月夜のふたり
「まもちゃん、あのね」
言いながらうさぎは彼の胸に頭を乗せた。
耳を伝ってトクトクと聞こえる鼓動、程よく筋肉のついた二の腕の温かさ…それらを感じながら、こうしている時がいちばん落ち着くから。
「…どうした?眠れないの?」
少し低い彼の声が胸板を伝って、直接うさぎの鼓膜に揺さぶりかける。ただそれだけなのに、体の中からポカポカと温かくなるのは何故なのだろう。
「うん…。あったかいね。」
そう言いながら心地良さげに目を閉じた。
よしよし、と頭を撫でながら抱き寄せればお団子の解けた髪がふわふわと衛の頬をくすぐる。
そんな事は露ほども知らず、うさぎは薄いシルク一枚隔てて伝わる柔らかな体温に身を委ねている。
上下する胸から聞こえる呼吸も、こうして見上げた時にだけ見える頬から鎖骨にかけてのラインも、全部ぜんぶ、愛しくてたまらない。
「ーーだいすき」
たまらずつんと唇を尖らせたうさぎが一方的に唇を重ねて、再び胸の上に顔を埋めた。
次の瞬間ーー
「ーーったく、そんなに眠れないのか」
気がつけばうさぎの視界はぐわんと反転して、覆いかぶさる衛の顔が迫っていた。