28.対策と対抗
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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清水先輩を送り届けて会場アリーナに戻ると、既に烏野は1セット取られた後の第2セット。
烏養コーチの顔は厳しい顔をしていた。
得点は!?……23ー23。拮抗している。
白鳥が誇るスーパーゲス・ブロッカーの天童さんがストレートを決めたところだった。
牛島さんサーブ、なんて事だ。烏野高校あと2点で終わるかもしれないの??
「俺だっ」
澤村さんが、牛島さんのサーブをあげ、旭さん→田中さんと返した。
「──チャンスボール!」
五色さんが白布さんへ上げたあとは……!
天童さん?いやっツーアタックだ。月島君が体を捻ってリードブロックで触れたが、誰もブロックフォローが間に合ってなかった。
烏野高校23ー白鳥沢24、白鳥沢学園第2セットのセットポイントだった。
白鳥沢の大声援が会場に響いた。
「…………」
いや、行けるはずだ。
いつもこんな場面いっぱいあったじゃないか。その時みんなはいつも私を驚かせてくれたんだ。
続く牛島さんサーブは、澤村さん→月島君のオープン→田中さん3枚ブロック……
「い、いけえええ!!田中さん!!」
ドバチィとボールはブロックの手を掠って、ブロックアウトに成功した。
「っしゃああ!!」
「おおおお!!」
「うるるァアアアア!!!!」
24ー24。何とかデュースに持ち込み、この場はしのいだ。
次は西谷さんが戻り、翔陽が前に出た。
烏野攻撃のチャンス……なのだろうか。翔陽と月島君が何かを話している様子だ。
青葉城再戦いの時みたいに聞こえるかな、耳を澄ましてみた。
「…僕のサーブが綺麗にレシーブされた場合、今なら速攻で来る可能性が高い」
「牛島さんじゃなくて?」
「うん、だから、5番に全力で跳んでみて」
「……わかった!」
笛の音と共に、月島君のサーブが山形さんにあげられ、白布さんに返る。
…!天童さんへの速攻だ。どうして当たったんだろ!?
「ワンタッチィイイ!!!」
コミットブロックしていた翔陽は、大声を張る。
月島が高くあげて、セッター返球。田中さんと翔陽が声を張り上げボールを呼んだが……ここで飛雄がツーアタック返しした。
「飛雄ないす!!」
烏野のみんなの声援に一緒になって声を上げる。
ナイスなブロック指示に翔陽がハイタッチ求めてたが、全力で月島君は避けていた。
あいつDEF型かと思ったけどAGIスイッチ型だったのか。
しかし、大平さんの圧倒的パワーのクロスが刺さり、飛雄ブロックを弾き飛ばした。
獲ったと思ったら獲られる。本当、バレーってシーソーゲームだ。
大平さんサーブで上がったボールは旭さんが上げて飛雄が五色君と押し合い、落とすのに成功した……と思ったら天童さんが足で上げ、大平さんからボールが返ってきた。
やっとこちらチャンスになったところで、翔陽が囮で飛び天童さんを釣ったところ、田中さんの攻撃。烏野の得点!
鷲匠監督がタイムアウトを取った。
「──よしっよしっいい感じ」
私は、ベンチに走って谷地さんと山口君のお手伝いをした。
選手たちにタオルとドリンクを配る。
「お帰り」「ただいま」
「清水は?」
「寝たことを確認し、最高速で飛んで戻ってきました」
「……飛んで??」「ひ、比喩表現です」
バッと、澤村さんから目を逸らした先には山口君の(マジか)という表情があった。
私の速さはバイク≦タクシー<生身の順でゴンス。
烏養コーチの激励は選手たちのやり方が決して間違いじゃないからそのまま行こうという方針だった。清水先輩が無事に家に送り届けられことを伝え、谷地さんも見事にスコアとマネージャー業が滞りなく送れていることを確認。スゴイと褒めるとアワアワ照れる谷地さん。天使かな?
笛の音が鳴り、タイムアウト明け。
「……あ゛、登り損ねた……」
こんないい所一瞬たりとも見逃すわけにはいかない。
今回は下のまま応援するとしよう。
飛雄サーブは惜しくもネットにかかってサーブミス。
「しんどくても焦っても、楽すんじゃねーぞ」
「…分かってます」
苦しい時こそ、すぐに何とかしようとしてしまう。
でも全てのプレーが“繋がる”バレーでは、長いラリーの応酬に耐え切った方が勝利する。
焦っちゃダメだ、集中力は切らしてはいけない。
ここで白鳥沢は天童さん↔︎瀬見さんチェンジ。
ピンチサーバー投入か。
強気のジャンプサーブは旭さんがレセプションし、田中さんレシーブ→澤村さん2ndテンポアタック。2枚ブロックで防がれ、白布さん→五色さんの攻撃。決まってしまう。
今のは翔陽サンが悪いなあ??
