コタンコㇿ カムィ オプニㇾ
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「これでぇえ〜、赤タン3枚だァあ……俺のかちいぃ」
「クソおお、次で猪鹿蝶揃ったのにいいぃ」
べろっべろの男が2人部屋でぼやいでいた。
すでに3回ぐらい隣部屋から壁ドンを喰らっているが、どこ吹く風。勝ち負けで大層盛り上がりなんだかんだで合わせ2人とも4合くらい飲み干していた。
「ああぁ〜くそー、もう飲めねえー…………」
「こんな酔ったら勃たねえじゃねえかああぁ」
「お前あぇえ、夜這いをかけようとしてたなァあ?」
「あんないい女、夜這いかけないのはむしろ失礼だろォオオ。ぶっちゃけ旭川の時から狙ってたわァあ」
「最初っからじゃねえか。…………お前が空気読めるおっさんで良かったよ、ったく」
「別に空気を読んだんじゃねえよ、あんな死と隣合わせの極限状態でヤれる奴ァ…………性欲旺盛なお花畑野郎だよ」
「………………」
杉元はスッと、花札を片付けた。
▼▼▼
東京、隅田川。アシㇼパと白石は話し込んでいた。
「だから、私は杉元と由紀を宿の一室に押し込んで一夜閉じ込めようと思う」
「待って?それはお節介っていうやつだと俺ァ思うのよ」
「例えば『お前らウコパウチコㇿしろ!!早急に!!』とかいうのはさすがに直接的すぎないか?良いのか??」
「そーゆーのは本人ら程々の距離感っていうのがあんのよ」
ウコパウチコㇿがなんなのか白石は突っ込まなかった。アシㇼパはハァンとため息をついた。そしてまたぼーっと隅田川を見る。
「杉元も、北海道にいた頃とずーっと変わらないのなんでだ?シライシはどう思う?」
「ま、気を遣ってんじゃねーのかな」
「むしろ腹が立ってくる、――――この鯉食べれないかな」
「ええ〜食べるのぉ?」
「…………アシㇼパさん。鯉の洗いは隅田川の鯉では無理やで」
「あ」
「おかえり」
由紀が男の格好で戻ってきた。漁師との会話を終えてきたらしい。
───杉元はむまやに馬を返しに行ったので、三人はそれぞれ思い思いの方法で暇を潰していた。
例えば白石ならば、東京地図を持ってこれから行きたいところを確認したり、アシㇼパならば川の中にいる魚にチョッカイをかけていたところだった。由紀は地元漁師に漁業の話を聞きに行き、なんなら明日午前中に同行させてもらえないかなどの交渉をしていた。由紀の右目は潰れているがやっぱり狩猟一直線だった。断られたけど。
「由紀、鯉の洗いとはなんだ?」
「鯉の洗いっていうのは鯉料理の一つでね。刺身にした鯉を一度湯水に通してから氷水に落として洗ったものを指すよ。活きた鯉をすぐ〆て洗いにしなければならない速攻料理で、湯を通して氷水に通すことでコリコリとした独特の食感が生まれてね、普通より脂っぽさとか臭みが和らぐんよ」
「よし食べよう。今すぐ食べよう」
アシㇼパは腕まくりをして手をワキワキしたところで由紀が首を振って止めた。
「…………だから隅田川の鯉はダメだよ、アシㇼパさん。そういう食用に養殖された鯉やないと。多分この鯉だと超泥臭いよ」
「じゃあ小樽で鯉を飼おう、こいつを持って帰って子を産ませれば万事解決だな」
「鯉の洗いか…………どうしよう私も食べたなってきたわ、雌雄捕まえればあるいは」
むむうと唸る由紀も鯉を食料と判断し始めた。
「だめだこの女子たち、隅田川に華を添える優美ってやつを丸切り無視していやがるぜ」
「子といえば、お前まだ産む気はないのか?」
「オ…………おぉ、オイ!!!アシㇼパちゃん!!本人にいうやつあるかッ」ベシッ
「は?私??10人計画は未だ進行中よ?」
「あっ由紀ちゃんそういう感じ??」
