Restart
今日の空港は妙に賑やかだ。到着ロビーでは横断幕を用意するグループやカメラを構えた人々が集まり、しきりに入国手続きの出口を気にしている。誰か有名人でも来るのかな?まもちゃんもおんなじ飛行機に乗ってたのかな?
ずっと握りしめていた携帯電話から、「まもちゃん」専用に登録している着信音が鳴った。 到着したんだ! 通話ボタンを押すと、近いようでまだほんの少し遠い彼の声がした。
「着いたよ。もうすぐ税関終わる。」
「もうすぐ会えるね! ねぇとっても人が多いよ。まもちゃーん、だれか有名人でも乗ってた?」
「……まさかターミナル間違えてないよな? 第二ターミナルだぞ?」
「え!! うそ! 間違えちゃった! どうしよう。」
「やっぱり第一にいるのか。オレがそっちに行くよ。うさ、ひとりで来たのか?」
サイアク! 1秒でも早くまもちゃんに会いたくて急いで来たのに、ターミナルを間違うなんて!
急いで彼に指示された待ち合わせ場所を探しながら、いまさらだけど携帯の着信履歴が沢山溜まっている事に気がついた。
ーーそういえば美奈Pたちに今夜まもちゃんが帰ってくることをまだ話していなかったわ。
みんなから何通もメッセージが来ているのは、なんだろう? 何か急な用事でもあったのかな?
まもちゃんが指定した「ビジターカウンター」は、電車の駅の近くということもあってすぐに見つけることができた。さすがまもちゃん。不本意ながら昨夜から浮き足立ってぼんやりしていたことは認めるけれど、そんなあたしでもすぐたどり着ける場所にしてくれたのかも。
「返信遅れてごめんね。いま空港に来てるの。まもちゃんが今日帰ってくるんだって!」
美奈Pたちに返信を打ちこみつつ、チラチラとカウンター前の自動扉に目を向ける。きっと彼はあの扉から入ってくるはずだから。そう思うとますます落ち着かない。
第二ターミナルからの電車が到着したらしく、スーツケースを転がした人たちがぞろぞろと入ってきた。あの中にまもちゃんはいる?
扉が開くたびに顔を上げて、なんだ違うのかと落胆し、その先にまだ誰か入ってこないかと覗き込む。そんな事をくり返すだけでも、ものすごく時間が経ってる気がする。もう、待ちきれないよ!
その時ーー。
「うさ」
不意に背後から包み込まれ、制服越しに少し低いあの声が、胸の底まで響いてきた。
「まもちゃん!!」
「うさ、ただいま」
「うわーん! こっちから出てくると思った!」
「ふふ、そっちはモノレール。バスで来たんだよ。その方が早かったから。」
振り返ると、夢にまでみたまもちゃん!
本物の、生身の、生きてるまもちゃんがいる。
あらためて正面からぎゅうっと抱きしめた。2人とも持っていた鞄もスーツケースも放り出して、一生分のハグを取り戻すかのように強く、優しく。周りの目なんて、気にする余裕すらなかった。
「会いたかった」
「まもちゃん! あたしも。」
2人とも、泣きそうなくらい全身が熱かった。お互いの顔を見たいのに、そのためにいちど身体を離すことさえも惜しい。
愛しい人に触れられることが、こんなにも幸せなことだったなんて。
*************
長い長い抱擁の後、ようやく顔を上げて2人で笑った。モニター越しに会ってはいたけれど、同じ空気の中で対面する顔は全然違って見える。
「まもちゃん、焼けた?」
「まさか。それに向こうの冬はとっても寒かったんだぞ。」
「うさは、少し太ったかな?」
「逆よ? 痩せたもん! まもちゃんのばか!」
「ふふ、ごめん。うさに触れたのがすごく久しぶりだったから。」
そう、彼を空港で見送ったあの日から、ずーーーっとこうしたかったの。彼の温もりをこの手で感じて、触れて。
再びぎゅーっと抱き合うと、また離れるのが惜しくなってしまう。一層強く抱きしめられた彼の腕の中で、懐かしい彼のにおいを胸いっぱいに吸い込んだ。
「まーもちゃん、おかえり。」
「ただいま。」
ーー遠くで黄色い歓声が聞こえる。さっきの到着ロビーから出てくる有名人だろうか?
