24. 本戦出場
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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月島君のどシャットで、烏野20点に乗った。
あと、すこし。
そんなところである変化が起こった。
——翔陽がマークされていない。
これはある程度烏野チームに対し超効果的な戦法として挙げられる。ようは囮が機能しなくなるのだ。
「前に青葉城西にもこういう対応されたんだよな…」
「合宿でも時折こんな対応されてました」
「だよなあ…仕方ないが、日向のスパイクはまだ“軽い”からな……」
「あの、なんか日向がめっちゃイライラしてるんですが……」
「オッ……失敬」
慌てて滝ノ上さんが口をチャックしたが、ちょっと遅かった。
メラァ…とした翔陽はフンスと一息。
(おい影山!次もっかいおれにくれ!)
(?)
飛雄にどうやらパス要求をしていた。
「ふふ、心情が丸見え……」
「もう!烏野のピンチなのに!!」
いや多分研磨なら一緒に笑ってくれるよ。
コレは危機じゃない、少なくとも——今は。
「マジかよ…」
「!……ナイスキィー!!」
「青城戦の時とは違うってワケだな」
……大丈夫。コレはすでに乗り越えた。
次はなにを喰らおうか、そんな烏野だから心配は無用だった。
「日向の新しい速攻が効いてるね」
「そうだな。お陰で無視しづらくなってきた」
「……!お、今度は無理やり至近距離で上げるようになったか!」
「とりやすい位置じゃないのに、飛んで上げた!!」
「うー。くそぅ……翔陽スパイクが旭さんパワーが合わされば弾き飛ばしてやるのに……」
「いや……それはちょっと」
「来年にはそうなります」
「コエーよ!!バケモンか!」
脳内でニョンと伸びた翔陽さんが、ボンとビルドアップした。勝手にちょっと気分が盛り下がった。
気もそぞろでぼうっと次年度翔陽に想いを馳せていると烏野メンバーから歓声が。
ついで観覧者からの声に顔を上げると、烏野マッチになってた。
わあ見逃した。
「フェイント!!!」
「日向もテクニック磨かれたなぁ」
「えっ翔陽!?……み、見てなかったーーー!!」ゲーン
ショックで叫ぶと、思ったより大きな声が響いてしまった。こっち指差ししてオレンジの人がプンスコしていた。すまぬ。
「お」
「おお」
「条善寺捨身か!?」
第一セットの再来、いや違う。……度胸、座ってんな。
澤村主将のブロックを抜けて、翔陽と田中さんの間。
「——ア、ウト…!」
「田中・日向ナイスジャッジ」
セットカウント 2-0 烏野の勝利だった。
「っしゃああああ!!」
「……終わりかよくそ。せっかくテンションアガってんのに」
「……」
声が大きい訳ではないのに、こちらには痛いほど聞こえてきた。
「「ありがとうございましたー!!」」
烏野にも危ういところはあったが、こちら側の方がうまく噛み合っていて。
チームとしてのレベルが上がったと実感した試合だった。
********
滝ノ上さんと別れて、谷地さんと二人で烏野チームの労をねぎらう。
谷地さんが声をかけると、田中さんと西谷さんがハイタッチを構えた。
慌てながら受け止める谷地さんは可愛いなとフワフワした気持ちで見る。
「お疲れ様で…す!うわっと、わあ」
「おーえん、ありがとー!!」
次は菅原さんが谷地さんにハイタッチ。
……じりじり
「うっ」
チラッと…とこっちを見るノヤリュウコンビ。
……ちょっとま、まって。それは!!
彼らは手じゃなく尻を向けながら近づいてきた!!
ジョーズのテーマまたはダースベイダー参上の曲が脳内に流れた。
「ぎゃあああーー!!!?なんで私にはおしりー!?」
「ふっはっはっはっは」
「後輩よこれが先輩の恐ろしさだ……」
「美雪……ハイタッチならぬロータッチだぁ……いだッ!!」
「オイ!烏野の品位が疑われる!やめなさい!!」
「澤村さんー!!」
主将が止めてくれなかったらこいつらは本日2回目の空中磔だったからなっ。
「あっ日向達もおつかれ——!?」
「……ウヒッ!!?」
翔陽の声が聞こえたので振り返ると、伊達工業の青根さんが翔陽に声を、いや…存在をかけてきていた。
「……明日、お前を止める」
「「!!!!」」
翔陽はびっくりしたように目を見開いたが、やがてライバルのエールだと判断して真正面で受けた。
「…絶対躱します!!」
青根さんは翔陽の返事に何も返さなかったが、少し微笑んでいるように見えた。
くるりと回れ右し、そのまま去っていった。
うーん、不謹慎だが、この人無口なので話す姿を初めてみた。
前に他校データ収集で伺った時も、地域猫に引っかかれても叫び声も上げない人だったのに。
まあ泣きそうな顔はしていたが……。
「うおっ、うおアアアアア」
「うるせえ」
「日向に今の言うために待ってたのかな。日向何者…」
青根さんが見えなくなると、遅れて今あった出来事に改めて衝撃を受けている様子だった。
声をかけるタイミングがズレてしまった。
気を取り直して、翔陽と飛雄と山口君に声をかけようと手をあげたら、今度は笛の音が鳴り……皆がそちらの方を注視した。
Bコート、つまり明日の烏野の試合相手となるチームの決定戦……それの試合終了の合図だった。
なるほど……和久谷南が次の相手だった。
くそー。扇商の潜入データが無駄になったかー。ついでにやんややんやの応援の声も聞こえてきた。家族総出で応援しているアットホームな職場です。なんちゃって。
「インハイ予選前にも烏養さんが要注意って言ってたトコか」
「そうだね。おそらくプレイスタイルは青葉城西や音駒みたいな相手を観察して弱点を探ってくるタイプだから……っと」
飛雄にじっと見られたので口をつぐんだ。
「…んだよ。言い切れよ。……ようは日向みてえな飛び道具に驚かされねータイプっつーことだろ。ウチが苦手な」
「そう、烏野がちょーっとだけ苦手な…」
『いいぞいいぞ猛!!ナイスキー猛!!』
『オオーッ!!!』
「……そもそも、家族総出で応援……?ムリ……サガる」
「いや、そのうち明光どころか親戚も来るのでは」
「うわ全力で帰りたくなる……何か?」
「………いやなんでも」
そうは言ってもわりと月島君はブラコン入ってるからなぁ。この前ので身に染みてよく分かったし。月島氏の視線から目を逸らした。
「よしっ……伊達工と戦うにはまず——!和久南に勝つ!!」
翔陽が自分に喝を入れた。
「コイツらホント肝が座ってんな」
「特に影山日向は心配するだけ損だな。いい意味で」
その後、烏野に戻り軽いミーティングをしてこの日は解散した。