サクラサク
デスバスターズとの戦いが終わった翌週、世間はまだまだ無限学園の崩壊のニュースでもちきりだったけど、あたしたちはそれなりに平穏な暮らしを取り戻していた。
ーーと、思ったんだけど。
最近、亜美ちゃんの元気がない。
真面目なあの子は戦いが終わった後もパソコンに向かい、何やら色々と考えごとをしていた。戦略に誤りは無かったか分析して、次に活かすんだって。
ーー無限迷宮で5人がバラバラに引き離されたとき、あたしたちはそれぞれ別々の幻覚に落とされた。
マーキュリーの前に現れた敵、ビリユイは、マーキュリーに今世紀最大のシステムを持つAIタイプのスーパーコンピュータを見せたらしい。
「本当はもっともっと勉強したいんでしょう?
こんな戦いに貴重な時間を割いてないで、本当はもっとお勉強しなきゃ、お医者さんになんてなれないのにーー」
って。
「あんな幻覚を見せられるなんて。私、焦ってるのかな…時間がないって…」
焦るだなんて。亜美ちゃんらしくないなと思いつつ、話を聞くよと彼女の横に腰を下ろした。
2人でウチにいる時の、ちょっと肩の力を抜いた素直な亜美ちゃんがあたしは好きだ。
いつものお気に入りのクッションを渡すと、彼女は心許なげな胸の内を埋めるようにそれを抱きながら、ぽつり、ぽつりと話はじめた。
「未来のクリスタルトーキョーはうさぎちゃんが22歳で即位してできたっていう話。」
「ああ、そういえばそんな様な話、美奈から聞いたね」
「なんて言うか…思っている未来は、そう遠くないのかな…って」
聞いた時は結構先の話だと思っていたけど。
あたしたちが22歳になった頃、どんな大人になっ
てるんだろう。
高校も卒業して、短大か専門学校も出てるのかな?勉強しながらバイトしてお金貯めて、どっか就職して。
いつかは自分のお店を持ちたいな。
「22歳かあ。お花屋さんかケーキ屋さん、やれてるといいな。亜美ちゃんも、きっとその頃にはお医者さんに…」
言いかけて、少し悲しげに微笑む亜美ちゃんにハッとした。
「私は…まだちょっと難しいかも。高校卒業してすぐ医学部入れたとしても、22歳だと5年生だもの。お医者さんになるどころか卒業も間に合わないわ。
なにか、他にも目標を決めなくちゃ…ね…」
ーー亜美ちゃん、夢を諦めようとしてるの?
「なにか他の目標」って、あんなになりたがってたお医者さんを諦めて他の進路を考えちゃうの?
使命があるから早々に夢を諦めるとか、そんなの嫌だよ!?
「ーー何言ってんの!?亜美ちゃんはお医者さんになるんでしょ!その頃何が起こるかなんて分からないけど、未来は変えられるんだから!もしかしたら22歳よりずーっと先のことかもしれないし!」
「…うん…そう…ね。」
根拠ない自信で元気づけようとしたけど…なんだろう。
ちょっぴり悲しげな笑顔で頷く亜美ちゃん見てると、あたしの中で期待と不安が揺らぐ。
亜美ちゃんには夢を叶えてほしい。けど…
たとえ未来は変えられるとしても…なんだか遠くに行ってしまいそうで。。
学力に関係なく平等に学ぶことができる義務教育制度のお陰で、あたしたちは同じ中学校で出会うことができた。
けど、高校からはそうではない。
だから寂しいんだ。
あたしが最初にそれに気づいたのは、亜美ちゃんが無限学園の調査で体験入学を申し込んだとき。
在校生を紹介して(結局、ソイツがビリユイだったけど)特別な案内をしてもらえるよう取り計らってくれたのは、亜美ちゃんに無限学園への進学を勧めていた塾の先生だった。
もちろん、それが亜美ちゃんの希望する高校じゃないって事くらいは分かっていたんだけど。
学校でも、何度も進路指導室に呼ばれる彼女を見て、大人たちが色々と進学先を説得しているらしい事もなんとなく察しがついた。