やがてその歓声は地鳴りのように大きくなって、微かに地面を揺らす。そうしてゴゴゴという音ともに広がって……。
………
……
…
……あれ? ……歓声、なのかな?
「うさ」
耳元で、急にまもちゃんの声が硬くなった。
この感じ、久しぶりだけどあたしたちは何度も経験している。
あたしの神経も自ずと戦闘体制へと切り替わる。
「邪魔が入ったな。いけるか?」
「うん。まもちゃん、変身できる?」
「大丈夫だ。3つ数えたら後ろの柱の陰に飛び込むぞ。それと同時に変身だ。一緒にいこう。」
「わかった、いくよ?」
「1、2、」
「「3!!」」
変身したあたしたちは、手を取り合ってターミナルの人々の上に舞い降りた。
なんでだろう? あれから一度も2人で戦ったことも、変身したことすら無かったのに、まるで昨日も変わらず2人で戦っていたかのようにしっくりと馴染む。
身体の内側からポカポカとチカラがみなぎって、ひと蹴りで何処までも飛んでいけるような気がした。
だってあたしの隣には、あたしのパワーの源が。戦士になった時からずーっと、世界一カッコよくて銀河一大好きなタキシード仮面がいるんだもん!
せっかくの再会を邪魔されたというのに、何故だかとても懐かしくて嬉しかった。
パニックになった人たちでごった返すなか、待ち合わせのシンボルだった時計が倒された。
アイツが敵ね! 狙いを定めてパシンと光を放つと、振り向いた妖魔がグワっと大きな口をあけた。
「ここはみんなが待ち合わせをする場所よ! 大切な人との対面を邪魔するなんて許さない! 愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン! 月に代わっておしおきよ!!」
敵は煙幕を出しながら、騒然と人混みを飲み込もうとしている。タキシード仮面と二手に別れ、こちらに放たれた攻撃をかわすと煙の中枢めがけて狙いを定めた。
「うさ! 伏せろ!!」
彼の声と同時に、ものすごいエネルギー体が耳元をかすめた。
「分裂したぞ! 後ろ、気をつけろ!!」
ロビーの反対側で敵の攻撃をかわしながら、タキシード仮面が私の背後に光を放った。
私の後ろで爆音とともに敵が吹き飛ばされ、煙だけが残る。代わりにタキシードの背後で何かが揺れた。
「ーー!! まもちゃん後ろ!!」
「!!!」
全てがスローモーションのように見えた。
タキシード仮面の背後に移った敵は、今度は彼に向けて新たなエネルギーの塊を放った。
(避けて!!)と言いたいのに、彼は敢えてそこに留まって攻撃を受け止めようとしている。あたしを助けようとして立ち位置を変えた事で、自分が避ければロビーの人達まるごと吹き飛んじゃう場所になったからだ。
助けなきゃ! でもダメ!! 間に合わない……!!!!!
その時、あたり一面が花吹雪で覆われた。
ロビーの人達も、空港そのものさえも視界から消えて、気づけばあたし達はだだっ広い異次元空間に転送されていた。
タキシード仮面を射抜こうとしていた攻撃はギリギリのところでかわされ、異空間に吸い込まれていく。
「タキシード仮面!!」
駆け寄ろうとしたあたしのもとに、新たな一撃が向けられた。
敵の攻撃が強い閃光となってこちらに降りかかってきたのと同時に、見覚えのないグレーのマントがあたしの前に立ちはだかり、ぐいっと腕を掴んであたしを放り投げた。
「きゃっ!」
あたしの体は宙に浮いて、まるで計算されたみたいにタキシード仮面の胸の中に抱き止められた。
何が起きたのかワケが分からないけど、とにかくあたしはタキシード仮面にお姫様抱っこで受け止められてる……!?
