07.東峰さんを探せ!!
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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三年の教室へ!
「…オイ……日向ボゲェ!!!1組も2組も通り過ぎたぞ!何処行く!!!便所か!!!」
「ドアを覗き、目があった3年ににこやかに微笑み頭を下げ理由なく去る1年。異様である。全くこの場所にはなぜ来たのでしょうか……あれもうトイレから出てきた」
「逃げた便所にも3年が居たよ!!どうしよう!!!」
「ったりめーだぁー!!ボゲェ!!」
ごめん営業職向いてるとかほざいたの取り消すわ。
対知り合いだけ強くて、人見知りは凄いする子だった!
「もー!何組から行くのも好きのすれば良いけど、今更怖気付いてどーすんのさ!!」
「う、うう!!影山ッ!やっぱお前先行けよっ」
「はぁ!?お前がエース見たいって言い出したんだろ!!」
「だって3年の教室なんて怖くて入れない」
「はー……」
飛雄と二人でため息をつく。
ここまで勢いで来たけど、今翔陽がへたるとは。
もう帰っていいかな。
「待てよ旭!!」
聞き覚えのある声、菅原さんの声が聞こえたのでそちらの方に顔を向ける。
しかもいまなんと?それは探し求めていた、
「「「旭」」」
不意に当事者らしき名前が挙がったので翔陽と飛雄とハモる。
「?なに?」
名前を呼ばれた大きな3年生はこちらに目を向けた。
この人が旭さんか。
すると、サッ!っと翔陽は飛雄の後ろに隠れた。
「!?オイッ」
壁にされた人がツッコミを入れる。
「??」
「お前らこんなところで何してんの」
「あっえっと」
翔陽がまごまごしている間に、菅原さんは旭さんに紹介をしていた。
「この前入った1年の日向と影山、後ろの女子は美雪ちゃん」
「おぉ!1年かあ」
「ちわっす!」
「おース」
自分の紹介の仕方、間違ってないけど旭さんへ誤解が生まれてしまう……。
「すみませんが、私はこの2人の付き添いなので。バレー部ではないです」
「えー美雪ちゃんはもうバレー部身内でしょ。あれだけ入り浸っておいて!薄情者ぉー」
「否定できないな…」
「もう諦めなよ美雪、入部届だそう」
「旭さん、見・学・者の宇内美雪です。週3で見学しています。気軽に美雪と呼んでくださいね」
「お、おぉ……よく分かんないけど、1年の女の子が見に来てくれているんだな」
「旭からも、こう……ヒゲパワーで入部を勧めてよ」
「何それ!そんな能力、ヒゲにはない!……しかし、1年賑やかだなぁ。今年何人?」
「プレイヤーはあと2人居るよ。合計4人。多くはないけど将来有望だよ」
「そうかあ」
コソコソ
「見た目より恐くないね」
「あと、二人の会話の感じ特にギスギスもしてないね」
「うん」
「がんばれよ」
ぽん、と旭さんは翔陽の腕を軽く叩いて激励した。
「えっ……一緒にがんばらないんですかっ?」
「!」
翔陽は初めて『エース』を正面で見た。
「おれエースになりたいから。本物のエース、ナマで見たいです!」
「———…」
旭さんはしばし言葉を失うが、後ろの別の3年生が呼ぶ声に反応して目を瞬かせた。
翔陽の思わぬ一言が、無意識下で勘定に入れていなかった自分を意識したのだろうか。
「………悪い。俺はエースじゃないよ」
そう翔陽への答えを返し、旭さんは去っていった。
場は一瞬静まり、旭さんの言葉の意味についてそれぞれ考えを巡らせることとなった。
「あの…よくわかんないスけど…怪我とかですか?」
飛雄が菅原さんに質問する。
たしかにあの感じ、少なくとも面倒故のサボりではなさそう。部活の後輩に好意的な雰囲気だったから。
「いや、元気」
「じゃあ何か…戻れない事情とかが?」
「いや、外部的な要因があるとかじゃないんだ」
「じゃあ受験関係でもないんですねー」
「ナイナイ。……あいつがバレーを嫌いになっちゃったかもしれないのが問題なんだ」
「えええ!?あんなに大っきくてエースって呼ばれて……何で……」
「…旭は烏野では一番デカかったしパワーもあって、苦しい場面でも難しいボールでも決めてくれるから、皆あいつをエースと思ってて、でも——」
「俺はあいつに頼り過ぎた」
菅原さんの悔しそうな顔を見て、何かを悟った顔をしたのは飛雄だった。
「…潰されたんですか?試合で」
「…ある試合で…旭のスパイクは徹底的にブロックで止められてさ…」
「!?えっ…そっ…」
つい、翔陽は普段自分が置かれる状況と照らし合わせてある意味旭さんの行動を非難するような声をあげた。菅原さんはそんな翔陽の姿にだよね、という笑い顔になった。
「“それだけ?”って思うだろ」
「あっいやっブロックされるの凄く凄く凄く嫌なの、凄くわかりますっっ」
「なるほど。だから……けれど、どれだけ上手いスパイカーだろうとブロックされない試合なんてあり得ない。ましてやエース級のポイントゲッターなら何が何でも相手ブロッカーは意識するはず。『コイツ絶対止める』って」
「うん。ブロックされるの嫌なのは当たり前……けど…それでバレー嫌いになったりは…」
「美雪ちゃんが言う通り、サーブでもブロックでも狙われてマークされてっていうのはいつもの事と言えばそうなんだけど、あの試合ではそれがとにかく徹底的で烏野は何もできなくて…。
旭は人一倍責任を感じちゃう性格だから……」
「……結局のところ、試合結果じゃなくて…それぞれ当人たちが自分自身をどう捉えるか、なんですね」
「そうだな。旭、西谷も……大地も俺も。あの試合経験した皆が皆『自分がもっとあの時』って思っている……」
「………」
皆一瞬黙り込む。
翔陽、飛雄も苦い敗北経験はあったはずだ。
しかしそれをどう乗り越えたか他人のアドバイスなんて全く参考にならない。結局本人が自己と向き合い吹っ切るしかないのだ。
「…っていうか!」
「!」
菅原さんの声にびくーとなる。
「……お前ら急がないと部活始まるぞ!!」
「あっ」
「俺もすぐ行く」
菅原さんは自分のクラスへ回れー右していった。
「また後でな!!」
「はい!!」
「今日は来ないのか?」
「ああうん。塾だねえ」
「美雪は明日来るでしょ」
「うん。あの…普通に塾ない日は毎日行く扱いなのね」
「今日とかもさ、塾終わったらバイクでくるとかどうかな」
「塾やめね?勉強なんて学校でタダで教えてくれるじゃねーか」
「むちゃくちゃ言うね君たち。ハイハイいいから部活急ぎな。走らないと。……そのうちいい方法考えるからさっさとおゆき」
「ういーす」
「また明日!!」