そりゃそうだよね。あんな才女を放っておくわけがない。
聞けば、学年主任の先生は少し離れた国立の進学校を強く勧めているらしい。
全国模試ではいつも5教科合計500点満点でトップの亜美ちゃんならどこを受けたってきっと合格間違いなしだもん。先生たちからすれば、今年度の本校生徒の進学実績として華々しく記録を残すことができるだろう。
ついには三者面談の時期でもないのにお母さんまで呼び出されて、推薦入試を受けないかと説得されていたみたい。
他人から第一印象として聞くのは「成績優秀で家もお金持ち」。そのうえ容姿も可愛くて大人しい。先生たちからも男子からも密かに気に入られていて、どうしたってやっかみを受けやすい彼女はクラスでいつも1人、目立たないように大人しく座っている。
別々の高校行ったら、また1人になっちゃうんじゃないかな…
それとも、秀才ばかりの高校だったらそんな事ないのかな…
でも、それじゃあ…なんだろ…あたしが寂しいよ。
あたしだって、昔から色々とウワサを流されて孤立しがちだったのにコッチ来てからこんな穏やかな学校生活を送れたのは、いつも側に亜美ちゃんがいてくれたから。だもん。
一緒の高校行きたいなら、亜美ちゃんと同じ高校を受ける?
ムリムリ!今からじゃ逆立ちしても追いつかない。
でも…だから余計に、来年は一緒にいないかもっていうのが現実味を帯びてるんだ。
やっぱり本当は寂しいよ…
-———
それから暫くして、亜美ちゃんはまた火がついたようにお勉強を始めてた。
毎週のように手帳に書き込まれている模試のスケジュールには、どうみたって高校受験を控えた中学生には関係なさそうなものが混じってる。
高校生が受ける予備校の東大模試や、留学する人が受けるらしい英語の試験、よく分からない検定試験に、数学オリンピックの合宿みたいなのとか。
「なにか他の目標も探さなきゃ」とは言ってたけどこれは一体…亜美ちゃんどこへ行こうとしてるのか。
ちゃんと休めてるのかな?
ホント、根詰めると倒れるまで頑張っちゃいそうな子だから心配になるよ。ちゃんと食べてる?ちやと寝てるの?
耐えきれず「勉強を教えて」なんてテキトーな理由をつけてウチに泊まりに誘った。
-———
夜、お勉強を教えてもらいながら「少し休憩しよう」と最近買ったレモンバームのハーブティーを淹れた。
爽やかなハーブティーの香りは外から入ってくる初夏の風と混ざって、どこか切ない気分にさせる。
ゆったりとした部屋着で寛ぐ亜美ちゃんは久しぶりに柔らかな表情をしていて、こないだの寂しげな笑顔からまた一つ、悩みを克服したのか何かを越えたみたいな様子だった。
「…できるかわからないけど…私、3年間高校にいないかもしれない。」
「ーーえ?」
躊躇いがちに告げられたのは、彼女の密かな、でもとても硬い決意。
「J医大が来年度から飛び入学制度を導入するって、母から聞いたの。応募資格を満たすには結構たくさん条件があるんだけど…もしそれができたら…私、少しでも多くの事をお勉強したいなって。」
「…そっか…だから最近いろんなところ行ってたんだね」
「まこちゃんて、ホントよく見てるわね」
敵わないわと苦笑する笑顔。
この笑顔を身近で見られるのもあと少しなんだろうか。
改めて本人の口から聞かされた、思ってた以上に遠いところに行ってしまいそうな現実に、寂しさが募る。
なんか泣きそう。なんて。
「ーーだからね、私、やっぱりみんなと一緒に十番高校に行きたい。せっかくの高校生活だから、少しでもみんなと近くにいたいの。」
え?
「え??」
こういうの、鳩が豆鉄砲食ったようって言うんだろうか。
まってまって。予想外なんだけど?え?
