非凡サラリーマンが人見知りで根暗なOLと付き合うまで
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好きということを認識してくれた。
それだけでも大きな一歩だ。
最初は自分より静かな人だなといった印象だった。
大人しくて人と関わることがあまりなくて、でも個人的には余計なお喋りをしないから仕事をするにはやりやすい人と思っていた。
そこから変わったきっかけは、食堂でたまたま斜め向かいの席にハヅキさんが座ったことだった。
持参したお弁当を食べるために髪の毛を纏めてから手を合わせて食べ始めた。
それを横目に黙々と飯を食べていたら、暫くして向こうも昼を食べ終わり食後にと買っておいたのであろう、プリンに手をつけようとしていた。
ひと匙小さく掬って、1口もぐもぐと食べた時ふにゃあと口元が緩んで笑った姿にドキッとした。
いつも長い前髪で見えにくい困り顔しか見たことない中で、あんな風に笑うのかと衝撃を受けたのを覚えている。
それから密かに気になる存在なっていた。
もっと近くで笑うところを見てみたい…が、ハヅキさんは自分だけじゃなく元々他人との交流が少ない。接点の薄い自分がどうすれば近づくことが出来るのかと考えあぐねていた矢先、ハヅキさんを観察する内に何やら面倒事に巻き込まれていることに気づいた。
「ねぇねぇ、今度合コンあるんだけどさ良かったらこない?メンツもいい人ばっかりなんだけど」
「え〜?!行きたぁい!!でもぉ、納期が迫ってる仕事が残ってるのよねえ〜」
「あ、それならほら!あの凄い地味な人……ハヅキさん、だっけ?あの人に頼めばいいわよ。頼んだらどんな仕事でも引き受けてくれるらしいよ?」
「へぇ〜すごい都合いい人じゃん?今度頼んじゃおうかなぁ〜?そしたら残業しなくて済むし〜」
一息入れようとコーヒーを作りに来たのだが…
耳障りな甲高い声が給湯室から聞こえてきて、思わず立ち止まって聞き耳を立ててしまった。
(あんなでかでかと…誰が聞いてるかもわからんのによく話せるな………しかし、これは使えるかもしれん。)
利用するようで申し訳なかったが、
結果的にハヅキさんの仕事環境が良くなることと、彼女に近づく口実ができるのではという下心が出た。
少しずつ周りの人への聞き取りや、スマホロトムで仕事を押し付けられているそのやり取りをこっそり録画。
ハヅキさんが作成した他人の書類を撮影しコツコツと証拠集めをしていった。
その途中で、たまたまハヅキさんが残業している場に出くわした。
偶然とはいえ2人っきりで会えたことと挨拶をしてくれたことに心が躍った。
労いの意味を込めてお茶を差し入れしたのだが困った顔でお茶を見つめているのに気づいて、
少し踏み込みすぎたかとお茶を回収したら手を掴まれて阻止された。
顔には出さなかったが触れた手の温もりに、心臓がバクバクと脈打ってうるさかった。
後日、上司に報告したらちゃんと動いてくれて、不正をしていた社員は全員処罰を受けた。
(トップまで出てくるとは思わなかったが)
その騒動の中、ひっそりと我関せずと言うふうに席に座った自分と目が合ったハヅキさんに、(もう大丈夫ですよ)と安心させるようにこっそり親指を立ててアピールしておいた。
そこからは嬉しいことにハヅキさんからお礼をしてくれる流れになり、宝食堂で飯を共にすることになった。
本人は奢るつもりだったようだが、自分にとって一緒に飯を食うだけでもご褒美だ。むしろ彼女の分も喜んで払うつもりだ。
入口の前で待つハヅキさんを見てなんだかデートの待ち合わせのようだなと舞い上がった。
(見慣れた店員くんに、『連れが〜』と言ったらなにやら察しのよい反応をされた。)
正直自分の中でこれ以降機会が無いと、はづきさんと関わることがまた無くなるのではと思い、必死こいて今後も会う予定を組むことに成功した。
ほっとしていたら、料理が運ばれてきてお互い飯に手をつける。その時にハヅキさんはいつものように髪をまとめた。
それを間近で見られただけでも、お釣りが来そうものなのにかけそばの湯気で曇ったメガネを取った姿を見て気が狂いそうになった。
(は?可愛すぎないか????)
メガネの度の影響で分かりずらかったが、くりくりの二重で可愛らしい顔をしている。
こんな姿誰にも見せたくないなんて、付き合ってる訳でもないのにそんなことを考えたりなんかして、正直食べた料理の味が分からなかった。
(そこから度々彼女の行動に、悶え苦しむことになるのを自分はまだ知らない。)
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