アオキさんの一人称
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『はい、はい…そうですねそれに関しまして自分は…』
『仕事上がりですか?お疲れ様です。…自分はトップに呼ばれてますので……』
『今度宝食堂で新メニューが出るらしいんです。それで女将さんが自分に試食して欲しいと頼んできまして…』
仕事のお昼休憩で、ずっと聞いて欲しいと思っていた事を同僚に話してみることにした。
「アオキさんの一人称って…"自分"で固定なのかな?」
一緒にご飯を食べていた同僚がぽかんとした顔で、パスタを食べようとしている体勢でこちらを見ていた。
「はぁ?なに急に…」
「急じゃないよ!最近気になってることランキング1位なんだよ?!
普通に考えて今まで生きてきて、自分のこと話す時に自分なんて使う人いないでしょ!」
「いやしょうもな…なにそのランキング
それに関しては私より、あんたの方が分かるでしょ付き合ってんだから。」
心底どうでもいいと言った風に、モグモグとパスタを口に運ぶ同僚を恨めしげに見てそれはそうなんだけど…と言葉を濁す。
「仕事の時とそうじゃない時とで分けてるのかなって思って、出かける時とかは密かに素の喋り方を期待してるのに、
あの人全然仕事の時と変わらないんだよねぇ…」
あ、でもちゃんと甘えてくれたりとか、私に笑いかけてくれるんだよねぇ、と両手を頬に添えてにやにやとしながら
聞きたかなかったことをボロボロと零すハヅキに、冷めた目で同僚は睨む。
「ちょっと……ただの惚気だったら私戻るけど」
「待って!待って!ほんとに悩んでるんだから!!!」
「悩むほどのことでもないでしょうに…大体基本男の人なんて一人称なんか在り来りに"俺"でしょ?」
「うー、かなぁ…?それでもなんで私といる時にも変わんないんだろう?」
「あんたと一緒だと心が休まらないからじゃない?」
「なんでさっきからちょいちょい辛辣なの?!」
「内容を振り返れ!真剣な顔して言ったと思ったら、一人称が気になりますって言われた私の気持ちも考えなさいよ!」
ギャーギャーと食堂で騒いだせいか、いつの間にか周りの視線を集めていることに気づき
お互い冷静になって、静かに話し始める。
「ゔぅん…まぁ、そんなに気になるなら本人に直接聞いてみるとかしたら?ここでとやかく言っててもしょうがないでしょ」
「えぇぇ…うーん、そうだねぇ」
(とはいえ、いきなりこんなこと聞かれてびっくりするよねぇ…)
そうは思いつつも、気になってしょうがないハヅキは早速今度のデートの時に頑張るぞ!と決意したのだった。
ピンポーン、ガチャ
「アオキさん、おはようございまーす」
「おはようございます。どうぞ上がってください。」
「はい、お邪魔します!」
デートの何日か前に「どこに行きたいですか?」と聞かれて、ハヅキは迷わずに「アオキさんのお家に行きたいです!」と答えた。
当の本人からしたら面白いものもないのにとなったが、続けて
「お惣菜とかお菓子とか持っていきますから、ポケモンたちと一緒にゆっくり過ごしましょう?」
と提案されてたまには悪くないかもしれないと思いその申し入れを受け入れた。
「荷物重かったでしょう、自分が持ちますよ」
「いえいえ!せっかく招き入れてくださったので、これはせめてものお礼です!」
「けど、飲み物まで入ってますし重いですよね。貸してください」
そう言うと手に持っていたスーパーの袋をハヅキから取り上げて、リビングまで持っていく。
慌ててアオキを追いかけてリビングに入ると、アオキの手持ちたちがお出迎えしてくれた。
「あ、みんなもおはよう〜!お邪魔してます!」
歓迎するように、各々鳴いて反応するポケモン達。
それを微笑ましく見ながら、再び今日の目的を思い出す。
①自宅というテリトリー
②いつも一緒にいる手持ちたちとの触れ合い
③美味しいご飯、お菓子、お酒
これだけ気を緩める状態なら素の話し方をしてくれるのでは??と端的に言えばこう言う作戦である。
もしこれでも、でなければ最終手段として本人に聞くという手でいこう!と意気込んだハヅキの考えなど露知らず、
アオキはスーパーの袋から商品を出していくのであった。
「ちょっと早いですけど、お疲れ様でーす」
「はい、お疲れ様です。」
「えへへ、アオキさんと一緒に宅飲みだぁ」
「…楽しそうですね」
「そりゃあ、大好きな人と一緒にいられて嬉しいですからね!あ、言っときますけどまだ酔ってませんよ?これは素面ですからね!」
「…ありがとうございます。」
お昼前からお酒を開けて、乾杯する2人。
その周りではアオキのポケモン達も各々、ポケモンフードやおやつを食べていた。
ハヅキの膝上にはオドリドリがちょこんと座っていて、アオキの脇にはムクホークがフードを食べつつ2人の様子を見守っていた。
「自分も、ハヅキさんと一緒で嬉しいですよ…」
「ン"ン"…!!」
「だ、大丈夫ですか?」
「す、すいません…ちょっと発作が」
(ふ、ふいうちはずるいよ〜!!!)