「それに十番高校なら通学に時間がかからない分、そういう応募資格を得る事に専念できるし。」
そう言って見せてくれたJ医大の飛び入学制度の要項には、まるで"入れるもんなら入ってみろ"と言わんばかりの数々の無理難題な応募資格が書かれている。むしろ本気で募集する気があるんだろうか。いくつも検定とか受けなきゃいけなそうだし、これは普通の高校生活してるだけでも結構ハードだ。
「ーーだから、一緒に過ごせるうちは少しでも近くに居たいな…なんて。」
あ、亜美ちゃんこれ本気で言ってる。
そう確信したら、あたしもなんだか目の前に道がひらけたような気がした。
ーー亜美ちゃんと同じ高校に行こうーー
あたしたちの貴重な高校生活を思いっきり楽しむために。
それが、あたしの受験戦争における一番の目標になった。
-———
合格発表の日
「あった!」
「…うそ!?ほんとに!」
「うわあー!あったよ!やったあ受かったよお!」
「うさぎちゃん!美奈子ちゃん!…まこちゃん!!」
張り出された合格者名簿の前で、全員の番号を確認しながら、誰よりもいちばん泣いていたのは亜美ちゃんだった。
「よかったね。これでみんな同じ学校いけるよ」
「ーーうん。嬉しい。みんな本当に頑張ったもの。
嬉しい…ホントに…!」
自分のことより、みんなの合格に嬉し泣きしてる。
そりゃそうだよね。ずーっと心配してくれて、みんなと一緒に頑張りたいからってわざわざ一般入試で受験して。
そんな彼女がとても愛おしくて。
もしかしたら、あたしたちより短い高校生活になるかもしれない彼女のために、少しでも一緒にいて、一緒の思い出を作りたいって思ったんだ。
「亜美ちゃんも、ここからがスタートだね」
ポンと肩を叩くと、少しだけ自信なさそうに、でも強い意志を宿して、うん、と頷いた。
-———
それから、宣言通り2年生の冬
彼女はJ医大で初めての飛び入学制度を利用した合格者として名前が掲載された。
ーーと、思ったんだけど。
最近、亜美ちゃんの元気がない。
真面目なあの子は戦いが終わった後もパソコンに向かい、何やら色々と考えごとをしていた。戦略に誤りは無かったか分析して、次に活かすんだって。
ーー無限迷宮で5人がバラバラに引き離されたとき、あたしたちはそれぞれ別々の幻覚に落とされた。
マーキュリーの前に現れた敵、ビリユイは、マーキュリーに今世紀最大のシステムを持つAIタイプのスーパーコンピュータを見せたらしい。
「本当はもっともっと勉強したいんでしょう?
こんな戦いに貴重な時間を割いてないで、本当はもっとお勉強しなきゃ、お医者さんになんてなれないのにーー」
って。
「あんな幻覚を見せられるなんて。私、焦ってるのかな…時間がないって…」
焦るだなんて。亜美ちゃんらしくないなと思いつつ、話を聞くよと彼女の横に腰を下ろした。
2人でウチにいる時の、ちょっと肩の力を抜いた素直な亜美ちゃんがあたしは好きだ。
いつものお気に入りのクッションを渡すと、彼女は心許なげな胸の内を埋めるようにそれを抱きながら、ぽつり、ぽつりと話はじめた。
「未来のクリスタルトーキョーはうさぎちゃんが22歳で即位してできたっていう話。」
「ああ、そういえばそんな様な話、美奈から聞いたね」
「なんて言うか…思っている未来は、そう遠くないのかな…って」
聞いた時は結構先の話だと思っていたけど。
あたしたちが22歳になった頃、どんな大人になっ
てるんだろう。
高校も卒業して、短大か専門学校も出てるのかな?勉強しながらバイトしてお金貯めて、どっか就職して。
いつかは自分のお店を持ちたいな。
「22歳かあ。お花屋さんかケーキ屋さん、やれてるといいな。亜美ちゃんも、きっとその頃にはお医者さんに…」
言いかけて、少し悲しげに微笑む亜美ちゃんにハッとした。
「私は…まだちょっと難しいかも。高校卒業してすぐ医学部入れたとしても、22歳だと5年生だもの。お医者さんになるどころか卒業も間に合わないわ。
なにか、他にも目標を決めなくちゃ…ね…」
ーー亜美ちゃん、夢を諦めようとしてるの?