「すまない! 助かった」
「噂のプリンセスですね! お目にかかれて光栄。」
グレーのマントはそう言い残して一体目の敵に向かって行った。
「ーー!! あ… あの人……!!!」
「ああ、彼らだ。向こうで合流したんだ。」
「ちょっと! やり方が荒いんじゃないの!?」
「うるせー、ーーっ間に合わなかっただろっ!!」
2人の騎士が口論しながら一体の敵を挟み込み、赤茶色の髪の大柄な方の騎士がバシンと一振り斬りつけた。
斬られた敵の飛沫は霧状になり、煙幕となって周囲を眩ます。
「だから! やり方が!!」
もう1人の騎士の声とともに、2人の姿は煙幕の中に消えていく。
そこへ間髪入れず、ブロンドで短髪の騎士が降り立ち、一閃して煙幕を振り払う。
煙幕が吹き飛ばされると、先ほどの2人が両サイドから敵を押さえ込んでいるシルエットが現れた。
「ドスっ」と鈍い音が響き、敵から放出されていた強いエネルギーの風が止む。
徐々に鮮明になってくる視界の先で、取り押さえられた敵が4人目の銀髪の騎士によって真ん中から貫かれ、ザラザラと砂のように崩れていくところだった。
「セーラームーン! こっちだ! もう一体!」
呆気に取られているあたしの手を引いて、タキシード仮面がもう一体の敵の方に向かう。
片割れを失った直後のそれはヨロヨロと方向感覚を失い彷徨っていた。
「いっきに倒すぞ! キミは空港の人達を!」
「うん! わかった!」
何が何だか分からないけど、とにかく今はあと一体の敵を倒して空港の人たちを助けなくては!
「タキシード・ラ・スモーキング・ボンバー!!」
タキシード仮面が二体目の敵を粉砕するのと同時に、あたしはロッドを振りかざす。
いつの間にか異次元空間は解除され、あたしのロッドから放たれた光は空港の人々を元に戻していく。
光の粉があたり一面に降り注ぎ、やがて何事もなかったかのように元どおりの、さっきの空港の景色が戻ってきた。
ずっと握りしめていた携帯電話から、「まもちゃん」専用に登録している着信音が鳴った。 到着したんだ! 通話ボタンを押すと、近いようでまだほんの少し遠い彼の声がした。
「着いたよ。もうすぐ税関終わる。」
「もうすぐ会えるね! ねぇとっても人が多いよ。まもちゃーん、だれか有名人でも乗ってた?」
「……まさかターミナル間違えてないよな? 第二ターミナルだぞ?」
「え!! うそ! 間違えちゃった! どうしよう。」
「やっぱり第一にいるのか。オレがそっちに行くよ。うさ、ひとりで来たのか?」
サイアク! 1秒でも早くまもちゃんに会いたくて急いで来たのに、ターミナルを間違うなんて!
急いで彼に指示された待ち合わせ場所を探しながら、いまさらだけど携帯の着信履歴が沢山溜まっている事に気がついた。
ーーそういえば美奈Pたちに今夜まもちゃんが帰ってくることをまだ話していなかったわ。
みんなから何通もメッセージが来ているのは、なんだろう? 何か急な用事でもあったのかな?
まもちゃんが指定した「ビジターカウンター」は、電車の駅の近くということもあってすぐに見つけることができた。さすがまもちゃん。不本意ながら昨夜から浮き足立ってぼんやりしていたことは認めるけれど、そんなあたしでもすぐたどり着ける場所にしてくれたのかも。
「返信遅れてごめんね。いま空港に来てるの。まもちゃんが今日帰ってくるんだって!」
美奈Pたちに返信を打ちこみつつ、チラチラとカウンター前の自動扉に目を向ける。きっと彼はあの扉から入ってくるはずだから。そう思うとますます落ち着かない。
第二ターミナルからの電車が到着したらしく、スーツケースを転がした人たちがぞろぞろと入ってきた。あの中にまもちゃんはいる?
