26. vs 家族
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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その後の話だが天満氏にはNo thank you,(真顔)を食らったのでそれは実現しなかった。公園では明光が練習しているところを眺めたり、応援席で一緒になった時は教えてもらったりとそれなりの親交があったわけでございました。
そう言えばその頃に明光からバボちゃんの携帯ストラップを貰ったんだっけ。
あの後天満からも好きならばどうぞとお仲間が貰えたが、なんだかんだで明光から貰ったやつを使い続けている。塗装が剥がれたらベンゼンで剥がしてサフスプレー噴いてリペイントしながらも結構大切にしている。一応、天満のヤツは時を超えて翔陽の物になったので無駄にはなっていない。
……あれ?私ってかなり女々しいのでは??
というか普段冷めた目で家族不在の自分を認識している癖に、家族というもの自体にコンプレックスが合ったのかもと気付いてしまった。うわあ。
まさか試合相手の家族でそんな思考トリップをする羽目になるとは思わなかった。
いや〜やっぱりマジうちの親って娘に一切興味なかったっすね……。
そう考えると、中島家族応援団は大変微笑ましい尊いものに見えるわけである。
「んあ・・・・あれ??あそこに居るの、まさか───」
「うお、また拾った!!」「どっちもよく繋ぐなあ…!」
一瞬とある男の人の雰囲気に気が取られたが、観覧席の声で我に帰った。
あ、あのラリーさっきからずっと続いているの?マジで??
「ギャアッまた拾ったの!?」「見ている方もしんどい」
「今日一番長いラリーだな…!獲った方に流れが来るぞ…!」
嶋田さんたちも冷や汗をかきながら試合の動向をみまもっている。
「切らすな、切らすな!!ココ絶対獲るぞ!!」
「オオッ」
澤村さんと田中さんもチームを激励する。
和久谷南の攻撃に三枚ブロックつけたが、さすがの中島さんはまたブロックアウトを狙い定めていた。
フライングしつつディグで上げたところ、なんとか繋ぐことに成功した。
「上がってる!!」
「ラスト返せーっ」
鈍い音とともにボールは高く上がり、ついに和久南側にボールが落ち長いラリーが終結した。
「主将ッ!!!!」
さっきの音、肩甲骨と頭蓋か!?
私は牛乳を持って、───二階席から飛び降りた。
「いよーし!!……ってあれ?美雪ちゃんは??」
「えっ?えっっ???アレさっきまで居た…!!エッ、下にいる!!」
歓声と中央に注目が行っていたので意外とバレなかったようだ。
谷地さんと嶋田さんから戸惑いの声を背に、臥せっている澤村さんに近寄った。
「大丈夫ですか!!?」
「あの、大地さん…!?……俺……」
「大地!!」「澤村!!」
烏野高校も相手チームからも動揺が伝わってきた。
というか、つい飛び込んでしまったけど──これは一人来たところで何かできるレベルでは無かった。早く医師に見せないと。
頭部衝撃、すぐ腫れが生じているから間違いなく出血している。口蓋か?頭蓋内は?顎は守っている?
澤村さんはしばらく放心していた様子だったが、上半身は起き上がれる……ようだ。とりあえず一安心。
「どこ打った!?」
「か、顔?」
「っ上顎骨・下顎骨骨折は・・・恐らく無い、眼窩底も…目は赤く無い、鼻の変形も大丈夫」ブツブツ
「澤村君、今いる場所は?」
「?仙台市体育館です」
「今の対戦相手は?」「わ、和久南です。俺は大丈夫です!」
武田先生が応急手当ての意識レベル確認をしている間、私は保冷剤にガーゼを巻いてテープで留める。
「……でも頭を打ったようなのでとりあえず医務室へ。宇内さん、保冷剤ありがとうございます。烏養君と手分けして澤村君をよろしくお願いします」
「はい」「おし」
澤村さんは見たことも無いくらい顔が真っ青だった。
ぶつけたせいではない、告げられたことに対して、信じられないような顔をしていた。
武田先生は、それでも続けた。
「……大丈夫である事を確認して来なさい。それが試合へ戻る最短の道です」
惜しむような顔をしていたが、澤村さんも状況を受け入れて、立ち上がった。
「立ち上がっても大丈夫ですか?担架は?」
「大丈夫、歩ける……ん、」
澤村さんは口の中に違和感があったようで、中のものを手に出した。
「歯ッ!?ひいッ!」
「違和感は一本だけですか?……グラつきも無い?わかりました。……じゃあ。誤飲の危険があるのでこれに入れてください」
私は、未開封だった牛乳を超能力で切って器にして、口を向けた。時計を見てポケットのメモに、ブラインド状態で時刻を記入。
「えっ、合ってるのか…?」
「はい合ってます。細胞の保護と乾燥防止ですよ」
「おぉ〜」「さすが医学部志望」
そういえば牛乳に入れるってあんまり一般的じゃ無いですかね。あと山口君は口が軽いなあ!緊急事態だから咎めないけどさぁ!
あ、一番ケアしないといけない人を疎かにしていた。
「田中さん、」
「美雪、俺……いや、大地さんは……あっ」
私はギュッと、田中さんを抱える。
少し強張っていた。背中をさすると、すぐに治ったけれど……やはり責任に感じてしまうよね。ぼんやりしていて能力の適用対象外だったけど、もっとできる事は他にあったのかもしれないと思うと……歯痒い。
だからこそダメ押しにもう一声、この人を立ち直らせるお手伝いがしたいと思った。
「……私が絶対ここに主将連れ戻してきます。任せて下さい。だから、………ここ頼みますよ、次期エース殿」
「!………あ………おぉ」
「よしっ、行ってきます」
まだちょっと本調子とまでは戻せなかった事は後ろ髪引かれるけれど、患部は熱を持っている様子も無かったし軽症。あとはメンタルだが、残念ながら私ができるのはこんな程度の激励くらいしかできない。
「美雪ちゃん、俺は!?へい!」
「ノヤさんは大丈夫!お疲れ様っす」
「厳しい!!!」スパーン
手を広げて待っていた西谷さんには両手でタッチ。
───でも、よかった。田中さんが奇跡的に無傷という事は、烏野にとって何より幸運だったことは間違いない。よし、あとは頼れる先輩がいつも通りなんとかするでしょう!
「行きましょう!!」
「お前ブレなさすぎて……もはや尊敬するわ」
「はは。田中、今更固まってる……フォローありがとな」
交代は、澤村さん⇔縁下さん。
いまだ体感したことのないまたもや危機的状況に対して、緊張・プレッシャーはあれど誰の目も死んでは居なかった。───勝利を渇望していた。
これならきっとまたスグ戻ってこれる。