21.場外バトル
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設定主人公: 宇内さん
性別:女
クラス:県立烏野高等学校 1年1組
好物:鶏肉の炭火焼き
最近の悩み事:宮城王国ではカード決済がだいたい使えないこと。さらに登校前と下校後、土日いずれも銀行が空いてないこと。
「小さな巨人」の親戚。運動は苦手。
特技は世話焼き、対年上の振る舞い、念動力の三つ。
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時系列は、梟谷試合直前から武田先生に怪我の報告をしに行った時へ戻る。
ちょっと決意報告&悩み相談も行いました。
「……なるほど。わかりました」
「すみません。自分の不注意ですね」
「……宇内さんは、友人の為に無茶をするタイプですね?」
「えっ、そうでしょうか」
「日向君の試験勉強の時も倒れるまで教えたり、仙台から東京まで連れて来た日も……恐らく徹夜したんでしょう。ずっと眠そうにしてました。
今日の谷地さんを庇った時も……実は宇内さんは守るため全身でセービングしたと聞いてます。
姿勢は尊敬に値しますが……ちょっとやり過ぎの域ではないでしょうか?」
「え、ああ…………その……違うのです。本当、全部不注意で……」
「いえ……すみません、ちょっとイジワルな聞き方でした。そこはあまり重要視してません。
宇内さんの進路希望を踏まえて……お伝えしたい事が2つあります」
「……何でしょう?」
「《人のために動きましょう》……と、きっと誰もが小さい時にそう大人から教えられたと思います。
しかし実際にそれをし続けられる人は限られています。他人を優先すると、ご本人は幸せになり辛くなるからです。その生き方を辞めざるを得ないんです」
「利他主義………自分で仕事増やして過労死コースをあえて進んでしまう危険がありますものね」
「もちろん働き出したら、お仕事の時とプライベートでコンセプトを変える器用な方もおられるので一概には言えません」
「仕事モードってやつですね」
「はい。そしてお伝えしたい事——それは」
「——僕はもちろん宇内さんの進路を応援します。しかし、ご自分を守ることも忘れないで下さい」
「………はいっ」
「次は《できる範囲》でお願いします。これが一つ目です」
私は頷く。
武田先生は窓の方を見て、外の木を眺める。
釣られて私も窓に視線を向ける。
夏の日差しと緑の葉のコントラストが眩しい。
「《橘化して枳となる》という言葉をご存知でしょうか?」
「……いいえ」
そうか、アレはタチバナの木か。
「とても良い言葉なのです。
中国の故事成語の一句です。ある地では橘と呼ばれる木ですが、同じ植物なのに別の地だと枳と呼ばれ、葉の形も変わるとのことです。
つまり人も同様に住む場所や環境が変わるとまるきり別の人間となりうるという事です。
宇内さんは自分の立ち位置を定めました。すなわち明日からは別の人間に生まれ変わると同じです。
きっとこの選択が良きものである事、願っています」
「……はい」
「あ………はは、またポエミーでしょうか??」
「いいえ、とても身に染みるお言葉でしたよ。武田先生、ありがとうございます」
「こちらこそです」
退出、体育館へ戻る。
私は———怪我をした。
私でもこんなの無力感に苛まれるのだ、もし今こうなってるのが翔陽や飛雄だったら…。
きっと歯ぎしりして自分を責めるだろう。
どうしても不注意を責めてしまいがちだ。
……私はみんなを救う人間になりたい。
横で一緒に戦いたい。夢を叶える手伝いがしたい。
武田先生のお墨付きも頂いた。一層励まねばなるまい。
「みんなと一緒に戦うのは、私だ」
グッと拳を握って。決意を新たにする。
角を曲がると人にぶつかりかけた。
「わ」
「ごめ………ん、あれ?脚、どうしたの?」
「あ、木兎さん!?これはその、足をちょっと捻って」
「そーなの?肩貸すよ、それとも杖持ってこよーか」
「…ええと、じゃあ、すみません。肩に手を置かせて貰っても良いですか?」
「いーよー」
「どもです」
体育館に近づいたので、階段の手すりに乗り移った。
「お陰で痛くなかったです」
「うん」
「では、ありがとうございます」
「………」
「何ですか?寝癖でも付いてます?」
じぃっと見られたので前髪を触る。
「別に変じゃないよ。うーんと、うーん……」
「?」
「……やっぱりいいや!後で話そう」
「????」
木兎さんはいつものようにぴょんぴょんと体育館へ飛び込んでいった。
不思議な人だ。