「なにか他の目標」って、あんなになりたがってたお医者さんを諦めて他の進路を考えちゃうの?
使命があるから早々に夢を諦めるとか、そんなの嫌だよ!?
「ーー何言ってんの!?亜美ちゃんはお医者さんになるんでしょ!その頃何が起こるかなんて分からないけど、未来は変えられるんだから!もしかしたら22歳よりずーっと先のことかもしれないし!」
「…うん…そう…ね。」
根拠ない自信で元気づけようとしたけど…なんだろう。
ちょっぴり悲しげな笑顔で頷く亜美ちゃん見てると、あたしの中で期待と不安が揺らぐ。
亜美ちゃんには夢を叶えてほしい。けど…
たとえ未来は変えられるとしても…なんだか遠くに行ってしまいそうで。。
学力に関係なく平等に学ぶことができる義務教育制度のお陰で、あたしたちは同じ中学校で出会うことができた。
けど、高校からはそうではない。
だから寂しいんだ。
あたしが最初にそれに気づいたのは、亜美ちゃんが無限学園の調査で体験入学を申し込んだとき。
在校生を紹介して(結局、ソイツがビリユイだったけど)特別な案内をしてもらえるよう取り計らってくれたのは、亜美ちゃんに無限学園への進学を勧めていた塾の先生だった。
もちろん、それが亜美ちゃんの希望する高校じゃないって事くらいは分かっていたんだけど。
学校でも、何度も進路指導室に呼ばれる彼女を見て、大人たちが色々と進学先を説得しているらしい事もなんとなく察しがついた。
そりゃそうだよね。あんな才女を放っておくわけがない。
聞けば、学年主任の先生は少し離れた国立の進学校を強く勧めているらしい。
全国模試ではいつも5教科合計500点満点でトップの亜美ちゃんならどこを受けたってきっと合格間違いなしだもん。先生たちからすれば、今年度の本校生徒の進学実績として華々しく記録を残すことができるだろう。
ついには三者面談の時期でもないのにお母さんまで呼び出されて、推薦入試を受けないかと説得されていたみたい。
他人から第一印象として聞くのは「成績優秀で家もお金持ち」。そのうえ容姿も可愛くて大人しい。先生たちからも男子からも密かに気に入られていて、どうしたってやっかみを受けやすい彼女はクラスでいつも1人、目立たないように大人しく座っている。
別々の高校行ったら、また1人になっちゃうんじゃないかな…
それとも、秀才ばかりの高校だったらそんな事ないのかな…
でも、それじゃあ…なんだろ…あたしが寂しいよ。
あたしだって、昔から色々とウワサを流されて孤立しがちだったのにコッチ来てからこんな穏やかな学校生活を送れたのは、いつも側に亜美ちゃんがいてくれたから。だもん。
一緒の高校行きたいなら、亜美ちゃんと同じ高校を受ける?
ムリムリ!今からじゃ逆立ちしても追いつかない。
でも…だから余計に、来年は一緒にいないかもっていうのが現実味を帯びてるんだ。
やっぱり本当は寂しいよ…
-———
それから暫くして、亜美ちゃんはまた火がついたようにお勉強を始めてた。
毎週のように手帳に書き込まれている模試のスケジュールには、どうみたって高校受験を控えた中学生には関係なさそうなものが混じってる。
高校生が受ける予備校の東大模試や、留学する人が受けるらしい英語の試験、よく分からない検定試験に、数学オリンピックの合宿みたいなのとか。
「なにか他の目標も探さなきゃ」とは言ってたけどこれは一体…亜美ちゃんどこへ行こうとしてるのか。
ちゃんと休めてるのかな?
