28.対策と対抗
お名前変換
設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(清水視点)
昔の夢を見ている。
1年の……高校入学の日。
自分は初めて会う男の子には割と良い印象を持って貰える。一方で、女の子からは、ちょっと疎まれる。
何もしてないのに、好かれ。何もしていないのに、嫌われる。どっちもとっても怖い……。
中学の陸上部に打ち込んでいる時は、あまり気にせずにいられたけれど、新しい集団に放り込まれるとよくこんなことが起きる。
「清水さんチョー可愛い」
「大人しいし、目の保養になりますわあ」
「わかるー」
「……でも、おとなしいっていうより暗いよね」
「「あー」」
ふと聞こえてしまった言葉。
あまり……そんな人たちとは付き合う気がしなくなった。4月の初めに一瞬だけクラスの子にストーカーにもあった。先生に訴えても、きっとなんか勘違いさせるようなことをしたのだろうと理解を示してくれない。
結局、部活動に行くようになって自然と居なくなってホッとしたけど、一人って弱いんだなって思った。
……一人にならないようにしないと。
そういえば澤村の誘いは、ふとした思いつきだった。
陸上を高校で続けてもよかったけど、陰口を言った子が陸上部行くって言ってちょっとヤだったし。
知らないスポーツ知るのも良いかな、澤村くん良い人そうだし。
そして私は男子バレー部のマネージャーになった。
頑張ったら頑張った分、何かが変わっていくような気がした。
「清水さんのこと…好きです」
「ごめん……部活、インターハイ前で忙しいから…付き合えない」
「……分かりました。スンマセンお時間取らせました」
「いえ」
もっとマネージャー頑張ろう──大義名分も得た。
告白断ったからにはいっぱい頑張らないと、いっぱい。
2年生の春。
……新1年生が入ってきた。私は先輩になった。
変な子たち。私男の子の部に入ったこと無かったから、とっても不思議。
でもそんなに悪くない。それになんかみんな、ふつうだ。
2年の初夏。
また……試合に負けた。いつもながら自分のことのように苦しかった。私のサポートがうまくいってないからかも知れない。もっともっと頑張らないと。
放課後……教室に忘れ物を取りに戻ろうとした時、私の名前が挙がったのでつい足を止める。
「やっぱ男子バレー部の誰かと付き合ってるんかな」
「そりゃそうでしょー清水さんってスタイル良いし……可愛いじゃん」
「「あー」」
耳を塞いで、部活に行く。
本人がいないところで褒められているというのは決して悪い話では無いはずなのだけど、自分を値踏みされている感覚がどうしても慣れなかった。
春の高校バレー、秋の宮城予選。
東峰と一年の西谷の二人が、伊達工のブロックで防がれて、飛ぶのを辞めて座り込んでしまった。
嫌だな。この部はこれで自然崩壊とかしてしまうのかな。
3年生の春。
私はあっという間に最後の年を迎えた。
日向、影山、山口に月島に…美雪ちゃん、いっぱい増えた。
「「おはようございまーす!!!」」
「清水先輩!!……これっ備品どうやったら良いですか??」「これは、」
私は部長とか副部長とか柄じゃ無かったから指導する立場って新鮮。
「え??清水先輩駅前クレープ、食べたことないんですか!?スケジュール合わせて一緒に食べにいきましょう!」
彼女に誘ってくれるのもとっても新鮮で。
「おいしい……」「ですよね!!」
──4月、GWの直前くらい。
「ごめんなさい……明日だけは塾の模擬試験で……!どうしても無理になりましたッ。代わりにこの翔陽を使ってください……」
「エッ!?そこで友人差し出すの!?……アッいや先輩のためには精一杯支援させて頂きマース!!」
「うっかり備品壊さないように監視を頼みます」
「ウイッス!!」
「ふふっ……日向、頼んだよ」
「は、ははは……はいっ!!」
「明日の分、本日美雪めはキリキリ働かせていただきまあす」
「よろしく」
なんだか自分がまともに女の子と話せるんだって思って、感動して。部がもっと大好きになった。
───5月の、音駒戦の次の日。
「……スミマセン、私もうここには来ないです」
「!!!」
「……ごめんなさい。さよなら」
その分絶望も大きくて。ひとりの女の子になったら途端に心細くなって。
何でって聞きたかった。嫌だ、行かないでって。
……私はこんなにこの子に助けてもらったのに、何もできないんだ。ダメだ、だめなんだ。こんなんじゃダメ!!
あの子のたちのおかげで、頑張ろうって思った。
ちゃんと支えてあげないといけない。もっと、もっと頑張らないと!!
……私は認識が甘かった。
いつも、自分のできる限りの力で進んでいるだけだった。
ちょっとくらい無理しなきゃ、何も変えられない。
私は紙とペンを用意して、目の前の課題に取り組んだ。
「ねえ、バレー部のマネージャー募集していて。……よかったらやってみないかな?」
「ヘアッ!?え…あのっえと……はい?」
「ごめんね突然。チラシ、読んでくれるだけでいいから。興味があったら第二体育館でいつもやってるから見学来てください」
「えっと……はい、考えてみます……」
一歩踏み出せたから。あとはもう進むだけ。
大好きな後輩さん、あなたのおかげで私は飛べました。