まずは交換日記から始めましょう【前編】
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奇跡的にもピーニャくんはノートを捨てず中身を書いてくれて、気付けば1ヶ月もやり取りをしていた。書くことなんてほとんど学校の中での内容ばっかりだったけど、何気ない事でも今日はこんなことがあったんだよって伝えたくて1ページ余すこと無く文字を綴る。
とても楽しかった。
ピーニャくんの書いた日記は面白くて、生真面目な人柄が出ている字も文章も彼らしくてどんな人なのかを知れば知るほど、益々ピーニャくんのことを好きになっていく自分がいて。
だから、交流する度に私は本当の名前を伝えずにずっと“ナナシ”のままでいいのかと思い悩むことが増えてきた。正直に名乗れなかったとはいえ、日記を重ねていくにつれて本名を隠していることに罪悪感を持ち始めていたのだ。
(いつか正直に言わないといけないよね)
そう思っていた私に転機が訪れたのはあの日の食堂の会話。まさか後ろにいるとは思わなくて、ピーニャくんの声が聞こえてきた時には血の気が引いて食欲も無くなった。
『オマエ…顔も見た事ないやつと交換日記してるの?』
『名前とか性別とか学年は?それくらいは書いてるんじゃないの?』
『だってさぁ、気になるじゃん!ピーニャだってそうじゃないのかよ?』
関係の無いお友達だってそう思うくらいなんだし、当事者のピーニャくんが気にならない訳ないのに「本人が言うつもりがないならこっちからは聞くことはないよ」とハッキリ答えていた。
……今なら伝えられるだろうか?私がその本人だって。
そう思ったけど「案外身近にいたりして!」と言う言葉にドキッとして固まった。ダメだこんな人が沢山いるところで話しかける勇気なんてない。先ずは日記で伝えよう。ようし!と意気込んでいた私にとって大事件が起きてしまう。
*
(どうやって切り出して書いていけばいいかな……?いきなり本名の話からしたら変だろうし、悩むなぁ)
朝。そう考え事をしながらエントランスに入ると、相変わらず元気よく挨拶をしているピーニャくんの姿が。そして、私も相変わらず小さい声で挨拶をする。
そこまではいつも通りだった。
ドンッ!!!
「キャッ!!」「うわぁ!」
幼い男の子の生徒が友達であろう子と追いかけっこをしながら入ってきて、前を見ずに走っていたせいで前を歩いてた私とぶつかってしまった。私も突然の衝撃に耐えきれず、受身を取れないままに顔を強かぶつけてしまいすごくヒリヒリする。
朝の登校時間だったから、周りには沢山人もいるわけで私たちは注目の的だっただろう。恥ずかしいのと痛いのとでなかなか起き上がれなかった。
男の子も思い切り尻もちをついたせいで、泣き喚く始末。
「うわぁぁん!!痛いよぉ!!」
(少年……私も痛いよ……色々と)
「大丈夫?」
その声に思わず固まる。ピーニャくんだ。一向に顔をあげない私を心配して声をかけてくれたのだろう。手をさしのべられてしまっては動かない訳にも行かず、なるべく顔を見ずに手を掴んで起き上がる。
(男の子の方は周りの生徒が宥めたみたいでもう泣いてはいなかった。)
「勢いよく倒れたけど怪我してない感じ?」
「あ、は、はい…」
「後々悪くなる時もあるから、早めに保健室に行った方がいいっしょ?よかったら付き添おうか?」
「い、いえ!大丈夫なので!!」
「そう?無理したらダメだからね」
「はい!もちろんです!!」
早くこの場から去るべく、会話を終わらせて立ち上がった。
膝をパンパンと払っていたら、「えっ…」というピーニャくんの声が耳に入る。その手には床に中身をぶちまけた鞄から出ていた“例のノート”が握られていた。
一瞬の内ににぶわっと冷汗が出て、ピーニャくんの手からノートを引ったくり急いでその場から逃げた。
とても楽しかった。
ピーニャくんの書いた日記は面白くて、生真面目な人柄が出ている字も文章も彼らしくてどんな人なのかを知れば知るほど、益々ピーニャくんのことを好きになっていく自分がいて。
だから、交流する度に私は本当の名前を伝えずにずっと“ナナシ”のままでいいのかと思い悩むことが増えてきた。正直に名乗れなかったとはいえ、日記を重ねていくにつれて本名を隠していることに罪悪感を持ち始めていたのだ。
(いつか正直に言わないといけないよね)
そう思っていた私に転機が訪れたのはあの日の食堂の会話。まさか後ろにいるとは思わなくて、ピーニャくんの声が聞こえてきた時には血の気が引いて食欲も無くなった。
『オマエ…顔も見た事ないやつと交換日記してるの?』
『名前とか性別とか学年は?それくらいは書いてるんじゃないの?』
『だってさぁ、気になるじゃん!ピーニャだってそうじゃないのかよ?』
関係の無いお友達だってそう思うくらいなんだし、当事者のピーニャくんが気にならない訳ないのに「本人が言うつもりがないならこっちからは聞くことはないよ」とハッキリ答えていた。
……今なら伝えられるだろうか?私がその本人だって。
そう思ったけど「案外身近にいたりして!」と言う言葉にドキッとして固まった。ダメだこんな人が沢山いるところで話しかける勇気なんてない。先ずは日記で伝えよう。ようし!と意気込んでいた私にとって大事件が起きてしまう。
*
(どうやって切り出して書いていけばいいかな……?いきなり本名の話からしたら変だろうし、悩むなぁ)
朝。そう考え事をしながらエントランスに入ると、相変わらず元気よく挨拶をしているピーニャくんの姿が。そして、私も相変わらず小さい声で挨拶をする。
そこまではいつも通りだった。
ドンッ!!!
「キャッ!!」「うわぁ!」
幼い男の子の生徒が友達であろう子と追いかけっこをしながら入ってきて、前を見ずに走っていたせいで前を歩いてた私とぶつかってしまった。私も突然の衝撃に耐えきれず、受身を取れないままに顔を強かぶつけてしまいすごくヒリヒリする。
朝の登校時間だったから、周りには沢山人もいるわけで私たちは注目の的だっただろう。恥ずかしいのと痛いのとでなかなか起き上がれなかった。
男の子も思い切り尻もちをついたせいで、泣き喚く始末。
「うわぁぁん!!痛いよぉ!!」
(少年……私も痛いよ……色々と)
「大丈夫?」
その声に思わず固まる。ピーニャくんだ。一向に顔をあげない私を心配して声をかけてくれたのだろう。手をさしのべられてしまっては動かない訳にも行かず、なるべく顔を見ずに手を掴んで起き上がる。
(男の子の方は周りの生徒が宥めたみたいでもう泣いてはいなかった。)
「勢いよく倒れたけど怪我してない感じ?」
「あ、は、はい…」
「後々悪くなる時もあるから、早めに保健室に行った方がいいっしょ?よかったら付き添おうか?」
「い、いえ!大丈夫なので!!」
「そう?無理したらダメだからね」
「はい!もちろんです!!」
早くこの場から去るべく、会話を終わらせて立ち上がった。
膝をパンパンと払っていたら、「えっ…」というピーニャくんの声が耳に入る。その手には床に中身をぶちまけた鞄から出ていた“例のノート”が握られていた。
一瞬の内ににぶわっと冷汗が出て、ピーニャくんの手からノートを引ったくり急いでその場から逃げた。