営業課所属の人見知りで根暗なOLと非凡のサラリーマンの話【後編】
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あれから営業課の方が忙しくなり、更にアオキさんはジムチャレンジや四天王の業務もあって今まで行っていた会話の練習は自然な流れで中断していた。
朝や昼にしていた挨拶もアオキさんが直接営業先へ行ったり出勤しても、直ぐに外へ出ていったりが多くてそれも無くなっていた。
彼の負担も減ったし、私も気を使わなくていいし暫くはこのままでいいかな……と思っていたけど、なんだか寂しいと感じてしまっている私がいた。
気を使うと言っても、私が気にしていたのはアオキさんのお財布事情と兼業で忙しいアオキさんの体調に対しての心配だったから
一緒に過ごす時間は、私にとって本当に居心地が良かった。
それに最後に会った時に教えて貰った話し方を頑張って実践してみたら、顔を上げて話すことが出来るようになったのだ。
緊張のせいで詰まったりすることはまだあるけど、周りの人からは「最近雰囲気が明るくなりましたね」という風に言われるようになったし、少しは変われたんだと嬉しかった。
アオキさんにまた会った時はお礼を言いたいな。そう思いつつも自分からメッセージを送る勇気はなかった。
「ハヅキさん、この書類任せてもいいかな?」
「は、はい、わかり、ました!」
「期限はまだ時間あるし、急ぐことないからね」
「は、い」
上司から頼まれた仕事をデスクへ持っていき、内容を確認する。繁忙期だった営業課も落ち着いてきて、今日は週末。みんな定時になると、上がって行ったが私はある程度仕事をまとめてから帰ろうと少しだけ残業していた。
するとスマホロトムが鳴りメッセージの通知を知らせる。急ぎの内容かと画面を見て、ピタッと固まった。
アオキさんからだった。
『お久しぶりです。
すみません、中々連絡が出来なくて。そちらの仕事はどうですか?こちらは今日やっと定時で上がれたので、良ければ久々に飯に行きませんか?』
通知画面を食い入るように見つめて、はっ!と早く返さないといけないと思い返事をする。
『お疲れ様です。アオキさんはお身体の方は大事無いですか?明日はお休みですし、ご無理されないでください。私は今日まだ少し仕事が残っていて遅くなりますから、食事はまた今度にしましょう。』
ずっとオフィスにいる私より、外回りやジムと四天王の業務をこなすアオキさんを労わってそう返したのだが、すぐ返信が来て。
『いえ、凄い元気ですのでお気になさらず。まだオフィスにいるのでしたら、そちらに向かいます。終わるまで待ちますから』
(え?珍しい…迎えに来るなんて……)
今までずっと現地集合だったのに、と思いつつ「分かりました、なるべく早く終わらせます」と返事を送った。
しばらくしてから荒々しく扉を開ける音が聞こえてきて驚いて振り向くと、アオキさんがドアノブを掴んだまま息切れして立ち止まっていた。
「あ、アオキさ、ん、大丈夫…ですか?」
「はぁ……はぁ…ちょ、ちょっと、すいません………はぁ…」
「え、と……あ、そうだ……これ、どう、ぞ」
水分補給にと買っておいたお茶を差し出した。思えば最初にアオキさんと交流が始まったのも、お茶が始まりだったなぁと懐かしく感じながらまだ息が上がっているアオキさんがお茶を手に取ったのを確認してから
「もう、少しで、お、終わるので…待っててく、ださい」そう言って席に戻ろうとした時
「…………好きだ」
「ぇ?」
「……え?あ…」
聞き間違いかと思ってアオキさんを見ると驚いた顔で口元を押えて、そしてそのままずるずるとドアに凭れてしゃがみこんだ。
「…あー…まじか………あのハヅキさん、今の聞こえてましたか?」
「は……はい、え、えっと、今の、は?」
「……すみません、今言うつもりじゃなかったんですけど…つい、口から出ました。」
はぁーっと深いため息をついてからこちらを見上げたアオキさんは顔が赤くなっていた。
走って体温が上がっているせいでというわけで無いのは、鈍い私でもわかった。
え、じゃあ本当にアオキさんは私に好きって言ったの?
