♡SS〜シルバー・ミレニアム
私達四守護戦士が正式に四天王と対面したのは、私がクンツァイトと知り合ってしばらくしてからだった。
「兄のように後の2人を従えて頼りになるネフライト、歳は若いが策略に長けるゾイサイト。そして、誰よりも使命に忠実なジェダイト。」
そんなふうに、あいつからはよく他の3人のことを聞いていたのに。
その真っ直ぐな視線にピンときたわ。
誰よりも気高く、一切の穢れを寄せ付けないマーズに見惚れる者は五万といるけれど、その気品にたじろぐ事なく礼儀正しい挨拶を交わした短髪の好青年。
なによ。「誰よりも使命に忠実」なんじゃなかったのかしら?
(ーー良い度胸しているわ。)
反射的に腹の底で燻る苛立ちは、これまでも幾度となく迷惑そうに他国の男どもをあしらう彼女を見てきたからだろう。
でも、その日は珍しくマーズも視線を逸らす事がなく、真正面にそれを受け止めていた。
(ーーまさか…)
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それから暫くして、エンディミオンに招かれてセレニティと共に地球に降り立った時のこと。
空一面に花が咲いたような光景に、プリンセスだけでなく私たち4人も言葉を失った。
「サクラという花ですよ。貴女にこの景色をお見せしたくて」
そう言って微笑むエンディミオンを見て、悔しいけれど、プリンセスが地球に憧れる理由を改めて悟ったわ。
あたたかな春の息吹きは優しく頬を撫で、長い冬の間に凍てついていた心を開放的にさせる。
それはまるで一斉に芽吹いた命たちが無邪気に笑うようで、その星の厳しい冬の寒さを知らない私達でさえ、喜びに感嘆する景色だった。
絹糸のようなプリンセスの髪がキラキラ輝いて、花びらと共に舞う。
(なんて美しいのだろう。)
――ふと、少し離れたところに目をやれば…あの短髪、またマーズのところに行ってるのね。
ため息をつくように、マーズが彼に微笑みかけた。
「まるで吹雪ね。月から見ていたこの星にこんな景色があったなんて。知らなかったわ。」
「空に知られぬ雪、ですね。」
彼はそう言いながら、躊躇いがちに彼女の髪の毛についた花びらをそっと摘んで微笑んだ。
その花びらを手にとり微笑むマーズ。
あんな風に笑うマーズも珍しい。
(私が見ている事にも気づかないで――)
…私は今、恋の始まりを見てしまったのかもしれない。
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