白鳥沢学園、第4セットで初回のタイムアウトを取った。

「ここでやるか一人時間差ー！！」
「ツッキー、一人時間差なんて使えたんだ！？にしても溜めたなあ」
「？」
「…一人時間差は最近あまり使われない技なんだ。リードブロックには通用しないから、そうなんども通じる手じゃないよ」
「！だから”ここ絶対獲らなきゃ“って場面まで待ってたってコトね！！」
月島明光は田中冴子の見解に頷いた。

「攻撃を決める方がどうしても印象に残るけどさ、連続得点に必要・且つ難しいのは相手の攻撃を一度受けきることよ。つまり相手を崩した忠のサーブ無くして今の得点は無いワケよ！」
「弟子自慢！！」
嶋田のサーブ重要性を述べる発言には、多少の弟子自慢が含まれていたので滝ノ上が突っ込んだ。

次の山口のサーブは、リベロの山形が受けて、白布から牛島アタック。
…山口のピンチサーブのターンが終わる。

「ウシワカ打点下がんねぇなァァ！」
「でも相当の本数ってますしそろそろ足にもキてるでしょう」
「ああ…粘っていれば、ウシワカにだってスタミナの限界は必ず来る…！」
「──このセット、白鳥沢がもっと劣勢だったならこの4セット目は捨ててウシワカ温存…次のセットでトドメ刺すってパターンにするんだろうけどな。がんばればこのセットも白鳥沢が取れそうだからな！ガハハ」
「やめて下さいよ烏野が取りますよ！」

烏養元コーチがある意味で現実に引き戻す言葉には嶋田も反論する。
頑張れば取れる、ここで凌いだらここで終われる。
だが、無茶をし、下手に烏野にセットを奪われたら消耗した状態で試合が続いてしまう。
どちらにいくのか、繋心も鷲匠もどちらも悩んでいる様子が見受けられた。

「……！」
月島と影山のセットが合わなかった！月島がフォローをして得点こそは烏野についたが、ついにその時がやってきてしまった。

「ひいい！心臓ヒュッてなったああ！でも結果オーライ」
田中冴子がたははと笑うが、嶋田と滝ノ上の表情は固かった。

「……初めての烏野5セットマッチ、相手は全国常連チーム……4セット以降は烏野にとって未知の領域……」
「え、うそ。…そうなんですか！？…じゃあ…誰よりもボールに触るセッターの疲労は段違いですね…！」
嶋田がぼやいた言葉に、月島明光が苦しそうに返した。


「……あとさ、美雪ちゃん……寝ちゃったけど試合いいんかなぁ？」
「ああ〜。ちょっと……お疲れよね」
「移動距離だけならチーム・イチだし」
「んー、大丈夫かなあ？？」
美雪は、月島明光の隣の席に俯くような感じでカバンを抱きしめ、全く動かない。
最初は慌てて皆で肩を叩いたり声をかけたが、清水と違い熱もなさそうなのでそのままにしている。
烏養から善条寺戦からずっと頭も足もせわしなく動かしている一人と聞いていたので、嶋田と滝ノ上は何かあるまでは寝かしておこうという方針だ。

「……あ！白鳥沢また初めて出てくるピンチサーバー！」
「白鳥沢だからな、選手層は厚いだろうな」
「むううぅ、こいつは何サーブ？？烏野ーっ負けるな！！」
「…ジャンフロだ！！」

影山が上げて、東峰が叩く。
白鳥沢は山形があげ、大平から牛島へ……。
今日だと思いきや、牛島はソフトタッチで前に落とした。

「あー！！！」
「……前がっ、……居ない！！」
「──……」

烏野は第4セット、1回目のタイムアウトを取った。
皆の顔は暗い。