涯忘れないと思う。
「ご馳走さまでした」
「はい、17の歳とって良い年になりますように」
「大仰だなあ」
「具体的に言えば悲願の春高全国優勝」
「確かに」
「そーだ、ちょっと練習する?」
「うん、いつもありがとう」
そんな中、宇内さんから突然帰りにご飯食べようと誘われてここに居る。
もし断ったらどうしてたんだろう…ちょっと料理とケーキの価格を考えてゾワっとした。
明日からはまた仙台市内の練習試合行脚がまた始まる。縁下さんたちにとっては最後の春高。
——俺たちは去年と今年を比較し、時折モヤモヤ考えてしまう。……ちゃんと、成長……出来ているだろうか??
俺は土日に宇内さんを捕まえては、こんな風にご飯を食べた後練習に付き合ってもらっている。
また去年同様嶋田さんも誘ってくれるので練習相手には事欠かず、練習に関しては……とても恵まれた環境だと思っている。
去年の夏から秋の合宿のお陰で、同時多発攻撃のような非常に強力な武器を得て、戦う力が強化したと実感した。
しかし、反面今年は伸び率がイマイチわかりにくく、焦る気持ちもあった。
俺たちは、強い。知ってる。
だが、新たな武器も欲しい。
公園に着き、それぞれ荷物を砂場のヘリに置いた。
宇内さんは手早くボールをいつもので膨らませて、空気圧をチェックした。
「ほいっ」
「………」
アンダースローのボールを貰って、レシーブ。
まずはレシーブ30回。
俺の課題は2つ。一つ、ジャンプサーブを修得して宮さんみたいな二刀流のサーブが打てるようになること。
二つ、基礎能力向上。スタミナ。
出突っ張りに弱く、試合の後半はバテてしまうのを本当になんとかしたい。影山と日向ホントどーなってんの…。
全然足りない。まだ……。
「うりゃあ!!」
「!?ウワッ、」
宇内さんがジャンプアタックしてきた。
慌てて滑り込んでレシーブした。
それはホームランというか、公園のフェンスにぶつかってしまった。
「もーっ、なに?ビックリするよー」
「集中!」
「……へーい」
仕方なく、打ち込みに集中させられる。
この日はおよそ10時ごろまでした練習していたように思う。
*********
「…ほい、コンポタ。まだお誕生日キャンペーン中なので無料ですやったー」
「やったー……?」
いつも通りのよく分からん理論で押し切られた。
手のひらで暖かい缶を堪能する。うー、ありがたい。
宇内さんはおしるこを飲んで、吐息で遊んでいた。
「ふー……。みてー。にゃんこー」
「?……ぶっ、すっご!!」
タバコのアレみたいに、器用にも猫やパンダ型の湯気を作っていた。
「俺にもやってー」
「何がイイ?」
「じゃあ自由の女神」
「!?……普段絵描かない人って気軽に立体物描くの指定してくるよね」
「あっ難しいやつ?」
「えーと……どんなんだっけな……」
水蒸気が渦を巻いて……人型になって…。
……最終的に人ではなくなった。
「……テカチューじゃん」
「無理。造形が複雑すぎる」
「やったー宇内さんに久々に勝ったー」
テカチューは空中を数歩トコトコ歩いて、やがてバイバイのモーションをして消えた。なんか切ない!!
「元々は無形の湯気だけど、形があって感情があるように誤認したらもう、生物として認められるわけです」
「何?宗教??」
「そういうんじゃないけどさー。ひどいフリに対しての意表返しだし」
「ふうん」
「……山口さ、多分他の子より頑張ってる」
「?」
「高校生っつーのはさー、気楽に楽しくダラダラモラトリアムするもんなんすよー」
「えー??何キャラ??」
「所がウチのバレー部の同級生たちは揃いも揃って敬虔な信者の様。バレーの神様に青春を捧げ過ぎる………特に山口が哀れなほど捧げ過ぎ」
「へえ、どうしてそう思うの?」
「……致命的なまでにバレーに向いてないって自分が分かってる」
「……!」
「性格かな、始めたきっかけかな。……山口は負けたくない人が《今》居ないのが大きい、と私は分析した」
「そう、なのかな?ツッキーは?」
「そうなら私の勘違い。ごめん、謝る。……山口はどこまで行っても月島の味方であって、競う相手では無い。野球で言えばバッテリー」
「悪い気はそんなにしないけど……じゃあライバルがいないとなぜバレーに向かないと思う?」
「バレーに関わらず。ゴールの形が曖昧になるから。例えば試合に勝つだけがゴールだなんて…負けた時の次回改善が次は負けないようにいようとか救いようが無さすぎる」
——無理なのに。
宇内さんが飲み込んだ言葉を読み取ってしまう。
つまり、達成目標がなりたい人や勝ちたい人が明確ではない以上、ポジティブではないから何か目標人物を立てておけという事だろうか。
ならば、
「……なら、ライバルは宇内さんかな」
「えっレギュラーじゃないのに!?」
「在り方だよ、だって宇内さんもバレーのライバルいない仲間じゃん」
「あー……まあー……そうかー私もかー?」
「俺宇内さんにトス回し勝てる気しないし」
「は?山口サーブ鬼難だからね?」
「妙な勝負師な所にいっつも読み負けするし!」
「ブロック率、キミがナンバーワンなの超腹たってるからね!!私の前に立つな!」
「同チームの時はした事ない事急に振るから緊張するし何あのリバウンド後俺に渡して来んの??」
「私もだよ、この前とかなんで2回もセッターに攻撃さすんだよ!?あれれー??これってジョブローテだっけー??って思ったわ」
お互いに相手に言いたかった小言をぶつけ合う。
するとなんとまあライバルという言葉に真実味が増すことか。
「……どう思う?」
「納得した。お前が終生のライバルだ」
納得された。
「……思いつきみたいな感じで大変遺憾だけど。これでキミはもっとバレー信者となる」
「そう?なんで?」
「もっと、バレーがハマる瞬間。木兎さん・黒尾さんらの持論とはちょっと違うけど私はこう思う。
……圧倒的困難に相対し、自分のピースがどこにハマるか見つけた時。
別に、最大攻撃のエースでなくてもいい。絶対防御のブロッカーでなくてもいい。ましてや神がかり的な技能なんて全く不要。自分の役割が見つかった、そしてそれが遂行できた。周りがナイスと評価してくれた…それだけで充分ハマったんだよ。
——私は君にある事を約束しよう。ライバルを得た暁には、更に夢中になれる。具体的には来年の今日だ」
あの時の宇内さんの顔を俺は生涯忘れないと思う。