まずは交換日記から始めましょう【前編】
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『お返事書いてくれるとは思ってなくて、とても嬉しいです!ありがとうございます。
今日はこの前参加した美術の授業の話をしようかなと思います。その時は特別講師としてなんとジムリーダーのコルサさんが来てとても驚きました。ハッサク先生とは旧知の仲だそうで…』
『ハッサク先生と言えばボクの仲間が最近美術室に行って、色々教えて貰っているみたいなんだ。今度他の生徒と一緒に、風景画を描きにパルデア十景を巡るらしいよ。ナナシくんは見たことある?ボクは…』
『ピーニャくんはサンドウィッチに絶対に入れる具材はありますか?私はハムが好きなのでいつも入れてます。ただ、この前家庭科の授業でサンドウィッチを作ることになった時、お豆腐とハムを一緒に挟んで食べてみたんだけど全然合わなくてなんとも言えない味になっちゃいました…』
『そういう失敗ってたまにやっちゃうよね、気持ち分かるよ。ボクもこの間ヘッドホンとパソコンが接続してると思って音楽流したら、思いのほか爆音でお昼寝してたポケモン達が飛び起きちゃったんだよね。あの時は可哀想なことしたなぁ…』
一日一日、代わる代わるお互いにページの一番下までびっしりと日記を書いて交換していった。ナナシくんは毎回書いたとわかるようにノートを違う紙袋に入れて僕の部屋のドアノブにかけていき、それを受け取ったボクは書いた後しおりを挟んでまたドアノブにかける。
それを繰り返して気づけばひと月過ぎていてノートの数は3冊目に入っていた。
向こうとのやり取りはとても心地よくて、日記を読んで書くことが一日の楽しみになっている自分がいた。ふとした何気ないことや、面白いこと、楽しいことをメモに書いて日記のネタにしていたらそれをスター団の面々に気づかれてしまい、それをお昼の時間に問いただされた。
「ココ最近なんか書いてるなとは思ったけど、まさかの交換日記…」
「でもなんだかいいね、そういうやり取り。素敵だなと私は思うなぁ」
「相手はどんな奴なの?」
「どんなって…そうだなぁ、日記を読んでいて思ったのは礼儀正しくて落ち着いた印象かな?」
「いや、見た目の話だったんだけど…」
オルティガからの質問に一瞬固まったが、1度も会ったことは無いことを伝える。するとみんな「会ったことないの?」みたいな驚いた顔をしていた。
「オマエ…顔も見た事ないやつと交換日記してるの?」
「そう、なるね?」
「名前とか性別とか学年は?それくらいは書いてるんじゃないの?」
「同じ学年みたいだけど、クラスとか学科は知らないなぁ」
「えぇ?なんか他にヒントになりそうなこととか書いてないの?」
「オルティガ殿、あまり詮索するのは良くないでござるよ」
「だってさぁ、気になるじゃん!ピーニャだってそうじゃないのかよ?」
シュウメイの窘める声を他所にオルティガはボクに意見を求めてきた。気になったことは確かに何回かある。だけど本人が素性を明かしたくないと思っているなら、その時までボクから会ってみたいだとかそんなことを言うつもりはない。
そう答えると、肩を竦められた。
「なるほどなぁ、まぁピーニャらしいと言えばそうなんだけど」
「その子といつか会えるいいね!」
「案外身近にいたりしてな」
「あはは、だったらいいけど」
*
食堂で談笑している声をバックに聞きながら、私は冷や汗が止まらなかった。
何故ならそこで話題になっている“ナナシ”こそ、私の事だったからだ。
ナナシは私の本名では無い。
本当はハヅキという名前があるのだが、どうして偽名でやり取りをしているのかと言うと単純に名乗る勇気がなかったのだ。
手紙に書いた“面と向かって話すのが恥ずかしい”というのも理由の一つではあるが、どちらかというと緊張と照れで話せないというのが正しいのかもしれない。
何故なら、私はピーニャくんのことを恋愛対象として好きだからだ。
元々陰キャでコミュ障な性格が災いして友達と呼べる人は1人もおらず、ボッチで学校生活を送る日々。ただ、幸いにもいじめっ子達のターゲットになることはなかったため(多分存在感がなかったからかもしれないが)何事ももなく過ごせることが出来た。
