絶対ならなそうな酔い方で相方を困惑させるまもうさ四四

☆泣き上戸なレイ

 それは突然に始まった。

「…くすん。」
 向かいのテーブルに座っていた彼女の、ほんのり紅くなった目元から突然涙が溢れ落ちた。

 思いがけない出来事に(涙した顔まで綺麗だな)などと呑気に見惚れたジェダイトだったが、それも束の間。涙はひと粒に留まらず、ポロポロと頬をつたう。

「えっ!?ちょっ、な、な何?どうした?」
 何か傷付けるような事でも言ってしまっただろうか?とほろ酔い状態の脳みそで考えるが、ちっとも心当たりがない。それなのに。

「だって。貴方が…ぐすん。」
「え俺?俺 何かした!?」
 ますます肩を振るわせて啜り上げる彼女に狼狽えるジェダイト。それがますます呼び水となって、とうとう子供のように泣き出してしまうとは。

「おいジェダイト、お前彼女になにしたんだよ?」
「ちがっ…!俺なにも!何もしてな…えぇぇ」

 揶揄うようにネフライトから諭されて、慌てて隣の席に移り彼女の肩を抱きよせた。
 涙に押し消されそうな声を聞き取ろうとして、顔を寄せると、彼女の掠れた声が耳をくすぐる。

 「だって…っ。貴方が少しも…っ、あたしのところに居てくれないから…くすん。」
 「――!!!!!」

 それはもう、彼の理性を崩壊させるには十分過ぎるほどのパワーだった。

 「いる。ずっと側にいる。」

 酔っているのかいないのか。戦闘中以上にキリリと凛々しく背筋をのばすと、肩を抱いたまま皆にアイコンタクトを送る。
 「今夜はもう。我々はこのへんで。」

 それだけ言うと、スマートかつ紳士的な所作で席を立ち、彼女と共に居室へと消えていった。

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