白石は鈍感な由紀に胸を撫で下ろした。
恐らく由紀は白石とアシㇼパの会話の流れはほとんど聞いていなかったので、恐らく単純にお前に子の予定があるのかと聞かれたものと勘違いしたのだろう。逆にアシㇼパはヒートアップして拳を振り上げ下ろしてを繰り返した。
「ウコパウチコㇿ!!!ウコパウチコㇿ!!!」
「ね、ねえ白石さん、この人どうしたの?いくらアイヌ語とはいえ、往来で放送禁止用語叫んで…………なんか壊れてない??」
「アシㇼパちゃんも色々あんのよ、ところでウコパウチコㇿってどういう意味ですか?」
「え?んっ、耳かして」
「ん」
「直訳では、互いに淫らな思いを持つという意味で、意訳すると性行為、やね」
「……………………」
さすがの由紀も人通りが激しい東京の道端で説明をするのは憚られたのか、白石の耳元に口を寄せて解説をしてくれた。
内容もそうだけど息が耳にかかるシチュエーションに白石の白石が反応した。───白石は悪童である。旅の途中でパウチカムイのエピソードを知っており、意味もなんとなく察しているのに、あえて由紀に聞いたのだ。
そう、もちろん白石も複雑な思いは色々あったりする。
元から好きだったけど、樺太国境付近で命懸けで自分達を守ろうとして、そして守り切ったことに満足そうな顔をしたときにぐうっと心が動いて…………。そしてその思いは胸の裡に仕舞ったままほとんど表に出さぬよう注意していた。酔っぱらったりテンション上がると出るけど。
由紀が自分を顧みずに他人優先に動き、しかも自覚していないどころか利己主義を気取っている所は腹が立つけれども愛おしく、また野山を駆けて楽しそうに獲物を狙うところは誰よりも子供のようで見ていて飽きない。…………何より生き方が真っ直ぐだ。片耳を失おうとも片目を失おうとも、その気質は一向に揺らがないのが大変眩しい。
杉元が由紀にこれ以上手を出すつもりがないなら、と考えていなくもないのである。函館では海に落ちた由紀を自分が王子様のように助けてやったというのに、なんというかこの女はいつも通り。もうちょっとなんかロマンスがあってもいいんじゃない??
実際、こういうのは女より男の方が女々しかったりするのである。
「……………………」
「ん、どうしたん?」
「はー」
「ひ、人の顔を見てため息つくなやッ!?」
「(こいつは時折好意を出しても冗談に済まそうとする楽観さはなんなんだろうな)…………俺といっしょにならない?」
「は?前聞いたけどそれ……現在検討中です」
「シライシ駄目だぞ!!それ以上詰めるとこいつは逃げるぞ」
「言い草よ」
「う〜〜〜でもこの感じならまだ、いける気が」
「ウコパウチコㇿねえ…………私は構わないけど」
「マジで!?」「で、いくら出せるの?ホ別いちご?」
「「………………………………」」
すっとんきょうな呪文が飛び出て、3人は固まり、しばらくするとそれぞれブハッと笑った。
良い子の皆様には不必要な解説すると、由紀の発言の意味はホテル別1.5万円で援助交際受け付けますよ隠語である。
「お前はもー本当由紀だなーッ」
「はッはは!」
地味に由紀も修羅場回避力だけはちょっとだけ増しているのだ。多分彼女なりに列車内のアレコレは反省しているのだろう。
「ただいま!…………その鯉どうしたの?アシㇼパさん」
「捕まえた、杉元。オハウならいけるはずだ」
「いや絶対泥臭いと思うんだよなあ」
「でもアシㇼパさん、ここでそういうことすると漁場荒らしと取られるからやめた方がいいんじゃない〜?」
「許可はとった、由紀が」
「でも地元漁師に“正気かお前“と言われたよ。十中八九美味しくないよコレ」
