『今日　敗者の君たちよ』


翔陽をかけす荘に送り届け、ホテルに戻る。
晩御飯は食べる気はしないな……いいや、そのまま寝てしまおう。

依頼した通り天満がフロントに荷物を預けてくれたらしい。体育館の大荷物がワープしていた。

ベッドにゴロッと転がり、超能力でバスルームの蛇口と栓を操作して湯船にお湯を張る。
冬場だからかやがて室内窓はうっすら水滴で曇っていた。

Tomorrow is another day!
私は窓に文字を書く。


日本のスポーツは勝ってナンボなところがあると私は考える。だから敗北にはスポットは決して当たらない。
しかし、そこまで積み上げた肉体やインプットが無くなるということはない。なんなら望んでようがなかろうが、次がやって来るのだ。
次、何するか。どんな課題を解決すると次に進めるか。その繰り返しなのだろう。

まさに明日は明日の風が吹く。


今日、烏野は準々決勝敗退した。
山口君が『IH青城戦後の食事会はまるでお通夜のようだった』と笑って言っていたのを思い出した。
今回……この言い方は良くないかもしれないが、ある種各々納得するような雰囲気が漂っていた。

鴎台に対して最善を尽くし、極限状態のお陰で解決すべき課題を見つけた。
言うなれば、意味ある敗北。




——これは言う事をやめた言葉。
昨日までなら、心に仕舞い込んで鍵をかけて……いつか30年後くらいにふと伝えようと考えていた。

負ける試合が怖かった。ただそれだけの理由。
でも今日、心変わりをした。私は課題解決プログラムを走らせて、意味ある敗北をしようと思う。