「え、え?な、なん…で?」
「…あぁ、やっぱり気づいてませんでしたか……結構アピールしてたつもりだったんですけど」
「そ、そうだっ…たん、ですか?」
「そうですよ、貴女と関わるずっと前から好きでした。」
(そ、そんなに前から…?)
「でも、貴女は人と話すのが苦手なようですし、いきなり自分に話しかけられても怖がらせてしまうと思って中々接触出来なかったんですが、
何回か残業を押し付けられているハヅキさんを見かけて…早くどうにかしてあげたかった。貴女をいいように使う奴らが許せませんでした。」
「…………」
口を挟む余裕もなく、アオキさんは続ける。
「最初はハヅキさんの負担が軽くなるならそれでいいと思ったんです。でも、自分の欲深いところが出てきて、貴女ともっと関わる口実が欲しくなってしまって…
ハヅキさんが頼まれると弱い所につけ込んで会話の練習として食事に誘ってました。」
「じゃ、じゃあ…この前の、メガネを買いに行った時、も…?」
「自分の中ではデートのつもりでした。」
「デ?!」
言葉としてはっきり言われて顔が真っ赤になる。それと同じく全然気づいてない自分の鈍さに辟易とした。
「わ、私…し、知らなくて…」
「あぁ、謝らんでください。謝って欲しいわけでは無いんです。
そもそも貴女は自分へ向けられる好意に対して鈍いのは気づいてましたから。」
「…………」
しゃがみこんでいたアオキさんは立ち上がって、佇まいを整える。
「一緒に過ごしていくうちに、色々な一面が見れて益々好きになってしまっていってどうしようもなくて……この繁忙期が終わった日に食事へ誘って、その時に伝えようと思ってたのに…はぁ…かっこ悪い。こんなところで言うつもりじゃなかったのにな。」
アオキさんがこんなに話すところ見た事がない。
人の顔も見れない、話も苦手な人間のことなんて誰も好きになるはずないってずっと思っていた。だから、人からの嫌悪の感情には敏感でも愛好的な感情には人一倍鈍かった。
アオキさんが私の事好きだなんて知らなかった。
向こうははっきり気持ちを伝えてくれているけど、肝心の私はどうなの?
私はアオキさんのことをどう思っているんだろう。
面倒見のいい先輩?細かい気遣いができる人?優しい人?どれも頭に浮かぶけどピンと来ない。
「あ、あの……私…よく、分からなくて……」
「あぁ、すみません。本当に困らせたかったわけじゃないんです。
でも、もし一縷でも望みがあるなら…また一緒に飯や出かけてくれませんか?
