私たちは、榎本さんに刀を返したあとは、フラフラと市場を冷やかしていた。

「干し柿は朝市しか売ってないよ。普通の柿ならここにあるよ」
「いや、ありがとう。干し柿がいいんだ、明日買いにくるよ」
「そうか。またおいで」

「干し柿売ってなかった」
「ちょっと季節とズレちまったからな……。明日には食べられるらしいし別にいいんじゃない？」
「私は干し柿じゃないけど、乾燥したモモが手に入ったよ。美味しいよ」
「おおっ、桃か！これも美味しいよほら」
「ハムっ…………甘い！ヒンナッ！」
「そりゃ良かった」

東京は屋台が多く干し柿などすぐに見つかるだろうと高を括っていたが、意外と探さないとないようだ。
珍しいものはあるけど必要なものは見つからないとか、現代の高級スーパーにも通じるものがあるよね。アシㇼパさんはどうしても干し柿を手に入れる必要があるらしく、まだ粘ろうとしていた。

「ねえぇえ〜由紀ちゃん♪」
「金なら貸さんで」
「ぎくっ、いやっ。お金じゃなくてえ、そのお〜お酒を奢ってくれませんか」
「ほぼ同義やん……私に選ばせてくれるんならええよ」

「由紀さん、白石に酒恵んでやる必要はねえよ」
「こいつ暇だとすぐ飲む打つ買うに走るからあえて呑ますんだよ。知ってるだろ、こいつのクズ気質」
「…………なるほど」
「樺太ではシライシが遊郭に行かないように見張ることもあったが、最も効果的だったのが先に酔いつぶすことだったんだ」
「お前アシㇼパさんたちにどういう方向で迷惑かけてんの」
「てへ⭐︎……たまにはみんなでワイワイ飲もうぜ！ようやくアシㇼパちゃんは肩の荷が降りたんだろ。祝宴！祝宴！！」
「明日早起きするんだから、飲みすぎんといてや」

　酒屋は徳利量り売りがある。客が徳利を持っていくと酒屋が注いでくれて、それらを家に持って帰って楽しむのだ。

「よーし今日は飲むぞーっ」
「ウエーイ！！」