絶対ならなそうな酔い方で相方を困惑させるまもうさ四四

☆甘えん坊なまこと

 ネフライトがその異変に気付いたのは、もうだいぶ周りが出来上がってからのことだった。

 レイの様子に狼狽えるジェダイトを揶揄っていたのだが、そんなときいつもこちら側で笑っているはずのゾイサイトが、なぜかこちらを見て笑いを噛み殺している。

 ネフライトの側には彼女が。そう、いつもだったら真っ先に酔いつぶれるうさぎや美奈子達を気遣って水を用意したりブランケットを出したりしているはずの彼女が…いるのだが、やけに静かなのだ。

「大丈夫か?調子悪い?」
「…いーなぁ、レイちゃんは。」
「へ?」

 聞いたことのない甘ったるい声のまことに、ネフライトはぱちくりと目を瞬かせた。

「れ、レイちゃん?が、どうか…した?」

 もはやジェダイトの事など知ったことか。酔っているのか?今度は自分が狼狽える事になろうとは。
 そんなネフライトの心情などお構い無しで、まことはグイッと彼の腕を抱き寄せる。
 「ねーえー、あたしもレイちゃんみたいになりたい」
 アルコールの仕業だろうか。潤んだ瞳で見上げられて、ネフライトの顔が一気に熱くなった。
 (いつだって最前線で凛々しく戦う保護の戦士。誰よりも強く優しいセーラージュピター…が、いま、くたんと頼りなく身を任せて上目遣いで甘えている。それも、めちゃくちゃ可愛い。こんな事が許される男など、世界中…いや、銀河中どこを探しても俺以外にいてたまるもんか。)

 ぼんやりとした目でグラスを揺らす手つきは普段の彼女からすると想像もつかないくらい危なげで、頼りない。
 手元から滑り落ちそうなそのグラスを柔く取り上げると、今度は両腕で縋り付いてきた。

「ま、まこ…とちょっと酔いすぎ??お水飲む?」
「んー、いらなーい」
「――っ!!!」

 ネフライトの胸に顔を擦り付けるようにしながら首を横に振る仕草はまるで幼い頃のちびうさのよう。こんな甘々に甘えん坊な仕草はうさぎでもそう滅多に見せたことはないかもしれない。
 ふわふわのポニーテールから香るコロンが鼻腔をくすぐり、もはや彼に冷静さを求めることは修行とも言えよう。いったいあと何分もつだろうか。

 「…そうだな。俺たちもそろそろ失礼するか。な?」
 
 10秒も保たなかった。
 淡く色づいた彼女の唇をつんとつついて、甘々な雰囲気のまま席を立つ2人。自室に帰るまでこの男に理性が残されていただけでも褒めるべきなのかもしれない。
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