嫌なら……断ってください。
そしたらもう誘ったりはしませんので。」
今私が断ればこの関係は終わる。アオキさんとの関わりが無くなれば、朝やお昼に交わされていた挨拶も消える。
仕事終わりに行っていた会話の練習会も無くなる。そう理解するとなんだか胸がきゅっと締め付けられて、息が苦しくなった。
「っ………私、アオキさんのこと、どう思ってるか…まだはっきり分かりません……で、でも」
アオキさんの目を見て答える。
「あ、貴方と過ごす時間は、いつも楽しかった…心からそう思えます。
ずるい、答えかもしれませんが…これから、も私で良ければ、会ってくれますか?」
精一杯の自分なりの言葉で伝え、恥ずかしくて顔が赤くなっていくのを感じ俯く。
床を見つめて黙っていると、視界に革靴の先が入る。
「それはまだ自分にチャンスがあると、都合よく解釈してもいいですか?」
それに黙ってこくんと頷くと、「良かった…」とつぶやく声が。
「自分で言うのもあれですが、やり方が結構強引だったので迷惑に思われていたら、立ち直れませんでしたよ」
「そんなこと…」
「ふっ、優しいですねハヅキさんは」
終わるまで見守ってますから、と笑いかけるアオキさんはいつもより雰囲気が柔らかく感じた。
朝や昼にしていた挨拶もアオキさんが直接営業先へ行ったり出勤しても、直ぐに外へ出ていったりが多くてそれも無くなっていた。
彼の負担も減ったし、私も気を使わなくていいし暫くはこのままでいいかな……と思っていたけど、なんだか寂しいと感じてしまっている私がいた。
気を使うと言っても、私が気にしていたのはアオキさんのお財布事情と兼業で忙しいアオキさんの体調に対しての心配だったから
一緒に過ごす時間は、私にとって本当に居心地が良かった。
それに最後に会った時に教えて貰った話し方を頑張って実践してみたら、顔を上げて話すことが出来るようになったのだ。
緊張のせいで詰まったりすることはまだあるけど、周りの人からは「最近雰囲気が明るくなりましたね」という風に言われるようになったし、少しは変われたんだと嬉しかった。
アオキさんにまた会った時はお礼を言いたいな。そう思いつつも自分からメッセージを送る勇気はなかった。
「ハヅキさん、この書類任せてもいいかな?」
「は、はい、わかり、ました!」
「期限はまだ時間あるし、急ぐことないからね」
「は、い」
上司から頼まれた仕事をデスクへ持っていき、内容を確認する。繁忙期だった営業課も落ち着いてきて、今日は週末。みんな定時になると、上がって行ったが私はある程度仕事をまとめてから帰ろうと少しだけ残業していた。
するとスマホロトムが鳴りメッセージの通知を知らせる。急ぎの内容かと画面を見て、ピタッと固まった。
アオキさんからだった。
『お久しぶりです。
すみません、中々連絡が出来なくて。そちらの仕事はどうですか?こちらは今日やっと定時で上がれたので、良ければ久々に飯に行きませんか?』
通知画面を食い入るように見つめて、はっ!と早く返さないといけないと思い返事をする。
『お疲れ様です。アオキさんはお身体の方は大事無いですか?明日はお休みですし、ご無理されないでください。私は今日まだ少し仕事が残っていて遅くなりますから、食事はまた今度にしましょう。』
ずっとオフィスにいる私より、外回りやジムと四天王の業務をこなすアオキさんを労わってそう返したのだが、すぐ返信が来て。
『いえ、凄い元気ですのでお気になさらず。まだオフィスにいるのでしたら、そちらに向かいます。終わるまで待ちますから』
(え?珍しい…迎えに来るなんて……)
今までずっと現地集合だったのに、と思いつつ「分かりました、なるべく早く終わらせます」と返事を送った。
しばらくしてから荒々しく扉を開ける音が聞こえてきて驚いて振り向くと、アオキさんがドアノブを掴んだまま息切れして立ち止まっていた。
「あ、アオキさ、ん、大丈夫…ですか?」
「はぁ……はぁ…ちょ、ちょっと、すいません………はぁ…」
「え、と……あ、そうだ……これ、どう、ぞ」
水分補給にと買っておいたお茶を差し出した。思えば最初にアオキさんと交流が始まったのも、お茶が始まりだったなぁと懐かしく感じながらまだ息が上がっているアオキさんがお茶を手に取ったのを確認してから
「もう、少しで、お、終わるので…待っててく、ださい」そう言って席に戻ろうとした時
「…………好きだ」
「ぇ?」
「……え?あ…」
聞き間違いかと思ってアオキさんを見ると驚いた顔で口元を押えて、そしてそのままずるずるとドアに凭れてしゃがみこんだ。
「…あー…まじか………あのハヅキさん、今の聞こえてましたか?」
「は……はい、え、えっと、今の、は?」
「……すみません、今言うつもりじゃなかったんですけど…つい、口から出ました。」
はぁーっと深いため息をついてからこちらを見上げたアオキさんは顔が赤くなっていた。
走って体温が上がっているせいでというわけで無いのは、鈍い私でもわかった。
え、じゃあ本当にアオキさんは私に好きって言ったの?
