29. 激動の狭間に
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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(谷地視点)
「烏野ブレイク!!」
「今、リベロが上げて?他、全員助走入ってた??」
「ここに来てまた新しいことやんのかよ烏野!?」
「面白いねー!」
「やっぱ攻めてナンボだな」
「いやブロックフォローは必要だろ」
「でもつかまらなきゃいいんだし」
ワイワイと烏野を讃える声。
……私は自分のことのように誇らしくなった。
ねえっ、どうですかッ!?ウチのチームってスゴイですよねっ!
……菅原さんセッターは、普段影山君なら出来ないことをやってのけた。
西谷さんがセットして、菅原さん含む全員でのシンクロ攻撃。
「……す、すごい!!」
菅原さんは影山君と違って突飛なことがしない、安定した篤実のセッター??
……──少しだけ、違う。
コンセプトはいつでも“殴り合いを制す”。
これは、 威嚇のスパイクだ。
でも菅原さんの攻撃に対して同じポジションの……隣の影山君は菅原さんに対してライバル意識というか、ちょっとだけソワソワしている様子だ。
私は影山君に聞いてみた。
「……影山君も、全員攻撃に自分を組み込みたいって思う?」
「無理だ。……菅原さん同士はともかく、リベロと合わせる動きを練習していない。
俺は……リベロとして超高校級な西谷さんを評価しながらも。………リベロという役割を十全に使いこなしていなかったことがすごく悔しい」
「……そっか」
私はスコアボードに記録をつける。
ここで、白鳥沢はタイムアウトをとり、東峰さんのサーブからスタート。
「ネットイン!!」
烏野高校4ー1、順調だ。
しかし直後、私は背筋がヒュッとなった。
ウシワカさんの、まさに白鳥のような美しい姿勢からの強烈な腕もげアタック(さわったら腕がもげちゃうボールのこと言います)。
その後の、ウシワカさんのサーブ権に移り、そのまま強烈なサーブで東峰さんを撃つ。
続くラリーの応酬もまたもやウシワカさんの大砲撃。からのまた強烈アタック。
あっという間に烏野4ー白鳥沢5になってしまった。……前に出たと思ったらすぐに追い返される。安心とか、バッファとかそんな事は一切、ない。
続くウシワカさんサーブは、東峰さんが胸ごと当たりあげることに成功。
「「拾ったっ!」」
私と武田先生の言葉は重なる。
なんとか相手コートに返し、白鳥沢の14番さん、10番さんと続き……。
「ああ、……ウシワカさん…!」
「も一発、イッちゃえ────!!」
ゲス・ブロックの人が、ウシワカさんを応援、だめ。いや!!
「ワンチ!」
思わず目を逸らしそうになったが、弾く音で目を瞬く。
月島君がボールに触って、西谷さんがブロックフォロー……がちょっとだけ間に合わず。
惜しい!
「ウシワカ君、止まりませんね…」
武田先生が吐息交じりに、ウシワカさんを称賛した。
「…普段なら、目の前の打ってきそうな相手に飛びつきたくなるけど、月島が基本的に囮につられる事はない。さっき天童の時みたいな例外はあるけどな」
「リード・ブロックですね」
「ああ。トスが上がった先に、必ず月島は来る。……目の前に必ず壁があるっていうそれだけの事実が、どれだけ不快か。……それを5セットの間ずーっと続けられたら、どんな無神経な奴だってストレスになっているよ」
「……」
たぶん、月島君の神経も、体も動きっぱなしでいっぱいいっぱいなのに。
……スゴい……ただ、スゴイなって思う。
「サッ来ォイ」「もう一本っー!!」
ウシワカさんのサーブは、今度はギリギリのネットイン。
「前ェーッ!」
「サーブ止まんないね……」
「あぁ、スゲェ」
私のボヤキに影山君も素直に肯定した。体が大きいとか、3年生だからとかそういう問題じゃない。ただ、圧倒的。
14番さんから、10番さんに行き……5番、ゲスブロックの人で速攻!
またもや月島君が跳ね、白鳥沢の14番さんへ返る。
「ハアッ」「もっかいもっかい」
ゲスブロックの人がイライラしながら、月島君が弾いたボールをにらんだ。
10番さんは今度は4番さんにボールをセット!!
「ワンチッ!」
「チャンスボール!!」
今日は月島君の動きがキレキレだ。昨日和久南後に見た……伊達工のブロッカーの人みたいだ!!
「えっ、トスが上がる前に動いた…!!!」
菅原さんがセットする前に、ゲスブロックの人が烏野レフト側に走り出した。
田中さんのストレート〜クロス側のコースを絞られ、
超インナークロスで叩いたところを、14番さんに捕らえられる。
「も、一丁ォーッ」
5番さんが、10番さんにトスを呼ぶ。囮か、スパイク。どっち!?
月島君は冷静に、ウシワカさんにリードブロックした。
ボールは弾かれ、澤村さんのフライングは間に合わずちょっと前に落ちた。
「あ!!……」
「アウトか?……月島のブロックを避けようとしたか……チ、ボールタッチ判定か。ここだとあんま球が見えねえ……」
ええと、澤村さんが取り損ねたと思ったら、アウトだったけど、オーバーコールで……白鳥沢の得点。影山君はボールを見よう目を細めて、眉間にしわを寄せていた。
私も記録のため、目を凝らした。
「ん……?」
「………あれ」
「あの、コーチ。……月島、手……変です」
月島君が、利き手を抑えて脂汗をかいていた。
隠れている指の隙間から、かすかに血が見えていた。