雨あめ降れ降れ

急な雨が降ると、正門の前に迎えの車や傘を持った誰かの家族がいるのは日常茶飯事なのだけど。

にわかに騒がしくなった女子学生たちの視線の先に、思わず息が止まりそうになった。

「ーージェダイト!?」

他の迎えの人とは明らかに違う。
背筋をピンと伸ばし、凛とした佇まい。短い金髪が紺色のジャケットによく映えて、湿った空気すら清々しい。

ーー目立つわ。

チラチラと好奇の目を向けて通り過ぎる女子学生たちを一瞥して、ぶれることなく昇降口の一点を見つめている。私以外の女の子には愛想の良い人ではない事がせめてもの救いだった。


「火野様のお迎え?」
「素敵な方ね」
聞こえないふりをしていても、クラスメイトの密かな声が耳に入る。

「もう少し気の利いた迎え方があったんじゃなくて?」
「すまない。配慮が足りなかった。」

向けられた視線に今さら気がつくなんて。
重ねて「申し訳ない」と心底バツの悪そうな顔をされると、なんだか私が悪いみたいに感じてしまうじゃない。

「ではこれだけで」と、傘だけ渡してそそくさと踵を返す。
そんな彼を、言葉だけで引き留めた。

「今日はもう…いいから。」


僅かに距離を保ちながら正門を出て、そのまま少し先の大通りまで。ここまで出てしまえば同じ制服に出会う頻度も下がる。私たちの姿も雑踏に紛れてしまうでしょう。

ーーそう思った途端

きゅ。
と嬉しそうに指を絡められて、顔を上げたら子犬のように笑う彼と目が合った。

「…ばか」

何故か頬が熱くなるのを髪で隠して、今度は私の方から手を引いた。
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