絶対ならなそうな酔い方で相方を困惑させるまもうさ四四

☆お説教するうさぎ

 「もー、みーんなダラシないなあ!」

 2人きりになった部屋で、うさぎはほんのりと赤らんだ頬を膨らませた。
 確かに今日は珍しい。いつもペースなんて考える事もなく一番最初に酔いつぶれて寝てしまううさぎが、今日は最後まで起きている。
 それどころか皆の様子を見ながら「だらしない」などとは、いつもの彼女からは想像のつかない台詞だ。

「いいんじゃないか?アイツらもたまには。」
「なに言ってんの!まーもちゃんはコレだから…」

 今夜の彼女は饒舌だ。衛が何か応えようとすれば被せるように理屈っぽい事を長々と語る。
「だいたいまもちゃんは誰にでも優しいからあたしは心配で――だからみんなに『甘い』って言われちゃうのよ――云々」

 どうやらそれっぽいことを言っているようではあるが、衛だってシラフではない。長々とお説教を続けるうさぎを眺めるうちに、彼の中で何かちょっとした加虐心のようなものが燻りはじめていた。

「――うさ」
「なによ、聞いてる?まもちゃーん、ヒトの話はちゃーんと最後まで聞いてからにしてよね!そんでね、あたしが言いたいのは」
「うさぎ」
「あたしが言いたいのはね、つまりまもちゃんは」
「――うさぎちゃん」
「…?」

 いつもと少し違う呼び方で遮った彼の顔は穏やかな笑を浮かべている…が、その目はまるで草むらから子羊たちの群れに狙いを定めた狼のようだった。

「誰が『甘い』んだ?」
「…まもちゃ」
「誰が、誰に?」
「ま、まもちゃんが…みんな」
「みんなに?おかしいな。俺はうさ以外の子を甘やかした覚えはないのだけど。」
「あの、だからあたし…に」
「どうしてだっけ?誰かさんは甘えん坊さんだからかなあ?」

 うさぎの「お説教」を片っ端から論破するように、「クス、俺の勝ちだよ?うさ。」と不適な笑みを浮かべた衛。
「もう!知らないから!」と振り挙げたうさぎの手を難なく捕まえるとそのままソファーに押し倒して、「暴力はよくない?」と嬉しそうに柔らかなうさぎを見下ろした。

 お説教の代償は、始まったばかりだ。
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