「私は東京の珍味を食べ尽くしたいんだ。正しい洗いを食べる前にそうではない鯉も食べないと違いが分からないし……」
「クソおお、次で猪鹿蝶揃ったのにいいぃ」
べろっべろの男が2人部屋でぼやいでいた。
すでに3回ぐらい隣部屋から壁ドンを喰らっているが、どこ吹く風。勝ち負けで大層盛り上がりなんだかんだで合わせ2人とも4合くらい飲み干していた。
「ああぁ〜くそー、もう飲めねえー…………」
「こんな酔ったら勃たねえじゃねえかああぁ」
「お前あぇえ、夜這いをかけようとしてたなァあ?」
「あんないい女、夜這いかけないのはむしろ失礼だろォオオ。ぶっちゃけ旭川の時から狙ってたわァあ」
「最初っからじゃねえか。…………お前が空気読めるおっさんで良かったよ、ったく」
「別に空気を読んだんじゃねえよ、あんな死と隣合わせの極限状態でヤれる奴ァ…………性欲旺盛なお花畑野郎だよ」
「………………」
杉元はスッと、花札を片付けた。
▼▼▼
東京、隅田川。アシㇼパと白石は話し込んでいた。
「だから、私は杉元と由紀を宿の一室に押し込んで一夜閉じ込めようと思う」
「待って?それはお節介っていうやつだと俺ァ思うのよ」
「例えば『お前らウコパウチコㇿしろ!!早急に!!』とかいうのはさすがに直接的すぎないか?良いのか??」
「そーゆーのは本人ら程々の距離感っていうのがあんのよ」
ウコパウチコㇿがなんなのか白石は突っ込まなかった。アシㇼパはハァンとため息をついた。そしてまたぼーっと隅田川を見る。
「杉元も、北海道にいた頃とずーっと変わらないのなんでだ?シライシはどう思う?」
「ま、気を遣ってんじゃねーのかな」
「むしろ腹が立ってくる、――――この鯉食べれないかな」
「ええ〜食べるのぉ?」
「…………アシㇼパさん。鯉の洗いは隅田川の鯉では無理やで」
「あ」
「おかえり」
由紀が男の格好で戻ってきた。漁師との会話を終えてきたらしい。
───杉元はむまやに馬を返しに行ったので、三人はそれぞれ思い思いの方法で暇を潰していた。
例えば白石ならば、東京地図を持ってこれから行きたいところを確認したり、アシㇼパならば川の中にいる魚にチョッカイをかけていたところだった。由紀は地元漁師に漁業の話を聞きに行き、なんなら明日午前中に同行させてもらえないかなどの交渉をしていた。由紀の右目は潰れているがやっぱり狩猟一直線だった。断られたけど。
「由紀、鯉の洗いとはなんだ?」
「鯉の洗いっていうのは鯉料理の一つでね。刺身にした鯉を一度湯水に通してから氷水に落として洗ったものを指すよ。活きた鯉をすぐ〆て洗いにしなければならない速攻料理で、湯を通して氷水に通すことでコリコリとした独特の食感が生まれてね、普通より脂っぽさとか臭みが和らぐんよ」
「よし食べよう。今すぐ食べよう」
アシㇼパは腕まくりをして手をワキワキしたところで由紀が首を振って止めた。
「…………だから隅田川の鯉はダメだよ、アシㇼパさん。そういう食用に養殖された鯉やないと。多分この鯉だと超泥臭いよ」
「じゃあ小樽で鯉を飼おう、こいつを持って帰って子を産ませれば万事解決だな」
「鯉の洗いか…………どうしよう私も食べたなってきたわ、雌雄捕まえればあるいは」
むむうと唸る由紀も鯉を食料と判断し始めた。
「だめだこの女子たち、隅田川に華を添える優美ってやつを丸切り無視していやがるぜ」
「子といえば、お前まだ産む気はないのか?」
「オ…………おぉ、オイ!!!アシㇼパちゃん!!本人にいうやつあるかッ」ベシッ
「は?私??10人計画は未だ進行中よ?」
「あっ由紀ちゃんそういう感じ??」
白石は鈍感な由紀に胸を撫で下ろした。
