日々のこと N&M

一人暮らしが長いから、こういう時どうするのが最善なのかはよく分かってる。
たいした運動もしていないのに体はだるいし、身体の内側からゾクゾクと湧いてくる寒気。
これはいけない。
すぐにそう察したから、レトルト食品や飲み物を沢山買って帰ろう。あと…薬も…。

思いの外多くなってしまった荷物を提げながらふらふらと店から出てきたところでポンと肩をたたかれた。
振り返るといつもの笑顔。こんな時に、こいつかよ。

「まことんちで晩飯食いたい。」
「ごめん今度にしてくれる?今日はちょっと」
「うん。だからおまえんち行きたいんだけど。」

だから、とは何様だ。こっちは具合悪いんだよ。
あんたにもうつしたくないし、少しくらいは察してくれないかな。
そんな思いは少しも通じず、ヒョイヒョイと荷物を取り上げられた。

「お前さ、頼りにされることが多いけど、たまには人に頼る事を知った方がいい。」
「でも」
「頼りにされると嬉しいっていうのも良く知ってんだろ?」

そう言って強引に肩を抱き、家に向かって歩き出す。途端に厚い胸板が目の前に迫って、思わずドキッとした。

(ああ、あったかいなぁ。)

ぼんやりと身を委ねながら家に着く。鍵を開けて、荷物を…置い…て…
……

不思議だな。アイツが来てくれたっていうだけで安心感に包まれて、いっきに緊張の糸がほぐれた。

それからのことは、ぼんやりとしか覚えていない。
とにかく身体が重たくて、何もしたくなくて、着替えるのも一苦労だった気がする。
慣れた手つきで作ってくれたホットワインは、なんだかとても懐かしい味がした。
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