扉が開くたびに顔を上げて、なんだ違うのかと落胆し、その先にまだ誰か入ってこないかと覗き込む。そんな事をくり返すだけでも、ものすごく時間が経ってる気がする。もう、待ちきれないよ!
その時ーー。
「うさ」
不意に背後から包み込まれ、制服越しに少し低いあの声が、胸の底まで響いてきた。
「まもちゃん!!」
「うさ、ただいま」
「うわーん! こっちから出てくると思った!」
「ふふ、そっちはモノレール。バスで来たんだよ。その方が早かったから。」
振り返ると、夢にまでみたまもちゃん!
本物の、生身の、生きてるまもちゃんがいる。
あらためて正面からぎゅうっと抱きしめた。2人とも持っていた鞄もスーツケースも放り出して、一生分のハグを取り戻すかのように強く、優しく。周りの目なんて、気にする余裕すらなかった。
「会いたかった」
「まもちゃん! あたしも。」
2人とも、泣きそうなくらい全身が熱かった。お互いの顔を見たいのに、そのためにいちど身体を離すことさえも惜しい。
愛しい人に触れられることが、こんなにも幸せなことだったなんて。
*************
長い長い抱擁の後、ようやく顔を上げて2人で笑った。モニター越しに会ってはいたけれど、同じ空気の中で対面する顔は全然違って見える。
「まもちゃん、焼けた?」
「まさか。それに向こうの冬はとっても寒かったんだぞ。」
「うさは、少し太ったかな?」
「逆よ? 痩せたもん! まもちゃんのばか!」
「ふふ、ごめん。うさに触れたのがすごく久しぶりだったから。」
そう、彼を空港で見送ったあの日から、ずーーーっとこうしたかったの。彼の温もりをこの手で感じて、触れて。
再びぎゅーっと抱き合うと、また離れるのが惜しくなってしまう。一層強く抱きしめられた彼の腕の中で、懐かしい彼のにおいを胸いっぱいに吸い込んだ。
「まーもちゃん、おかえり。」
「ただいま。」
ーー遠くで黄色い歓声が聞こえる。さっきの到着ロビーから出てくる有名人だろうか?
やがてその歓声は地鳴りのように大きくなって、微かに地面を揺らす。そうしてゴゴゴという音ともに広がって……。
………
……
…
……あれ? ……歓声、なのかな?
「うさ」
耳元で、急にまもちゃんの声が硬くなった。
この感じ、久しぶりだけどあたしたちは何度も経験している。
あたしの神経も自ずと戦闘体制へと切り替わる。
「邪魔が入ったな。いけるか?」
「うん。まもちゃん、変身できる?」
「大丈夫だ。3つ数えたら後ろの柱の陰に飛び込むぞ。それと同時に変身だ。一緒にいこう。」
「わかった、いくよ?」
「1、2、」
「「3!!」」
変身したあたしたちは、手を取り合ってターミナルの人々の上に舞い降りた。
なんでだろう? あれから一度も2人で戦ったことも、変身したことすら無かったのに、まるで昨日も変わらず2人で戦っていたかのようにしっくりと馴染む。
身体の内側からポカポカとチカラがみなぎって、ひと蹴りで何処までも飛んでいけるような気がした。
だってあたしの隣には、あたしのパワーの源が。戦士になった時からずーっと、世界一カッコよくて銀河一大好きなタキシード仮面がいるんだもん!
