月夜のふたり

もうそれなりに長い付き合いにはなるけれど…亜美は、未だに腕枕が苦手だった。
どうしても彼が「おいで」って言うから頭を乗せてはみるものの、重いんじゃないかと気が気ではなく、気づかれないよう少しだけ力を入れてしまうから。
ほんの少し申し訳なく感じつつ、彼が眠った頃合いを見計らいそっと離れてようやく自分も眠る。
だって、こんな体勢で寝ていたら腕が痺れてしまいそうだもの。なんて心で言い訳をして。

そんな亜美の淡い罪悪感を水に流すかのように、スヤスヤと腕から逃がしてくれる彼の無防備さにすっかり油断していたのかもしれない。

その日…完全に頭の芯まで蕩かされて、いつもみたいに気をつかう余裕もなく腕の中で意識を手放した。
バッテリーが切れたみたいに全身の重みを解放して くたんと眠る亜美の寝顔を嬉しそうに撫でる彼のことなんて、知る由もない。
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