瀬見さんサーブ2本目。
澤村さんが上げて、飛雄が後ろにいる時なのに、そのままの姿勢で翔陽に速攻を上げた。
得点。意識しているかはしらないけど、こういう風にスパイカーのメンタルを言葉なしでフォローできるのはスゴイよほんと。
瀬見さんのサーブターンを切って天童さんが戻る。
田中さんから五色さんに行って、レシーブ西谷さん。飛雄からの旭さん攻撃。
大平さんが上げて、牛島さんのバックアタック。
ハイパワーの腕から繰り出される、刺さるようなアタック……左は苦手と言ってたけど、西谷さんは上げることに成功した。ノヤさんすごい……。私だったらそれ絶対災害(自動防御対象)扱いだよ……。
田中さんレシーブし、旭さんが攻撃するがネット際で防がれてしまった。
皆の体制が揃ってなかったので、ブロックフォローも合わなかった。
烏野27ー白鳥沢28
翔陽が後ろに下がってサーブ権。
このローテは月島君・旭さん・澤村さんが前に来る。
攻撃力こそ谷にはなるが、高めの3人が出てくるので防御力は上がるローテです。
サーブは山形さんにあげられ、白布さんから牛島さん。
「ワンタッチ!!」
攻撃は、月島君のリードブロックで上空に弾かれ、運動神経の塊さんの翔陽が全速力で追いかける。条善寺戦のときのような空中全力レシーブは烏野チャンスを引き戻した。
「繋げぇ!!!」
田中さんも一緒に走ってたので、コート側に返した。
「ラスト影山!」
「打て打て!!」
3回触ったので、もうセットはできない。
飛雄は助走もあまり取れない体制だったが、腕力でアタックした。
ネットに掛かったが、相手コート側にボールが落ちる。
「落ちついて!ゆっくりだぞ!!」
烏養コーチは声を張る。白鳥沢2年MBの川西さんが上げて、また烏野側に。
旭さんが上げ───ようやく烏野攻撃チャンス!
「いっけええええ!!!翔陽!!!」
青葉城西戦では驚かし損ねたけど!ここぞというときの翔陽びっくりバックアタック!!
──見事、烏野ブレイクに成功!!っシャアさすが私の翔陽じゃあ!
そんな翔陽さんのサーブは、なんか微妙だった。
五色さんは取ったが、多分アレアウトだった気がする。結果オーライだけど……。
翔陽さんってサーブ練習とかしてないんじゃないっスか。大丈夫っスか。
五色さん→山形さん→牛島さん。
床に叩きつけるような攻撃は、田中さんと飛雄の間を凄い音を立てて落ちた。
「後手に回るな!」
「攻めるぞ!!」
「ハイ!!」「オオ!!!」
五色さんジャンプサーブは、澤村さんが辛くも上げることに成功した。
飛雄→旭さんからのストレートは防がれ、ブロックフォローに田中さんがまわり……。
見ていてしんどいなこれ。
同時多発位置差攻撃で、澤村さん選択。
「……よしっ」
烏野30ー白鳥沢29
半歩リードを保った。
澤村さんサーブで始まり、白鳥沢のアタックライン下くらいに落ちたボールは、大平さんが上げて白布さんからの牛島さん。
いいぞ、牛島さんに集まってきている。つまり焦りつつあるのは向こう!
旭さん・月島君・飛雄の3枚ブロックでクロスを締めて、西谷さんに道を開けた。
牛島さんアタックを西谷さんは見事にあげて、田中さん→澤村さんで相手コートに返す。
この回はなかなか攻撃のチャンスが来ない。
……凌げるか?またデュースか??
「…チャンスボール!」
山形さんがあげて、白布さんへ。
これは牛島さんだ。おそらく、いや絶対。……白布さんは、烏野をにらみイライラした顔でボールを上げた。
───待ってたよ。
ビリビリィイイとした冷徹な声が聞こえた。
思わず背筋が震えた。
「…ぇ?なんだこれ??」
牛島さんのスパイクは、旭さんと、月島君のブロックの隙間を捉えたが、
それを読んでいた月島君が素早く隙間を締めてどシャットを決めた。
歓声が聞こえる。
あの牛島さんを止めた、月島君に驚く声も。
喧騒は耳に届いていたが、私は烏野高校の変化に驚きを隠せなかった。
「っしゃあああ!」
「ぅおあアアアアアア!!!」
「月島アアアアア!!…お前!まじ月島ァ!マジでもう、マジかよ〜〜〜」
「イダダ!!」
「ウオオオオ!!」「待て俺たちが行ったら月島が折れる!!」
第2セット、烏野31ー白鳥沢29、烏野高校取り返す。
それもびっくりだけど。
「え……、な、なに今の。……さ、サトリ???」
聞こえるはずのない心が聞こえ、さすがに私も狼狽した。
「んっ?俺呼ばれた?」
「いや呼んでない。………ん、ドンマイ若利」
「スマン」
「オッケー次 次ー!」
「月島ァ!!……“100点の1点”だな!!!」
夏の合宿で、エビフライが晩御飯だったあの日、翔陽と木兎さんが食べながら教えてくれた出来事。たかが1点、されどチームを救った1点。
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