飛雄の激励とコーチの所感

「次！コイツにトスあげるんで全力でブロックしてください」
「！？」
仕切り直しでコートに立った時、飛雄はそう宣言した。

「なんだあ！？挑発かあ！？」
「ハイ挑発です。ナメたマネしてすみません！！」
「！？……ブハッハ！！なんだお前面白えーな！よっしゃ！挑発ノったるぜ！！」
「あざす！！」
「—————？」

年上には丁寧で従順なので、基本的に翔陽も飛雄も可愛がられるタイプだ。
挑発と取れる発言はある意味珍しい。先ほどの雰囲気を考えるとこれは、翔陽に何かさせたがっている様子と取れた。

「何考えてんだ？？速攻はあくまで予測不能だから有効なんであって手の内晒してブロックと真っ向勝負ってなったらちんちくりんに勝ち目無えだろ」
「……そうですね、真っ向勝負になったら、そうかもしれないですね…」
「？」

武田先生も飛雄の姿になにかを察したのか含みのある発言をした。
やりたい事は分かる。翔陽飛雄以外誰にもできないクイック、それは知ってても“追いつけない”ことを。

「けれど、成功するかは翔陽のコンディション次第じゃないですかね……」
「はい……」
「んだよ、勿体ぶるなよ。教えろよ」
「わにゃ」

目を釣り上げた烏養さんに寄られ、ぶにっとほっぺ突かれる。

「試合試合っ、再開しますよ」
指をさして注意を向けても突かれ続けた。

「おぉ、さすが金持ち女子。俺のと感触違う！！」
「むー！むぅー！！……タコの口はヤメ……目的かわってませんー！！？セクシャル！ハラスメントォ！！」
「おめーも前に、手ギュって握ってきたじゃねーか！！超ドキッとしたぞあの時は！！」
「あれはーー、ご褒美ですうーーーもしや女に飢えてるんですかぁ？笑顔でギュってハグしてやりましょーか！？繋心さん！！」
「ハァ！？名前で呼ぶなし！！恋が芽生えたらどーすんだー！！」
「じゃあ繋ちゃんですね！！綺麗にフッってあげますよ完膚なきまでに！！出来る限りトラウマになるように！！」
「生意気ゴールドJKめええええ……」
「ぐぬぬぬぬ」
「ふぎぎぎぎ」

「……烏養君、最近はすぐSNSで拡散される世の中なんですからソレやめて下さい」
「先生の目がマジだな。……そっかー最近はそーゆー感じなのか」

やーっと離してくれた。フゥ。


「山口君、その動画は消しなさーい。お互いの悪ノリなんだから」
「……あ、へへ。バレちった」
「携帯を地面に対して垂直に持ってるとバレるよ。って、そーじゃなくて。早速ついた経験者コーチがうっかりで消えちゃうから！」

「マジかー。コエー世の中になったんだな日本」
「烏養君。人は簡単に“消える”んです。気をつけて下さいね」
「お、おー…？(なんかあったのか？)」


笛も鳴らさないし、中断状態で烏養さんといちゃついてたので、メッチャみんなに見られていた。ひえー。

「烏養ー！若いねーー！」
「うるへーばーか！！」
町内会チームのヤジに赤面してキレるおにーさん。なんだこの人、年上のくせにスレてなくてカワイイな。