26. vs 家族
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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***
私は、小学生の頃は夏になると親戚の……天満の家にお世話になっていた。
小学校の時、試合中に起こした能力の暴走(?)からなんとなくバツが悪くなってバレーグッズを仕舞い込んでしまっていた。
超能力自体は軽いものを取るときとか便利に使っているが、一方でもうチームプレイのゲームに参加する気は完全に無くなっていた。
それでも初めて高校バレーの試合に行ったときはなかなかに楽しめたと思う。小学校のお遊びバレーはルール無用で、ポジションとかもあってないようなものだったし「ちゃんとした」バレーボールはなかなかに見応えがあった。実の所、初心者を装った時の明光という解説員もなかなか分かりやすかった。
しかしながら、自分がかなーり小さなところで萎びれている事も同時に意識して、対比に落ち込んでいたりもした時期だった。
あぁ、ちなみになぜ天満の家に世話になっていたか背景。例の通り、一家の大黒柱(しかも太い顧客)は大層忙しく飛び回っており家にほぼ居ない。
一方母親は……語弊を恐れず端的に言うと、私を疎んでいたと考える。
出産を期に休職して専業主婦で一緒に過ごしていたが、元々仕事大好き夜勤大好きのワーカーホリック。
恐らく育児で働けなくなった環境がきっとストレスになっていた。
なぜなら子供クラブに通っていたときは非常にウキウキしながらパート先の病院の衣装をアイロンがけしていたように記憶していたから。
それで私がバレーから離れたら、また仕事を減らす事になるのでちょっと残念そうにしていた故、恐らくこの状況はあまり母親的には歓迎しづらいという予想ができるのであった。
あ!もちろんフォローすると育児放棄なんて事はされていませんよ。子供と家に缶詰めより働く方が合ってるタイプってそんなに珍しくないと思うから。
……なんの話だっけ。そうそう、そんな働きたい母親と家の方針とは逆方向を向いてしまった私を見て……天満のお母さん、つまり父親の兄弟のお嫁さんが私を預かろうかと気を遣ってくれたのだ。母も私も、ありがたき申し出に甘えさせて頂いて現在に至るというわけでございます。
無邪気な子供心的には天満の家は漫画ゲームだらけで遊び道具に困らない素敵施設だったのだ。
しかし、天満の家にはある一点だけ欠点があった。
***
「───バレーグッズばっかり………」
シューズやボールや後輩の寄せ書きと写真、何をどう眼を逸らしても目に入る部屋だった。
部屋の主、天満はやっぱりゴロゴロしながらゲームをしていた。
「なー」
「んー?」
「月島さんは優しいから許してくれたから良いけど。……どうして月島さんにあんな事言ったんだ?」
「?」
「ホラ、バレー興味あるからルール教えてって初心者ムーブかました所。初心者っていうのは確かにあながち間違っちゃいねーけど?何で月島さんにルール聞いてんの俺が教えるし!!ってなったんだからな」
「あーあの時ね。うん……ごめんちょっと会話のネタに困って。天兄ちゃんの言う通りだけど大人ルールのバレーはほとんど知らなかったし……お陰で試合が理解できるようになったのはホントだよ?」
「はー?話題探し〜?ちっこい癖に妙に気を使う奴だなーおまえ。オジさん似か??月島さんはもうマジでいい人だから次からは妙なことやめなよ。会話こまんねえよ、フツーで良いよ」
「うい、次会った時は謝ります」
「おー」
うーん、ゴロゴロするのも飽きてきたな。
この漫画も3周目だしもう見慣れてしまった。
よし、お菓子買いに行こう、そう思い立った。
「んんー。外にでよっかな!」
「そうなの?行ってらっしゃい。今日も暑いから帽子ちゃんとかぶれよ」