せっかくの再会を邪魔されたというのに、何故だかとても懐かしくて嬉しかった。
パニックになった人たちでごった返すなか、待ち合わせのシンボルだった時計が倒された。
アイツが敵ね! 狙いを定めてパシンと光を放つと、振り向いた妖魔がグワっと大きな口をあけた。
「ここはみんなが待ち合わせをする場所よ! 大切な人との対面を邪魔するなんて許さない! 愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン! 月に代わっておしおきよ!!」
敵は煙幕を出しながら、騒然と人混みを飲み込もうとしている。タキシード仮面と二手に別れ、こちらに放たれた攻撃をかわすと煙の中枢めがけて狙いを定めた。
「うさ! 伏せろ!!」
彼の声と同時に、ものすごいエネルギー体が耳元をかすめた。
「分裂したぞ! 後ろ、気をつけろ!!」
ロビーの反対側で敵の攻撃をかわしながら、タキシード仮面が私の背後に光を放った。
私の後ろで爆音とともに敵が吹き飛ばされ、煙だけが残る。代わりにタキシードの背後で何かが揺れた。
「ーー!! まもちゃん後ろ!!」
「!!!」
全てがスローモーションのように見えた。
タキシード仮面の背後に移った敵は、今度は彼に向けて新たなエネルギーの塊を放った。
(避けて!!)と言いたいのに、彼は敢えてそこに留まって攻撃を受け止めようとしている。あたしを助けようとして立ち位置を変えた事で、自分が避ければロビーの人達まるごと吹き飛んじゃう場所になったからだ。
助けなきゃ! でもダメ!! 間に合わない……!!!!!
その時、あたり一面が花吹雪で覆われた。
ロビーの人達も、空港そのものさえも視界から消えて、気づけばあたし達はだだっ広い異次元空間に転送されていた。
タキシード仮面を射抜こうとしていた攻撃はギリギリのところでかわされ、異空間に吸い込まれていく。
「タキシード仮面!!」
駆け寄ろうとしたあたしのもとに、新たな一撃が向けられた。
敵の攻撃が強い閃光となってこちらに降りかかってきたのと同時に、見覚えのないグレーのマントがあたしの前に立ちはだかり、ぐいっと腕を掴んであたしを放り投げた。
「きゃっ!」
あたしの体は宙に浮いて、まるで計算されたみたいにタキシード仮面の胸の中に抱き止められた。
何が起きたのかワケが分からないけど、とにかくあたしはタキシード仮面にお姫様抱っこで受け止められてる……!?
「すまない! 助かった」
「噂のプリンセスですね! お目にかかれて光栄。」
グレーのマントはそう言い残して一体目の敵に向かって行った。
「ーー!! あ… あの人……!!!」
「ああ、彼らだ。向こうで合流したんだ。」
「ちょっと! やり方が荒いんじゃないの!?」
「うるせー、ーーっ間に合わなかっただろっ!!」
2人の騎士が口論しながら一体の敵を挟み込み、赤茶色の髪の大柄な方の騎士がバシンと一振り斬りつけた。
斬られた敵の飛沫は霧状になり、煙幕となって周囲を眩ます。
「だから! やり方が!!」
もう1人の騎士の声とともに、2人の姿は煙幕の中に消えていく。
そこへ間髪入れず、ブロンドで短髪の騎士が降り立ち、一閃して煙幕を振り払う。
煙幕が吹き飛ばされると、先ほどの2人が両サイドから敵を押さえ込んでいるシルエットが現れた。
「ドスっ」と鈍い音が響き、敵から放出されていた強いエネルギーの風が止む。
徐々に鮮明になってくる視界の先で、取り押さえられた敵が4人目の銀髪の騎士によって真ん中から貫かれ、ザラザラと砂のように崩れていくところだった。
「セーラームーン! こっちだ! もう一体!」
呆気に取られているあたしの手を引いて、タキシード仮面がもう一体の敵の方に向かう。
片割れを失った直後のそれはヨロヨロと方向感覚を失い彷徨っていた。
「いっきに倒すぞ! キミは空港の人達を!」
「うん! わかった!」
何が何だか分からないけど、とにかく今はあと一体の敵を倒して空港の人たちを助けなくては!
「タキシード・ラ・スモーキング・ボンバー!!」
タキシード仮面が二体目の敵を粉砕するのと同時に、あたしはロッドを振りかざす。
いつの間にか異次元空間は解除され、あたしのロッドから放たれた光は空港の人々を元に戻していく。
光の粉があたり一面に降り注ぎ、やがて何事もなかったかのように元どおりの、さっきの空港の景色が戻ってきた。