☆゚・*:.。.☆Happy Birthday .。.:*・゚☆.。.:・゚

「もう、おじいちゃん何度言ったら分かるのよ。こういう高所作業は危ないからウチの人にやらせてください。」
そう言う私に"任せて"とアイコンタクトを送り、慣れた手つきで抱っこ紐を外した彼が大切そうにおじいちゃんにあの子を引き渡す。
「はは、すまんのう。ワシはこうしてしょっちゅうお前の顔が見られるだけで十分ありがたいよ。」


あれからもう何年経つかしら――
私の部屋だったその場所は、家を出る時あんなに片付けたはずなのに今やすっかり子供のおもちゃ置き場だ。
彼が電球を交換してくれている間、ふと足元の引き戸に目が行った。そこにしまわれているのは、何冊かの古いアルバムと、あまり身に付ける事のなかったアクセサリー。贈ってくれたのは…そう、海堂さん。
今思えばあの頃は私も子供だったわ。私に似合うからと贈ってくれたことが嬉しくて、1人のレディとして認められたような気がして。
…だからあの年以降、誕生日に花を贈られる事は少し気が重かったの。


「――これ、ちょっとそこに置いて新しい電球取ってくれる?」
上からの声に見上げると、電球を片手に彼が微笑んでいた。その顔は、あの頃私が海堂さんのなかに無意識に面影を追い続けていたそれそのものだ。

「終わったらみんなで商店街にいこう。誕生日なんだし、お祝いにランチでも。」
「ありがとう。それならクラウンがいいわ。久しぶりにあそこでお茶したい気分なの。」
「仰せのままに。帰りに花屋も寄っていい?」
「お花屋さん?」
「うん。頼んであるんだ。今年も受け取ってもらえる?」
「――喜んで」

今は、毎年この日に贈られるカサブランカが心から嬉しい。
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