日々のこと J&R

 机の上に置いてあった彼のスマホが鳴った。

「ごめん、誰からか見てくれる?バイトの面接の結果かもしれない。」

自分で見て――と言いたいところだけど、彼の両手を塞いでしまった原因が私にある以上、断るわけにもいかない。いま、彼は腰を痛めた祖父に代わって社務所の倉庫から重たい荷物を取り出すのを手伝ってくれていたのだから。

「解除は0417」

私がそのスマホを手に取ると、聞くまでもなくロック解除の番号を伝えてきた。見られて後ろめたい物が何も無い潔さかしら。そんな清々しく暗証番号を教えるなんて。というかその4桁、私の誕生日じゃないの?言われるがままに番号を入力すると画面が切り替わり、そこに表示されたデスクトップに思わず顔を上げた。

「何よこれ」
「何って、キミだよ?」

 荷物を置いてようやく手の空いた彼が、ひょいと私の手からスマホを取り上げて微笑んだ。変な写真ではないけれど…それでも、こんな大々的に私の写真を待ち受けにしているところを他の誰かに見られたら恥ずかしい。

「やめてよ、そんな写真。」
「どうして?」

画面の中の私を見ながら、大切そうにスマホをタップする。
「綺麗なのに」なんて言いながら。
悪びれた様子を1ミリも見せない無邪気な横顔に、むず痒いような腹立たしいような、なんとも居た堪れない気持ちでただ睨み返す事しかできなかった。
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