お酒を飲んでいる時にそんな事を軽く笑みを浮かべながら言われたもんだから、悶絶して思わず噎せてしまった。
普通に考えて中年の男性に向けていう言葉ではないのは重々承知なのだが、いつも外で会う時のような髪型では無いのもあって
アオキはいつもより幼く見えて可愛いと思ってしまった。
(い、いけない、落ち着いてハヅキ…アオキさんの言葉を一言一句漏らさず聞き逃さないのよ……)
「え、えっとそういえば、アオキさんは休日って何してるんですか?」
「…自分は、基本ほとんど寝てることが多いですね。流石に飯の時は起きて食いますけど、疲れを取るために布団に入って休んでます。」
「oh……」
「あとはこうやって手持ちの世話とか、ハヅキさんと出かけたりとかですかね。」
ムクホークを撫でると、くるるると鳴きながらアオキにすり寄る。
「んー…今更ですけど、私今まで結構色んなところに連れ回しちゃってますから、気が休まらないのでは……」
実は嫌々出かけてたのでは?と罪悪感に駆られるが、アオキはそれに首を振って否定する。
「いえ、そんなことないですよ。ハヅキさんと出かける時も楽しいです、あなたは何時でも元気で明るくて…
何処へ行ってもはしゃいで、楽しんでいて見ていると自分も元気を貰えるんです。」
(アオキさん、いつもよりも話し方や雰囲気が柔らかい気がする。作戦としては上々なのでは……?)
「そ、そうですか?えへへ、元気になってくれてるなら良かった…ねー?」
オドリドリに同意を求めると、ぴゅーい♪と嬉しそうに鳴いた。
「じゃあ、アオキさんは一応私には気を許してくれてるってことですよね?」
「一応だなんて、とんでもないですだって僕は……あっ」
「え?」
しまったと言った顔で固まるアオキと聞きなれない単語に、同じく固まるハヅキ。
暫く沈黙が続いたが、空気を読んだのか読んでないのかカラミンゴがア"ァ"??と鳴いて首をブンブン振り始めたので
それにお互いハッとなり、アオキは口を手で押えて顔を背けた。
「えっと、アオキさん?」
「す、すいません…出さないように気をつけていたんですが、つい…」
「自分のこと僕っていうんですね、アオキさん。」
「……はい、この年で僕って使ってるのを知られるのがなんだか恥ずかしくて…
仕事の時はいつも気を張ってるので、大丈夫なんですが。」
「じゃあ私といる時にも自分って使ってたのは?」
「ハヅキさんに聞かれて引かれないかと心配で……」
(え………何この可愛い生き物……)
少し照れた様子で言うアオキに、キュンとして思わず胸を抑えてしまう。
引くなんてとんでもない。逆にときめいたぐらいだ。
「ひ、引きませんよ!もっと聞きたいです、アオキさんの一人称!」
「え、そ、そうですか?」
「だって私だけが聞けるんですよ?それってすごく特別な感じがして好きだなぁ…だから、私の前では自然体でいてくださいね?」
ね?とアオキの肩に凭れるようにして、顔を見上げる。
うっ…とたじろいでどうしたもんかと、視線をキョロキョロさせるが
周りでいつの間にか様子を見ていたポケモンたちも、アオキの頭や腕、足を啄いて背中を押すように促していた。
(オドリドリはフレーフレーと応援していた)
「いてて、わ、わかったからみんな止めてくれ。」
「あはは、他の子達アオキさんに世話焼いてるんですかね?」
「さぁ…でも、とりあえず直ぐには無理だとは思いますけど、なるべく貴女の…ハヅキさんの前では"僕"でいられるようにしたいです。」
先は長くなりそうですが…と苦笑いしながら言うアオキにハヅキもいつでも待ちますよ!と返した。
「アオキさん、大好きですよ」
「僕も…好きです」
そして、いつの日か2人から敬語がなくなり自然体で会話ができるようになるのは、アオキのポケモンたちのみぞ知る。
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