27. あなたはライバル
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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「ねえ飛雄」
「あ?」
ある晴れた日曜、二人で練習していた時のことだったかな。
確か私は、ふと試合の彼を思い出して質問したいことがあったのを思い出しだのた。
「ツーアタックさ、どうしてそんな決められるの?」
「?…決まると思った時するもんだろ。日向使う時と一緒だ」
「ううん、質問の仕方間違えた。ちょっとまってね」
「おう」
バレーに関する話をするときは、私は生徒。飛雄は先生。(当たり前だけど)
私がセッターとしての経験も浅い割に、比較的テクニックや戦術が通用しているのは、彼の指導力のおかげであることは間違いない。
「周りには頼りになるアタッカーが5人もいて(Liは含まず)、自分はそのうち誰を選んでもいい。エースも居て……きっと周りも決めてくれるし、私が決めさせる。──もし、それでツーアタックして、そのせいで皆は囮で飛んでくれて、相手コートが普通に取ったらさ。……怖くない??信頼失うんじゃないかとか、最善と選んだものが他の人に評価してもらえないとかさ」
「……それ、“王様”の俺に聞くのは皮肉か??」
飛雄はムッとした顔で睨んできた。おっと、そういえば孤独な王様の話は彼のトラウマか。
意識していたわけではないが、ほんのり地雷を踏み掛けてしまった。喧嘩をしたいわけではないので、慌てて否定する。
「あー、いやっ、そう言うつもりはない。ごめんごめん。君のツーアタックのタイミングが絶妙だからどういうこと意識してやってんのかなって。現役時代はあんまりブロック剥がす事の方が『仕事』って思って……ツーのやりどころが分かんない」
ツーアタックって、私にとっては賭けだ。
やるかやらないかでいつも「やらない」を選び、タイミングを逃してしまい続け、どんどんツーアタの練度は落ちてしまう。飛雄はセッターであり続けることに拘るわりに、ツーアタックの機会は割と常に狙っているので、烏野アタッカー側もつい“騙される”。
コツがあるなら教えて欲しいところだと前から気になっていたのだ。
「んん、……俺はバレー日誌で今日のプレイとか振り返って評価をつける」
「うん。バレーに関する勉強はすごく丁寧だなって思うよ。なぜ勉学で活かせないのかDo your best.」
「それは今いいだろ、12月末くらいになんとかする」
「なんとかするのは月島君と私」
バチバチと小競り合いが起きたが、主題はこちらではなかった。
だが忘れるな、問スターはいつでも君の喉笛を食い破ろうと待ち構えているのだよ。ヌルフフフフ(?)
「話を戻す」
「おう」
「俺のプレイをノートで評価する際、評価する自分がいる。例えば、第一セットの14点決めた時、あの時は日向を選んだのは最善か否か、その結果はどうだったか。次同じタイミングが来た時もおなじ選択するか…とかだな。で作り終わった後、一通り舐めて“果たしてその一次評価は正しいのか?”とまた上位の評価をする自分もいる」
「ずいぶん自己評価に慣れているのね」
「自分はあくまで自分だから、それでも主観が外し切れないけどな。なんとなく今日は調子が良かったから勝てたって思考を止めるより、“なぜ取れたか”“なぜ取られたか”を書き出せば成功を溜めたり、失敗を忘れないと思ってな」
「なるほど」
「俺はツーアタックを選べた時、コンディションも良く釣れそうなタイミングで、ツーアタックが最善なのにチームに点取を任せてしまったら。例えそれで得点を決められたとしても勝負を捨てたことで低評価が下る。それは俺が何より怖い。つまるところどの俺も俺だし……なんつうか、俺が満足しなければセッターしてる意味がない」
「チームやコーチの評価とは別軸に自分からの評価もあるのね」
「偉そうに言いながら、これ甘々基準かもしんねえな。なんかしんねーけど最近の評価はイイ。もっと冷静に試合を見れるようになりてーな」
「そりゃ評価いいでしょうよ。あの翔陽があんたの武器じゃん。使いこなしたかどうかが評価基準なら、わりと常に最高評価よ」
「そーか?……美雪、参考になったらいいけど、どーだ?」
「うん、ありがとう。参考にはなった。だから敵の先輩相手にあんなにポンポンとツーアタックカマせるんだな。日誌で評価ヨシで終われたらなにより気持ちがいいだろうな」
「そりゃそーだ。バレーは上手くなればなるほど楽しいし、気持ちいい」
「はは、そうだね。君が言うんだから間違いないよ」
さすがシャツにセッター魂と書かれているのは伊達ではない。
飛雄はやはり、明らかに異質なプレイヤーだ…ということをさらに理解してしまった。
そんな初秋の昼下がり。