25. それぞれの夜
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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②日向家
「なーつー??おれのボールそろそろ返してー!」
「やー。ボールと仲良しになるれんしゅーするのー」
日向はこの前、妹の夏に教えた練習方法、立ったり寝転がったりしながらボールをトスし続ける練習を一生懸命に取り組んでいるのを止めなくてはならなかった。
──なぜなら、おれの練習の時間だし、夏は風呂にはいる時間だからだ。
「明日も試合なの!お願いだから返してください!!あとお風呂後ろ支えているから入って」
「うえー??おとーさんは待ってくれるから大丈夫だよ」
「ダメ。追い焚きすると電気代が余計に掛かっちゃうの!」
「むー。はあい・・・どーぞ」
地味にコスト意識がしっかりしている兄妹である。
夏がお風呂に向かったので、入れ替わって練習を再開する。
既に筋トレはある程度済ませていあるので、ボールを使ってトス練。
サーブとトスは一人で練習できる割にいつまで経ってもなかなか改善できないウィークポイントだ。せめて皆の助けになるようはやく…正確に。
今日の試合では、反省点はあったか?
……影山が下がってからの、チェンジ。悔しい。
夏の合宿の時も影山不在の時は、ほとんど自分はお荷物だった。
美雪との練習のとき……その時どんな会話をしたっけ??
『影山に打たせてもらっているんじゃダメだ』
違うその後…えっと、研磨がいる時だっけ?
***
「おれなら、烏養コーチのやり方には反対をすると思う」
「研磨だったら?」
グラウンドのこかげ、溶けかけた研磨と日陰で涼んだ時の出来事だった。
確か、あの時の話の続きをしていたっけ。
「囮としての使い方以外にもさ、体のバネとか、……性格とか、そもそもブロックがくる場所を先読みできるところとか、色々特出している」
「フムフム」
「常に勝負の前線で接敵している分、犬岡やリエーフより学習の機会は多いし、成田くんを出したい気持ちは分かるけど、翔陽を別の軸で育てたほうが今後のために絶対良い」
「そうだね、研磨の言うことは確かにわかる」
「美雪」「はい、自販機でお水買ってきたよ」
「飛雄とセット運用ありきで、チームのバランスを考えて下げることも効果を得る一方、所詮その場しのぎにしかならない。今の三年が卒業した後もさ、成田くんと翔陽が同じコートで戦うことになる事も忘れちゃいけない」
「・・・そうか、大地さんたち、いなくなったら」
「美雪がセッターになれば良い」
「ヲイ、今から男になれってか??」
研磨のむちゃくちゃ面白い案は当人に却下されていた。
ママさんバレーに慣れてるおれとしては大歓迎なんだがいかがですか。
「……やっぱりレシーブだよね、翔陽の強化ポイント。今コーチは戦略が攻撃に寄ってるけど、リベロは抜きにしても、防御要員がWS澤村さんっていうのは音駒的にありえない。なんなの」
「キレんなよ、どうどう」
「んー。苦手なんだよなー」
「こんなの覚えゲーだよ。例えば…」
しゅるん、美雪に向かって山なりに高くボールを上げる。
ボールを見上げると、太陽の光で目が眩んで目を細めた。
「・・・っと、」
美雪は後ろに下がって、レシーブ、研磨のところに返す。
「…」
トン、トンと二人は一歩も動かないまま最初の位置でレシーブし続けた。
「なにこれ・・・?」
「動きたくない人たちのレシーブ練ってこうなりがち」
「……同じ角度、強さ、たかさを保つようにレシーブしたら当然軌道は一緒。ちなみにこちら全く練習になりません」
「……何なのコレ……研磨の言う覚えゲーっていうのは、体の使い方・インプットを忘れない事って意味??」
「美雪のはちょっと違う。せっかく目がいいし、体力がもあるんだから、長い時間使い込んだほうがこんな風に技巧重視の育成もできそうだろうなって思った」
「ほーほー??」
「現環境では全国のトップスパイカー揃ってるし、むしろちゃんとブロックレシーブでも面白くなってよ、翔陽」
「そこを頑張ってよって言わないあたりが君らしい」
「おれの嫌いな言葉ランキングの話する?」「大丈夫間に合ってる」
「じゃあ、影山戻ったらあの殺人サーブのレセプションでも練習してみるかぁー」
「君は極端だな」
「ふふ」
***
「どうして思い出すの、お家帰ってからなの!」
日向はムキーと憤った。
明日公開練習の時やるか……?絶対ボッコボコにされる気がする……。
「……っくしゅん」
「あー!お兄ちゃん、髪が濡れっぱなしだー。一緒に乾かしに行こ〜」
「夏、おかえり」
「ただいま、乾かさないと風邪ひくよ。明日試合なんでしょ〜?」
「そうだね、そうする〜」
ホカホカの妹が帰ってきた。
指摘を受けて髪の毛を触ると確かに半乾き状態だった。
残念ながら今日は壁トス打ちだけでおわってしまった。
まずは妹の髪の毛を乾かす。
「お兄ちゃんー」
「んー」
「美雪ちゃん、この前スーパーで会ったよ」
「そーなの?話とかした?」
「うんー。お菓子奢ってもらっちゃった⭐︎」
「日向家はお恵みばかりだな」
しみじみとする。
「どんな話?おれのとか?」
「えっとねーコイバナした!!」
「夏に!?!?」
「シツレーなー。ガッコーでも恋愛マスターとして崇められてるよー?」
「ええー……」
妹も妹だけど、周りも……女子って進んでいると聞くけどそう言うレベルなの??10年くらいおれより先を生きてない?何となく日向は負けた気分になった。
「んでねー。失恋してショーシン中だからー、面白いオススメアニメ無い?って聞かれたの」
「変な美雪。それで、なんて答えたのー?」
「はみっこぐらし。絶対見るねって言ってた」
「高校生にはちょっと厳しい作品のような……んん?失恋ってホント?」
「えー、詳しい話とかお兄ちゃんに言うのはビミョーだなー。んー女同士の秘密ってコトで」
「ぐぬぬ」
「……お兄ちゃんこそ美雪ちゃんのこと好きなの?」
「えっっ」
思わぬ所から話が飛び、ドライヤーで髪の毛を梳かしていた手が止まってしまった。
マジで妹ってそーゆー悩みって気づくもんなの!?
「……実は絶賛悩み中なのです。好きなのかもしれないが、世話になったアレがコレなのか、もしくは友達としての心配性が空回りしているのか。おれには難しすぎて分かりません」
「うーん、おもったよりシンコクだった。問題外」
夏はあっけらかんと言い放った。
「夏先生!!早速見限らないでください!!」
「本人の中で消化してないコイバナとか一番面倒くさいのー!!ちょっと携帯貸して!」
「え、何するの……?」
「美雪ちゃんに電話掛けるの!」
「えっ待ってそれは……ってもう掛けてるし!!!」
鮮やかな手口で携帯のロックが外されて、電話帳から美雪のアドレスを見つけ、通話の画面になっていた。
《はい、……翔陽?どうしたの??》
なんか喧騒がするけど、友人との電話が突然つながってしまった。