夏休みっ!
夏休みも残りわずか。美奈子が俺のマンションに仲間を連れてやってきた。
このところ、俺の部屋は四天王だけでなくあいつらにまで集会所のように使われているようなフシがある。もとから仕事の打ち合わせ程度はできるようにと選んだ物件なので人の出入りが多いことには大して気にならないのだが、「やり残した課題を一気に片付ける」という名目ではなかったか?
彼女たち…というか、主に俺の彼女は、未だまともにペンケースすら開いた様子も無い。
さっきからずっとうさぎと共にポーチを広げてあれこれ髪やら顔やらいじっている、その姿はまるでお化粧ごっこを楽しむ子供のようだ。
「そろそろ『休憩』は終わりにしましょう?」
「うーん、わかった。じゃあ最後にお願いっ!」
分厚い参考書を開こうとする亜美の手を押し止めて、美奈が彼女に詰め寄った。
「亜美ちゃんもやってあげる!」
「もう、あたしはいいから。」
「お願い!ちょーっとだけやらせて♡」
「そうだね、亜美ちゃんもやってみたら?」
「うんうん!美奈Pじょーずだもん。あたしも亜美ちゃんがメイクするとこ見たーい!」
確かにうさぎ等の言うとおり、美奈子のメイクはどうやら上手いのだろう。
オレにはこういう事はいまいちよく分からないが、すでに仕上がったまことやレイを見ると、ほんの少し目や唇に何か塗っただけなのに大人っぽく艶やかに変身したことが分かる。
今日は来る予定の無かったネフライトからこちらへ向かっていると連絡があったのも、おそらくまことが戯れに撮った写真を送ったせいだろう。
「み、美奈ったら…」
ついに押し負けた亜美が眉根を下げて笑う。
まったく美奈子の嬉しそうなことといったら。
ドアベルが鳴り、ジェダイトとゾイサイトが入ってきた。
「――レイ…!どうしたんだ!」
早速いつもと違うことに気がついたジェダイトが、レイに駆け寄る。
あいつの動揺を知ってか知らずか、涼しい顔をしたレイが「なにが?」と肩の髪を払った。
乗りきれなかった黒い髪がサラリとこぼれ落ち、再び白い肩にかかる。
オレでも分かるぞジェダイト、あれは死ぬ。理性が。
その一方でいたって冷静なのがゾイサイト。入ってきた時からなんだか不機嫌だった。皆に取り囲まれてされるがままになっている自分の彼女を覗きこみ、「あんたら何してんの?」と冷たい一瞥を与えた。
「メイクだよ?ほら!かわいーでしょ」
「…フン」
あからさまにプイっと顔を背け、蜜色の髪を指先でくるくると弄びながらオレの隣に腰をかける。
こういう時、コイツに声をかけられるのはマスターを除けばオレくらいだろう。
いかにも面倒くさいオーラを放っているが、こうやってオレの所に近づいてくるのは本気で機嫌が悪いのではなく、拗ねてるとか甘えてるとかそんな時だと知っているから。
「なんだお前、不機嫌だな」
「…べつに。」
しばらくそうやって髪をいじる様子を放っておきつつ、それとなく彼の不機嫌の理由を探す。
リビングの向こうでは彼女たちが出来上がった亜美を取り囲んで「可愛い」だの「毎日やりなよ」だのと歓声をあげていた。
(いいのか?見に行ってやらなくて?)
そう言おうとしたのとほぼ同時に、ポツリと彼がつぶやいた。
「…私の方がもっと上手にやってあげられるのに」
なんだ、ヤキモチか。
このところ、俺の部屋は四天王だけでなくあいつらにまで集会所のように使われているようなフシがある。もとから仕事の打ち合わせ程度はできるようにと選んだ物件なので人の出入りが多いことには大して気にならないのだが、「やり残した課題を一気に片付ける」という名目ではなかったか?
彼女たち…というか、主に俺の彼女は、未だまともにペンケースすら開いた様子も無い。
さっきからずっとうさぎと共にポーチを広げてあれこれ髪やら顔やらいじっている、その姿はまるでお化粧ごっこを楽しむ子供のようだ。
「そろそろ『休憩』は終わりにしましょう?」
「うーん、わかった。じゃあ最後にお願いっ!」
分厚い参考書を開こうとする亜美の手を押し止めて、美奈が彼女に詰め寄った。
「亜美ちゃんもやってあげる!」
「もう、あたしはいいから。」
「お願い!ちょーっとだけやらせて♡」
「そうだね、亜美ちゃんもやってみたら?」
「うんうん!美奈Pじょーずだもん。あたしも亜美ちゃんがメイクするとこ見たーい!」
確かにうさぎ等の言うとおり、美奈子のメイクはどうやら上手いのだろう。
オレにはこういう事はいまいちよく分からないが、すでに仕上がったまことやレイを見ると、ほんの少し目や唇に何か塗っただけなのに大人っぽく艶やかに変身したことが分かる。
今日は来る予定の無かったネフライトからこちらへ向かっていると連絡があったのも、おそらくまことが戯れに撮った写真を送ったせいだろう。
「み、美奈ったら…」
ついに押し負けた亜美が眉根を下げて笑う。
まったく美奈子の嬉しそうなことといったら。
ドアベルが鳴り、ジェダイトとゾイサイトが入ってきた。
「――レイ…!どうしたんだ!」
早速いつもと違うことに気がついたジェダイトが、レイに駆け寄る。
あいつの動揺を知ってか知らずか、涼しい顔をしたレイが「なにが?」と肩の髪を払った。
乗りきれなかった黒い髪がサラリとこぼれ落ち、再び白い肩にかかる。
オレでも分かるぞジェダイト、あれは死ぬ。理性が。
その一方でいたって冷静なのがゾイサイト。入ってきた時からなんだか不機嫌だった。皆に取り囲まれてされるがままになっている自分の彼女を覗きこみ、「あんたら何してんの?」と冷たい一瞥を与えた。
「メイクだよ?ほら!かわいーでしょ」
「…フン」
あからさまにプイっと顔を背け、蜜色の髪を指先でくるくると弄びながらオレの隣に腰をかける。
こういう時、コイツに声をかけられるのはマスターを除けばオレくらいだろう。
いかにも面倒くさいオーラを放っているが、こうやってオレの所に近づいてくるのは本気で機嫌が悪いのではなく、拗ねてるとか甘えてるとかそんな時だと知っているから。
「なんだお前、不機嫌だな」
「…べつに。」
しばらくそうやって髪をいじる様子を放っておきつつ、それとなく彼の不機嫌の理由を探す。
リビングの向こうでは彼女たちが出来上がった亜美を取り囲んで「可愛い」だの「毎日やりなよ」だのと歓声をあげていた。
(いいのか?見に行ってやらなくて?)
そう言おうとしたのとほぼ同時に、ポツリと彼がつぶやいた。
「…私の方がもっと上手にやってあげられるのに」
なんだ、ヤキモチか。