雨あめ降れ降れ

「ひえー!すっごい雨!」
「だから今朝、傘持って行くようメールしただろ」

だって近いし、夜までは降らないと思ったんだもん。
それに、2人でひとつの傘に入りながら、こうして一緒に歩くのだって悪くないじゃない。

「どうせ、雨が降ったら迎えに来てくれるとでも思ってたんだろ?」
「…スン」

お見通しだ。
だってだって、今日はまもちゃんお休みじゃん?
亜美ちゃんのクラスは2限で終わりだったからずっと前に図書館行っちゃってるし、まこちゃんもなるちゃんもみーんな部活だし、美奈Pは追試に行ったきりずーっと戻ってこないし。こんな夕暮れ時に雨の中1人で帰るのって寂しいもんだよ?

ゴロゴロ…

「ひゃぁ!」

思わず飛び上がってしまった肩を抱き寄せられて、吸い込まれるように彼の胸の中へ。
えへへ、こーしてるのが1番安全よね。
ーーって見上げてみたら、ため息をつくまもちゃんの顔。「呆れた」って顔に書いてあるみたい。ちぇ。

「…そういえば、ちびうさは向こうに帰って元気にしてるかな。」
「なあに?急に。」
「いや、別に。ただなんとなく、あの頃は俺があいつのお迎えに行っただけでうさがやきもち妬いてたなと思い出して。」

そうだ、あの頃はよくちびうさと2人でまもちゃんの取り合いしてたっけ。こんな雨の日に、ちびうさの方が小さいから仕方ないけどさ…あの子の方を先に迎えに行ったの、ホントはちょっぴり寂しかったんだよ…?

「うさは本当に甘えん坊だよなって話」
「…だって、あの頃はまだ私も子供だったもん」

ぷうと頬を膨らましたけど…本当は今だって、ずーっとこうして、まもちゃんの胸の中を独り占めしていたいんだよ?

「『あの頃も』だろ?ほら、こっち。」
もう少しくっついていたかったのに、曲がり角でグイと剥がされて。代わりに、車道側に回り込んでから再び肩に腕を回された。
いつだってそう。こうやってさりげなく、あたしが車道側にならないように歩いてくれる。

「ーったく、甘えんぼさんが」
そう言いながら周囲に往来がないことを確かめて
……

「?ーーっ…」

まだ少しとんがらせていたままだった唇に、柔らかな温もりが触れた。
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