暑がり彼女と寒がりアオキさん
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「……んん?」
すやすやと寝入っていたら、なんだか体が暑苦しい感じがした。
発熱しているというわけではなく、体の周りに熱が纏わりついているようなそんな感覚。
不快な熱に夢から醒めて原因の元を確認すると、自分のお腹に回っている2本の腕と背中に感じる大きな体。
「……アオキくん…」
「…………」
私が窘めるように名前をつぶやくが、当の本人は夢の世界に旅立っているようでピクリともしない。その呑気な姿に若干イラッとして、寝ているアオキくんの鼻を軽くつまんでいたずらしてやった。
「んご…」と間抜けな声を出す姿にふふんと鼻を鳴らして満足していると、パチッと目が開いた。
「あ、起きた」
「………ふぁにひてるんれすか?」
「ちょっとした仕返し」
「ふぁい?」
摘んだままだった手を払い「仕返しってなんですか?」と顔を顰めながらアオキくんが問う。
「あのねぇ、アオキくん…暑いの。寝る時に毎回毎回私を抱き枕にしないでくれない?」
そう、この男寝る度に気づけば私を抱きしめて眠っている。冬なら特に問題は無いけど、平熱が高いからか基本私は暑がりなのだ。
季節に関係なくアオキくんは私を抱きしめて寝るので例え好きな男だったとしても、正直な話やめて欲しい。
向こうは良くても私の睡眠の妨げにしかなってないのだから、勘弁して欲しいといつも口酸っぱく言う。
だけど、毎回そう言うとアオキくんは同じ回答しかしない。
「だってしょうがないじゃないですか。僕、寒がりなんで」
ほら言った。耳にタコができるくらい何回も聞いたわ。
だから私で暖を取るのを許せと?冗談じゃない。
開き直るアオキくんにムカついて、掛け布団を力いっぱい引いて追い出してやった。
季節は秋から冬へと向かっている時期だったので、アオキくんはひんやりした空気に「うわっ」と身震いした。
「ちょっと、寒いじゃないですか」
「この寒さに耐えたら少しは寒がりもマシになるんじゃない?」
「ふざけてないで布団に入れてくださいよ」
「いーやーでーすー」
「……………」
ちょっと暑いけどアオキくんを懲らしめるためなら我慢してやる。私の気持ちを味わってもらわないと。
むっとしたアオキくんは暫くじっと包まる私を見ていたが、布団ごと私に抱きついてきた。
「ぐえっ!くるしい……」
「布団に入れてくれるまでこのままの状態で寝ますよ」
「えぇ〜?!やだよ!離して!あつい!苦しいーー!!」
バタバタと足を動かして暴れるが離す様子は無い。というか暴れたせいで余計暑くなった。
「はぁ、はぁ…暑い……」
「馬鹿ですね、激しく動くからですよ」
「誰のせいだと思ってるのよ……!」
じろりと睨むが子供の喧嘩みたいなやり取りに、なんだか笑いが込み上げてきた。
でも、笑ったらまた馬鹿にされる気がして必死に堪えていたが、
プルプル震える私をみて泣いていると勘違いしたのか、「あ…す、すみません!ちょっと、やりすぎました」と離れて背中を摩ってくれた。
「くっ…ふふふ、ごめんごめん泣いてるんじゃないの。私たちいい歳してこんな時間に暴れてさ…なんか馬鹿みたいだなって思ったら笑えてきちゃって」
「はぁ…焦りました。でも、ハヅキさんも意地張るからですよ」
「うん、ごめんね。私もやりすぎたから」
はい、と布団を広げてアオキくんを招き入れると素早く入ってくる。
その姿にまた吹き出すと「笑わんでください」と唇を突き出して言った。
「あーあ、手足冷たくなってる」
「元々冷え症ですからね。地獄でしたよほんとに」
「でも私には丁度いいかも、ひんやりしてるから熱が逃げてくし」
「僕にとっても有難いです。はぁ、暖かい……」
向き合って手と足を絡める。お互いの温度が心地よくってうとうとしてきた。
微睡んでいると名前を呼ばれて顔を上げる。ちゅっと音を立てて唇に冷たい熱が触れた。
「…おやすみなさい」
「ん…おやすみ……」
そして、そんなに時間をかけずに再び私達は夢の中へと落ちていった。
秋めいていた空気はこれからだんだん冷たくなり、冬の訪れを知らせている。
寒がりな彼には酷な季節だけど、暑がりな私がいるから無事に厳しい寒さも越えられるだろう。
そう思うと抱き枕にされることも別に苦じゃないかな?と思えた。
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