5つのクリスマスナイト
☆ゾイ亜美
「ブレないね、亜美ちゃんは…」――なんてみんなには言われたけれど。
この冬だけはどうしたって、クリスマスもお正月も浮かれていられないの。
筆記試験まであと僅か。今年の冬に受験すると決めたから、あたしは今、少しも時間を無駄にできない。負けられない戦いの真っ最中なのだ。
図書館の閉館時刻を告げるメロディーに急かされながら帰り支度をしていると、「送って行くよ」と彼がやってきた。
こんなあたしの身勝手に付き合ってクリスマスイブに彼まで図書館で過ごさせたなんて、美奈が知ったらなんて言うかしら。
そんな罪悪感を抱く間もなくヒョイと鞄を取り上げられて、空いた手をしっかりと絡めとられた。
繋いだ手にひと粒、ふわりと白い粉が溶ける。
「あ、雪。」
「ほんとだ。やっぱり降ってきたね。」
「ごめんなさい。寒いのにこんな遅くまで付き合わせてしまって」
「なんで?勝手についてきてるだけなんだから謝る事じゃないでしょ?それにほら――」
「――!」
「こうすれば十分、あったかいじゃない?」
繋いだままの手をポケットの中に引き込まれて、見上げると嬉しそうな彼の顔がとても近かった。
「なあに?亜美、ドキドキしてる?」
「なっ…なんでもない!」
キンと冷たい冬の空気にさらされているのに、顔だけは暖炉の前にいるみたいに熱かった。
「ブレないね、亜美ちゃんは…」――なんてみんなには言われたけれど。
この冬だけはどうしたって、クリスマスもお正月も浮かれていられないの。
筆記試験まであと僅か。今年の冬に受験すると決めたから、あたしは今、少しも時間を無駄にできない。負けられない戦いの真っ最中なのだ。
図書館の閉館時刻を告げるメロディーに急かされながら帰り支度をしていると、「送って行くよ」と彼がやってきた。
こんなあたしの身勝手に付き合ってクリスマスイブに彼まで図書館で過ごさせたなんて、美奈が知ったらなんて言うかしら。
そんな罪悪感を抱く間もなくヒョイと鞄を取り上げられて、空いた手をしっかりと絡めとられた。
繋いだ手にひと粒、ふわりと白い粉が溶ける。
「あ、雪。」
「ほんとだ。やっぱり降ってきたね。」
「ごめんなさい。寒いのにこんな遅くまで付き合わせてしまって」
「なんで?勝手についてきてるだけなんだから謝る事じゃないでしょ?それにほら――」
「――!」
「こうすれば十分、あったかいじゃない?」
繋いだままの手をポケットの中に引き込まれて、見上げると嬉しそうな彼の顔がとても近かった。
「なあに?亜美、ドキドキしてる?」
「なっ…なんでもない!」
キンと冷たい冬の空気にさらされているのに、顔だけは暖炉の前にいるみたいに熱かった。