恐らく由紀は白石とアシㇼパの会話の流れはほとんど聞いていなかったので、恐らく単純にお前に子の予定があるのかと聞かれたものと勘違いしたのだろう。逆にアシㇼパはヒートアップして拳を振り上げ下ろしてを繰り返した。
「ウコパウチコㇿ!!!ウコパウチコㇿ!!!」
「ね、ねえ白石さん、この人どうしたの?いくらアイヌ語とはいえ、往来で放送禁止用語叫んで…………なんか壊れてない??」
「アシㇼパちゃんも色々あんのよ、ところでウコパウチコㇿってどういう意味ですか?」
「え?んっ、耳かして」
「ん」
「直訳では、互いに淫らな思いを持つという意味で、意訳すると性行為、やね」
「……………………」
さすがの由紀も人通りが激しい東京の道端で説明をするのは憚られたのか、白石の耳元に口を寄せて解説をしてくれた。
内容もそうだけど息が耳にかかるシチュエーションに白石の白石が反応した。───白石は悪童である。旅の途中でパウチカムイのエピソードを知っており、意味もなんとなく察しているのに、あえて由紀に聞いたのだ。
そう、もちろん白石も複雑な思いは色々あったりする。
元から好きだったけど、樺太国境付近で命懸けで自分達を守ろうとして、そして守り切ったことに満足そうな顔をしたときにぐうっと心が動いて…………。そしてその思いは胸の裡に仕舞ったままほとんど表に出さぬよう注意していた。酔っぱらったりテンション上がると出るけど。
由紀が自分を顧みずに他人優先に動き、しかも自覚していないどころか利己主義を気取っている所は腹が立つけれども愛おしく、また野山を駆けて楽しそうに獲物を狙うところは誰よりも子供のようで見ていて飽きない。…………何より生き方が真っ直ぐだ。片耳を失おうとも片目を失おうとも、その気質は一向に揺らがないのが大変眩しい。
杉元が由紀にこれ以上手を出すつもりがないなら、と考えていなくもないのである。函館では海に落ちた由紀を自分が王子様のように助けてやったというのに、なんというかこの女はいつも通り。もうちょっとなんかロマンスがあってもいいんじゃない??
実際、こういうのは女より男の方が女々しかったりするのである。
「……………………」
「ん、どうしたん?」
「はー」
「ひ、人の顔を見てため息つくなやッ!?」
「(こいつは時折好意を出しても冗談に済まそうとする楽観さはなんなんだろうな)…………俺といっしょにならない?」
「は?前聞いたけどそれ……現在検討中です」
「シライシ駄目だぞ!!それ以上詰めるとこいつは逃げるぞ」
「言い草よ」
「う〜〜〜でもこの感じならまだ、いける気が」
「ウコパウチコㇿねえ…………私は構わないけど」
「マジで!?」「で、いくら出せるの?ホ別いちご?」
「「………………………………」」
すっとんきょうな呪文が飛び出て、3人は固まり、しばらくするとそれぞれブハッと笑った。
良い子の皆様には不必要な解説すると、由紀の発言の意味はホテル別1.5万円で援助交際受け付けますよ隠語である。
「お前はもー本当由紀だなーッ」
「はッはは!」
地味に由紀も修羅場回避力だけはちょっとだけ増しているのだ。多分彼女なりに列車内のアレコレは反省しているのだろう。
「ただいま!…………その鯉どうしたの?アシㇼパさん」
「捕まえた、杉元。オハウならいけるはずだ」
「いや絶対泥臭いと思うんだよなあ」
「でもアシㇼパさん、ここでそういうことすると漁場荒らしと取られるからやめた方がいいんじゃない〜?」
「許可はとった、由紀が」
「でも地元漁師に“正気かお前“と言われたよ。十中八九美味しくないよコレ」
「私は東京の珍味を食べ尽くしたいんだ。正しい洗いを食べる前にそうではない鯉も食べないと違いが分からないし……」