29. 激動の狭間に
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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(菅原視点)
第5セット、泣いても笑ってもこれが最後。
「ファイナルセット、スターティングは菅原で行こうと思う」
烏養さんは、影山を休める方針でいくようだ。
目こそイキイキしているが、どんどん消耗し上手く動かない自分の体に怒る影山を見ているのは正直心臓に悪かった。
そして──ついに自分の出番がやってきた。
「……ハイ」
自分の声は若干震えているように感じ、唾を飲み込んだ。
大丈夫だ、緊張することなんかない。
ピンチで入ることは今までもあったんだし……
白鳥沢の応援が集中を阻害するのを感じる。
だめだ、手が冷たい、心が冷える。
……俺は、あんな悲痛な顔で帰っていった清水に何をもたらせる?
息が凍るようだ……?くそっ、こんなんじゃダメだ。
「うぇーーーい!」
「うわあっ!?……た、田中!?こんな時に何すんだ!!」
「日向もこーい!!!」「わかりましたッ!!!」
どーんと田中がぶつかってきて、俺は仰け反った。
田中の掛け声で日向も背中から乗り上げてきた。……重っ!!?日向意外と重!!
「ノヤっさん!!」
「よっしゃ!」
「わーわーもうやめろ積載オーバーだー!!」
手を振って西谷が寄ってくるのを追い払った。
田中は扇動をやめて、こちらに振り返る。
「……スガさん、俺わかるんス。こんな時って、冷静になれって思えば思うほど周りが見えなくなるもんなんです。
これって……しゃっくり治すみたいなもんですかね??びっくりするとこうやって我にかえるんで」
「!」
「ま!俺がこれに気づいたんも対処方法も……美雪ちゃんのおかげっすかね!!俺、単独じゃスガさんを元気にできるかはわかんねーっすけど、気づかせることは俺もできます。……ここは、アンタ”だけ“の戦場じゃないです。俺たちが付いてます」
「た、田中……!」
俺が気付かんうちにこんなビックな男になって……田中の成長に妙に感動を覚えた。
「あのっあの!美雪ちゃんみたいにこう……起伏?は期待できないですけど、私でよければぎゅーってしましょうか??」
「エッ!?やっちゃん!?!?」
「おおーー!!」
「ちょっっ!!谷地さんは宇内さんに感化されなくていいから!!!」
なんとやっちゃんからも大サービスのチャンスだった。そうか……俺の時代がきたのか。そうかそうか……。特に大いに焦りやっちゃんを必死で止める山口を見ると、一回後輩をぬいぐるみして置くべきかと唸る。
「うちのやっちゃんはそういうサービスやってないんで!!」
「スガもヨシ頼もうかなって顔するなァ!!!」
手を広げてやっちゃんに迫っていくと、旭と大地の風紀委員から流石にアウト判定がきた。チッ。
「雰囲気は問題なしですね……」
「絶対アイツの存在は谷地に悪い影響を与えつつあると思う……」
手の震えはいつの間にか止まっていた。
「攻める事は相手を崩す事。サーブもだ。ミスを避けたいって気持ちはわかる。でも心を強く、強く持って行ってくれ……よし、行ってこい!!」
「オァース!!」
……皆俺を、影山のためのシノギ役、と思っているのかもしれない。
たしかに俺単独では、影山には技術も身長も及ばない。でも、俺は……。
「あれっセッター代わっちゃうの?つまんねー!」
白鳥沢5番、天童から煽られる。
ダメだダメだ。あつくなっちゃ。
「フ────…」
「迷ったら俺に集めればいい」
旭が俺に声を掛けた。
…でも、俺は……こいつらがいる。
「頼もしいなエースかよ、このやろー!!」
「エースだよ!!」
ほんと、頼りになるったらねーべ!
「一本で切るぞォ!!」
「オォ!!」
──ファイナルセット、開始。