28.対策と対抗
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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(月島明光視点)
俺が彼女への恋を自覚したのは東京に送った途中だった。
日向君がサービスエリアで迷子になって、なんか慌てて探していた時。
日向君の手前かちょっとだけ敬語混じりで話すし。経った年数とか距離感とかかんじて多少センチメンタルにはなってた。
「……あ、車。来るかもしれないから気をつけないと」「ん」
俺はふとした癖に、やってしまったと恥ずかしい気持ちになった。
駐車場からサービスエリアの途中の道路で、彼女に手のひらを向けて差し出た。
まるで小さい子に危ないから手を繋ごうと言わんばかりのポーズをしてしまった。
──ついやってしまった。もし蛍にそれをやったら死ぬほど冷たい目で見られるやつ。
しかし彼女は、目を細めて懐かしそうに笑った。
そして俺の手を取ってくれた。
「うん、気をつける!」
ちょっとからかいは含まれていたけど、それでも楽しそうに掴んだ。
手の感触、昔と違って大きくなって、柔らかく……吸い付くような手。
なんか『ぐわーー!!』ってなってドキドキしてしまった。
日向君は割りとすぐに見つかったから繋いだ時間はほんの一瞬だったけど、それでも俺が心乱れるまでには充分だった。
***
これはヤバいんじゃないかと思って、東京に着いたら即、宇内に相談した。
ほんとは蛍の合宿での様子とか多少見てから行きたかったけど、ヤバさでこっちが勝った。
「んあー??別にイイんじゃないっすか??」
宇内は美雪ちゃんと違って、何ーっにも変わってなかった。
パスタを頰いっぱいに詰め込みながら、テキトーに返された。
あんまりにも真剣に聞いてない様子なので、むぅと唸ると宇内はパスタを飲み込んだ。
「俺はどうとも。あいつ、親とあんまり一緒に過ごさない子だから……妙に自立した子だったんですよね。ほら転んでも周りを見てから一人で泣かずに起き上がるっていうか。
でも月島さんのおかげで自然と?甘えられるようになったっていうかって意味では俺はイトコとして恩があります。あと年齢?俺は月島さんが好きなら付き合うのも良いとは思いますよ。俺の父ちゃん母ちゃんは8コくらい違うしアリでしょ」
「……あ、普通に考えていたのね」
「美雪次第っすけどね」
「……おぉ。プリンオゴるわ」
「うーっす、ごちそさんです」
***
子供の時から知ってた子にアプローチとかキモいかなと思ったけど、宇内は理解を示してくれたので、そっからは好きって気持ちを隠さないようになった。
飲みに誘ったり(未成年なので美雪ちゃんは飲んではないけど)、こっちから電話かけて夜喋るようになったり。
日向君を東京に送ったことをキッカケにちょっとずつ俺の気持ちが前に向いた。
「ねえー聞いてよう……職場の先輩がさぁ」
「はいはい、聞きますよ」
触れられるような距離で、話せることがとても嬉しい。今はこれくらいで良い。
──彼女が卒業後の進路について、宮城に残るつもりはないと聞いた瞬間は頭に血が上った。
トチったせいで嫌われたかも服のクッションの中で大泣きした。
じゃあ、卒業までにちゃんと気持ちを伝えて……でないと本当にどこか手の届かないところに行ってしまうと奮起した。
──あの子の家に来た日、ついに告ろうとした。
蛍がいる事も意識から外れ、ただあの時は伝えなくてはと思っていた。
美雪ちゃんから気持ちを聞かれたとき、そのタイミングだと高揚した。
でもすぐにその気持ちは萎びた。彼女の焦燥の顔に、気付いたのだ。
この子は自分のことで……困っている。
困らせていたのか、こんなに好きなのが……それが重荷になっていて……好きな人を泣かす男になるのは……ダメ。
ギリギリ理性が勝って、弟のおかげでもあるけど帰った。
もし居なかったらどうなっていたか分からない。
俺は……好きになってはいけない子を欲しがってしまっているのかも知れない。
けど、けれど……やっぱり好きで。どうしようもなかった。
***
(美雪視点)
不用意に明光の気持ちが知れてしまい、顔が赤くなることを自覚する。
この能力は過剰(ダメ)だ。
私が人間で居続けるためには要らない。頭がパンクする。私はポケットティッシュを持ったまま、座り込む。
「ああ……うぅ」
ドキドキと心臓が早鐘を打つ。拳でむねの辺りを、きゅっと握った。
ちがう、私はここに何をしにきた??……試合を見にきたのだ。応援だ。
かぶりを振り、牛島さんの方に意識をフォーカスした。
第三セット、白鳥沢。リズムが復活した白布とチームが導いた。
心がざわついている間に、試合がこんなに進んでいたのか。不味い。
牛島さんを見ると、とある情景がぶわっと視界に広まった。
翔陽が、飛雄と、月島君と山口君と一緒に、白鳥沢に偵察?に向かって。
あの牛島さんに、喧嘩を売った日を。
《コンクリート出身、日向翔陽です……あなたをブッ倒して全国へ行きます》
翔陽の決意の顔、飛雄の眉間に皺を寄せた顔。……月島君と山口君が呆気に取られる顔。
「……!」
おかしい、私はあの時居なくて、後から山口君に聞かされた出来事なのに?
見えちゃいけないものをいっぱい見えて人間離れしたと認識、私のメンタルはぼ
エラー、エラーエラー。
「・・・あっ、」
こんなのおかしい。
私はニンゲン、のはず
心がヒュっと、どこかに堕ちる感覚がして。
視界は暗くなっていった。
薄汚く、独房のような……場所に落ちていった。
(彼女の心が死んだので視点は選手側へ向かいます。ばいちゃ)