「え、え?な、なん…で?」
「…あぁ、やっぱり気づいてませんでしたか……結構アピールしてたつもりだったんですけど」
「そ、そうだっ…たん、ですか?」
「そうですよ、貴女と関わるずっと前から好きでした。」
(そ、そんなに前から…?)
「でも、貴女は人と話すのが苦手なようですし、いきなり自分に話しかけられても怖がらせてしまうと思って中々接触出来なかったんですが、
何回か残業を押し付けられているハヅキさんを見かけて…早くどうにかしてあげたかった。貴女をいいように使う奴らが許せませんでした。」
「…………」
口を挟む余裕もなく、アオキさんは続ける。
「最初はハヅキさんの負担が軽くなるならそれでいいと思ったんです。でも、自分の欲深いところが出てきて、貴女ともっと関わる口実が欲しくなってしまって…
ハヅキさんが頼まれると弱い所につけ込んで会話の練習として食事に誘ってました。」
「じゃ、じゃあ…この前の、メガネを買いに行った時、も…?」
「自分の中ではデートのつもりでした。」
「デ?!」
言葉としてはっきり言われて顔が真っ赤になる。それと同じく全然気づいてない自分の鈍さに辟易とした。
「わ、私…し、知らなくて…」
「あぁ、謝らんでください。謝って欲しいわけでは無いんです。
そもそも貴女は自分へ向けられる好意に対して鈍いのは気づいてましたから。」
「…………」
しゃがみこんでいたアオキさんは立ち上がって、佇まいを整える。
「一緒に過ごしていくうちに、色々な一面が見れて益々好きになってしまっていってどうしようもなくて……この繁忙期が終わった日に食事へ誘って、その時に伝えようと思ってたのに…はぁ…かっこ悪い。こんなところで言うつもりじゃなかったのにな。」
アオキさんがこんなに話すところ見た事がない。
人の顔も見れない、話も苦手な人間のことなんて誰も好きになるはずないってずっと思っていた。だから、人からの嫌悪の感情には敏感でも愛好的な感情には人一倍鈍かった。
アオキさんが私の事好きだなんて知らなかった。
向こうははっきり気持ちを伝えてくれているけど、肝心の私はどうなの?
私はアオキさんのことをどう思っているんだろう。
面倒見のいい先輩?細かい気遣いができる人?優しい人?どれも頭に浮かぶけどピンと来ない。
「あ、あの……私…よく、分からなくて……」
「あぁ、すみません。本当に困らせたかったわけじゃないんです。
でも、もし一縷でも望みがあるなら…また一緒に飯や出かけてくれませんか?
嫌なら……断ってください。
そしたらもう誘ったりはしませんので。」
今私が断ればこの関係は終わる。アオキさんとの関わりが無くなれば、朝やお昼に交わされていた挨拶も消える。
仕事終わりに行っていた会話の練習会も無くなる。そう理解するとなんだか胸がきゅっと締め付けられて、息が苦しくなった。
「っ………私、アオキさんのこと、どう思ってるか…まだはっきり分かりません……で、でも」
アオキさんの目を見て答える。
「あ、貴方と過ごす時間は、いつも楽しかった…心からそう思えます。
ずるい、答えかもしれませんが…これから、も私で良ければ、会ってくれますか?」
精一杯の自分なりの言葉で伝え、恥ずかしくて顔が赤くなっていくのを感じ俯く。
床を見つめて黙っていると、視界に革靴の先が入る。
「それはまだ自分にチャンスがあると、都合よく解釈してもいいですか?」
それに黙ってこくんと頷くと、「良かった…」とつぶやく声が。
「自分で言うのもあれですが、やり方が結構強引だったので迷惑に思われていたら、立ち直れませんでしたよ」
「そんなこと…」
「ふっ、優しいですねハヅキさんは」
終わるまで見守ってますから、と笑いかけるアオキさんはいつもより雰囲気が柔らかく感じた。
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