お出かけの夜に
「楽しかったの?引率の先生みたいだったけど」
「今さら言うか。1番ワガママ言ってたのはどこの誰だ」
愛の女神のご要望はいつだってとどまることを知らない。
一日中、あれが見たいコレが食べたいとはしゃぐ、賑やかな輪の中心にいる彼女に振り回されて。
確かにあの中では引率者のようになっていたかもしれない。
でも、注げば注ぐほどに明るく弾ける笑顔を見せられると、もっと見たい、もっと喜ばせたい、と、与えずにはいられなくなるのだ。
だから、この後もーー
「美奈、ちょっと出るぞ。ついてこい。」
せっかくお部屋着いたんだから少しは休ませてよ!
なんて文句を言う彼女の手を少し強引に引いて、用意していた車に乗せた。
「さんざんお前のワガママに付き合ったんだから、少しは俺にも付き合え」
走ること30分、着いた先は
夜景の見える展望台
「すごーい!こんな所、ガイドブックにもSNSにも載って無かった!」
「載ってたら行きたいとかギャーギャー騒いでただろ」
「なによ。ダメなの?」
「ーー美奈だけを喜ばせたかった」
「…ばか」