ピーニャくんのことは当時、真面目で校則に厳しくていつも不機嫌そうだな、ちょっと怖いなと思っていた。
今日はこの前参加した美術の授業の話をしようかなと思います。その時は特別講師としてなんとジムリーダーのコルサさんが来てとても驚きました。ハッサク先生とは旧知の仲だそうで…』
『ハッサク先生と言えばボクの仲間が最近美術室に行って、色々教えて貰っているみたいなんだ。今度他の生徒と一緒に、風景画を描きにパルデア十景を巡るらしいよ。ナナシくんは見たことある?ボクは…』
『ピーニャくんはサンドウィッチに絶対に入れる具材はありますか?私はハムが好きなのでいつも入れてます。ただ、この前家庭科の授業でサンドウィッチを作ることになった時、お豆腐とハムを一緒に挟んで食べてみたんだけど全然合わなくてなんとも言えない味になっちゃいました…』
『そういう失敗ってたまにやっちゃうよね、気持ち分かるよ。ボクもこの間ヘッドホンとパソコンが接続してると思って音楽流したら、思いのほか爆音でお昼寝してたポケモン達が飛び起きちゃったんだよね。あの時は可哀想なことしたなぁ…』
一日一日、代わる代わるお互いにページの一番下までびっしりと日記を書いて交換していった。ナナシくんは毎回書いたとわかるようにノートを違う紙袋に入れて僕の部屋のドアノブにかけていき、それを受け取ったボクは書いた後しおりを挟んでまたドアノブにかける。
それを繰り返して気づけばひと月過ぎていてノートの数は3冊目に入っていた。
向こうとのやり取りはとても心地よくて、日記を読んで書くことが一日の楽しみになっている自分がいた。ふとした何気ないことや、面白いこと、楽しいことをメモに書いて日記のネタにしていたらそれをスター団の面々に気づかれてしまい、それをお昼の時間に問いただされた。
「ココ最近なんか書いてるなとは思ったけど、まさかの交換日記…」
「でもなんだかいいね、そういうやり取り。素敵だなと私は思うなぁ」
「相手はどんな奴なの?」
「どんなって…そうだなぁ、日記を読んでいて思ったのは礼儀正しくて落ち着いた印象かな?」
「いや、見た目の話だったんだけど…」
オルティガからの質問に一瞬固まったが、1度も会ったことは無いことを伝える。するとみんな「会ったことないの?」みたいな驚いた顔をしていた。
「オマエ…顔も見た事ないやつと交換日記してるの?」
「そう、なるね?」
「名前とか性別とか学年は?それくらいは書いてるんじゃないの?」
「同じ学年みたいだけど、クラスとか学科は知らないなぁ」
「えぇ?なんか他にヒントになりそうなこととか書いてないの?」
「オルティガ殿、あまり詮索するのは良くないでござるよ」
「だってさぁ、気になるじゃん!ピーニャだってそうじゃないのかよ?」
シュウメイの窘める声を他所にオルティガはボクに意見を求めてきた。気になったことは確かに何回かある。だけど本人が素性を明かしたくないと思っているなら、その時までボクから会ってみたいだとかそんなことを言うつもりはない。
そう答えると、肩を竦められた。
「なるほどなぁ、まぁピーニャらしいと言えばそうなんだけど」
「その子といつか会えるいいね!」
「案外身近にいたりしてな」
「あはは、だったらいいけど」
*
食堂で談笑している声をバックに聞きながら、私は冷や汗が止まらなかった。
何故ならそこで話題になっている“ナナシ”こそ、私の事だったからだ。
ナナシは私の本名では無い。
本当はハヅキという名前があるのだが、どうして偽名でやり取りをしているのかと言うと単純に名乗る勇気がなかったのだ。
手紙に書いた“面と向かって話すのが恥ずかしい”というのも理由の一つではあるが、どちらかというと緊張と照れで話せないというのが正しいのかもしれない。
何故なら、私はピーニャくんのことを恋愛対象として好きだからだ。
元々陰キャでコミュ障な性格が災いして友達と呼べる人は1人もおらず、ボッチで学校生活を送る日々。ただ、幸いにもいじめっ子達のターゲットになることはなかったため(多分存在感がなかったからかもしれないが)何事ももなく過ごせることが出来た。
ピーニャくんのことは当時、真面目で校則に厳しくていつも不機嫌そうだな、ちょっと怖いなと思っていた。