「はあい行ってきまーす」
天満と叔母さんに声をかけて、外出。
気分転換に散歩は大事。帽子を被り自転車に跨って、発進!目的は小学校の横の駄菓子屋さん。
石塀を右折すると、見覚えのある人というか、話題にでたばかりの人に出会った。
「あれ!……宇内の妹さん!!」
「あっ………あきてるさん!!いや私天兄ちゃんの妹ではナイですよ」
「あれ?そうだったかな。……ああ、親戚の子だったか」
「そーです。顔、覚えておいてくれてありがとうございます?」
「そりゃーそうでしょ?……ってかあれ?前より丁寧口調だね」
「あの後天兄ちゃんから告げ口されて、年上には敬語を使いなさいって怒られた……のです。どこに関係者が潜んでいるか分からないので、これからはナメずに行きます。あの時はスミマセンでした」
「あれナメられてたの俺!?!?」
逆に自分は年下にナメられないタイプだと思っていらしたのか小一時間議論したい次第。
それはさておき、私は前回のアレの後、天満から「月島さんはお世話になってるからちゃんと挨拶しないとダメです」と都度都度言われておるのでござんした。
ついでにこの時サラッと謝れたのでこの問題はこれで解決である。
「では、私は駄菓子屋に急務がありますのでこれにて失礼。……ボンタンアメが売り切れちゃう」
「……それは売り切れないと思うな!!不人気すぎて!!」
「えー失礼な。何故か烏野商店街人気商品で割と夕方買い占められているんですよ」
「知らないの?それ2丁目のタカ子さん家でしょ!!!家に大量にあるのに毎日買ってくるから、嫁さんが近くを通りがかった少年少女に無償で渡してくるヤツだからね??逆に玄関で目を合わせたらボンタンアメの呪いに掛かる家になっちゃってるからね!!」
「え……そんな悲しい事件が……あのボンタンアメ欠品案件の真相だったんですか……」
「おかげで近隣住民みんなボンタンアメが苦手だよ……」
「行き先変更。あきてるさん、タカ子さん家に案内して下さい。こんな日中フラついているなら暇ですよネ」
「いいけど……前も思ったけど、なかなかツワモノだよね……君また怒られるよ」
「私はあきてるさんが好きだからそれでいいです」
「ええー……妙な子に懐かれたなぁ」
***
ボンタンアメ、箱で死ぬほど貰えた。
お嫁さんからは柑橘系のオーデコロンの匂いがするなあと思ったけど、これボンタンアメの匂いだったわ。住所教えてと言われたけど固辞した。配送はさすがに勘弁。
明光情報は本当だった。
結果、2人で戦利品を食べながら公園でちょっと駄弁ることにした。
「一緒に観覧席居たのが宇内の親だったから、つい兄妹って印象があるんだよなー」
「おー、確かにそうかも」
状況証拠なら仕方ない。確かに顔は似てるし、苗字が同じならば然もありなん。
「じゃー面倒臭いから次からは、間違わられたらそのまま兄弟で通そうかなぁ」
「さすがにご両親が軽視されすぎでは……」
「親は多忙なので、あきてるとは会うことはたぶんナイとおもう〜」
「ふうん、親戚が多いとそういう事もあるんだな」
ちなみに家から距離ができたら敬語は取れた。残念ながらこれがワタシ品質。
「バレーさ、前より興味でた?」
「……!あ〜……」
私は、色々考えた結果……そのまま通すことにした。
バレーをやめたキッカケ、天満にもみんなにも本当のことは話せなかったのだから。しかたない。
「……そうだね、大人のバレーは違って面白いなって思った。もしまた会場で会ったら教えてほしいかも」
「ほんと!?じゃあさ、会場とかじゃなくて来週の日曜とかどう?宇内の家で強豪校のDVD一緒に観ようよ。宇内の指導がてら分かんないところとか教えるし!」
「ああ、それはふつうに嬉しいです。……ヤツが嬉しがるかはちょっとわからないんで、相談しますね」
「なんなら宇内には勉強教えに行くでもいいけど」
「う、うーん……家で勉強してるところ見たことないかも……」