ホント、根詰めると倒れるまで頑張っちゃいそうな子だから心配になるよ。ちゃんと食べてる?ちやと寝てるの?
耐えきれず「勉強を教えて」なんてテキトーな理由をつけてウチに泊まりに誘った。
-———
夜、お勉強を教えてもらいながら「少し休憩しよう」と最近買ったレモンバームのハーブティーを淹れた。
爽やかなハーブティーの香りは外から入ってくる初夏の風と混ざって、どこか切ない気分にさせる。
ゆったりとした部屋着で寛ぐ亜美ちゃんは久しぶりに柔らかな表情をしていて、こないだの寂しげな笑顔からまた一つ、悩みを克服したのか何かを越えたみたいな様子だった。
「…できるかわからないけど…私、3年間高校にいないかもしれない。」
「ーーえ?」
躊躇いがちに告げられたのは、彼女の密かな、でもとても硬い決意。
「J医大が来年度から飛び入学制度を導入するって、母から聞いたの。応募資格を満たすには結構たくさん条件があるんだけど…もしそれができたら…私、少しでも多くの事をお勉強したいなって。」
「…そっか…だから最近いろんなところ行ってたんだね」
「まこちゃんて、ホントよく見てるわね」
敵わないわと苦笑する笑顔。
この笑顔を身近で見られるのもあと少しなんだろうか。
改めて本人の口から聞かされた、思ってた以上に遠いところに行ってしまいそうな現実に、寂しさが募る。
なんか泣きそう。なんて。
「ーーだからね、私、やっぱりみんなと一緒に十番高校に行きたい。せっかくの高校生活だから、少しでもみんなと近くにいたいの。」
え?
「え??」
こういうの、鳩が豆鉄砲食ったようって言うんだろうか。
まってまって。予想外なんだけど?え?
「それに十番高校なら通学に時間がかからない分、そういう応募資格を得る事に専念できるし。」
そう言って見せてくれたJ医大の飛び入学制度の要項には、まるで"入れるもんなら入ってみろ"と言わんばかりの数々の無理難題な応募資格が書かれている。むしろ本気で募集する気があるんだろうか。いくつも検定とか受けなきゃいけなそうだし、これは普通の高校生活してるだけでも結構ハードだ。
「ーーだから、一緒に過ごせるうちは少しでも近くに居たいな…なんて。」
あ、亜美ちゃんこれ本気で言ってる。
そう確信したら、あたしもなんだか目の前に道がひらけたような気がした。
ーー亜美ちゃんと同じ高校に行こうーー
あたしたちの貴重な高校生活を思いっきり楽しむために。
それが、あたしの受験戦争における一番の目標になった。
-———
合格発表の日
「あった!」
「…うそ!?ほんとに!」
「うわあー!あったよ!やったあ受かったよお!」
「うさぎちゃん!美奈子ちゃん!…まこちゃん!!」
張り出された合格者名簿の前で、全員の番号を確認しながら、誰よりもいちばん泣いていたのは亜美ちゃんだった。
「よかったね。これでみんな同じ学校いけるよ」
「ーーうん。嬉しい。みんな本当に頑張ったもの。
嬉しい…ホントに…!」
自分のことより、みんなの合格に嬉し泣きしてる。
そりゃそうだよね。ずーっと心配してくれて、みんなと一緒に頑張りたいからってわざわざ一般入試で受験して。
そんな彼女がとても愛おしくて。
もしかしたら、あたしたちより短い高校生活になるかもしれない彼女のために、少しでも一緒にいて、一緒の思い出を作りたいって思ったんだ。
「亜美ちゃんも、ここからがスタートだね」
ポンと肩を叩くと、少しだけ自信なさそうに、でも強い意志を宿して、うん、と頷いた。
-———
それから、宣言通り2年生の冬
彼女はJ医大で初めての飛び入学制度を利用した合格者として名前が掲載された。